《CONTENTS》●「OS」としてのソリューション・フォーカス(1P目)●解決志向は問題「解決」ではありません(1P目)●問題に焦点を合わせない(2P目)●解決に焦点を合わせ続ける(2P目)●ヒトが関わる問題は探し出すとキリがない(3P目)●目標と現実のギャップに気を取られるワナ(3P目)
ソリューションフォーカスコンサルティング代表・青木安輝さん1983年東京大学文学部社会学専修課程修了。その後、11年間にわたり、コミュニケーション・トレーニングのトレーナーとして1万人以上の受講生にトレーニングを実施する。1991年には米国にてNLP(神経言語プログラミング)マスター・プラクティショナーの資格取得。トレーナー訓練も修了し、1994年8月にエヌ・エル・ピー・ジャパンを設立。日本の代表的企業におけるコミュニケーション研修等を実施。そのほか、経営者などに対する個人セッションも提供。1996年よりブリーフセラピー学会等のワークショップにおいて通訳を務め、ブリーフセラピーおよびソリューションフォーカスアプローチを研究する。2005年1月株式会社ソリューションフォーカスコンサルティングを設立。著書に『産業臨床におけるブリーフセラピー』(金剛出版・共著)『コーチング1日1話』(PHP研究所・共著)がある。 |
こんな考えをベースにしたアプローチが心理療法(セラピー)の分野で大きな成果を上げ、ここ最近ではビジネスの分野での活用に注目が集まっています。
その名も「ソリューション・フォーカス(解決志向)アプローチ」。この新しい考え方について、株式会社ソリューションフォーカスコンサルティング代表取締役の青木安輝さんにお話を聴きました。今回と次回の2回にわたってご紹介します。
「OS」としてのソリューション・フォーカス
――青木さんは先月にイタリアで行われたソリューション・フォーカスの世界的な集まりに参加されたんですね?青木:そうです。「SOLサマーユニバーシティ」といって、世界中からビジネス系ソリューション・フォーカスの研究者や、実践している企業経営者などが集まって、研究事例・実践事例をお互いに発表しあうものでした。
――ビジネスでの成功事例はかなり出ているのでしょうか?
青木:後でいくつかご紹介しますが、ここ数年で急速に広がっています。ソリューション・フォーカスの考え方は、コンピュータで例えるとウィンドウズのような「OS」に当たるものとして応用することが可能です。なので、従来のさまざまなマネジメント技法と組み合わせることができます。
私も現在ある大手OA機器メーカーで人事評価のプログラムにソリューション・フォーカスを取り入れるプロジェクトに携わっていますが、活用分野は無限にありますね。まだまだ発展途上であるし、広大なフロンティアがひろがっているとも言えます。
解決志向は問題「解決」ではありません
――「解決」というと、「問題解決」が思い浮かぶのですが、問題解決手法の一つと考えたらいいのでしょうか?青木:確かに問題解決手法ともいえなくはないですが、問題を取り出して、それを解決するわけではありません。「解決構築」をするんです。未来の解決のイメージを先につくってそこへ至る道を探るという順番です。問題を直接解決しようとしてないのに、結果として問題が解決した状態が創り出されます。
――うーん。わかったようなわからないような……。「解決」というからには、問題を解決するのでは?
青木:具体的な事例を挙げて説明したほうがわかりやすいでしょう。実際にイタリアの化学工場であった話をご紹介しますね。
その工場では従業員の安全対策のために、ゴーグルの着用を徹底させたかったのですが、従業員は着用したりしなかったり、かなりばらつきが大きいという問題を抱えていました。経営層はなんとか従業員にゴーグルを着用させられないかと、着用率の低い原因をいろいろ探っていきました。
その中でいろいろな分析結果が出てきました。
例えば、「従業員の教育レベルが理由だろう」「従業員の多くが経営に対して反抗的な態度をとっており、そのためだ」といった従業員に原因を求めるもの。
また、「管理職のコミュニケーション能力が低く、従業員に高圧的態度で臨んでいるからだ。コーチング研修を行って、これを改善することが必要だ」というように、管理職に原因を求めるものなどさまざまで、議論は尽きませんでした。
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