消費者契約法を適用することの疑問
ところで、更新料を定める・定めないは、そもそも「私」と「私」との間で自由に合意され、取り交わされるべき「民・民」の約束事であるはずです。また、そもそも消費者契約法は、消費者と事業者との情報力・交渉力の圧倒的な格差を前提として、消費者利益の擁護を図ろうというのが、その立法趣旨であるはずなのです。消費者保護へのニーズが世の中に高まっていることは事実ですが、85%が「個人事業主」である民間賃貸住宅の大家さんを同法の「事業者」に該当させることについては、私は行き過ぎた拡大適用であると考えます。
ちなみに、更新料は、生活保護世帯における住宅扶助費の対象としても認められています。広く社会や行政にも認知され、承認されてきた商慣習でもあるのです。
今後、厳しい市況の中、賃貸住宅の維持管理費も増していきます。入居者へのサービス向上のための支出もオーナーさんには求められます。そんな状況下に「入居者サービスの原資となる更新料を否定することは、良好なマーケット形成に逆行する」こととなります。
結果的には、契約社会の基本原則(当たり前のこと)が否定され、賃貸経営そのものが不安定になり、多くの経営者が賃貸市場から退場し、需要と供給のバランスが崩れることによって、結果的に消費者(入居者)に良好な住宅が供給されなくなる恐れがあると警告します。
昨年の更新料裁判については、本文に挙げた事例のほかにも、京都地裁による「更新料無効」判決が3例(いずれも平成21年9月)あります。一方で、これらと判決時期が近いにもかかわらず、「更新料有効」と判断されたものが1例あります(10月大阪高裁)。今後の最高裁による判決、そして判決理由がきわめて注目される所以です。
今後の更新料への対応についてのご相談につきましては、社団法人東京共同住宅協会・相談部(TEL03-3400-8620)までお気軽にお尋ね下さい。