工場で生産された構成部材を現場で組み立てるシステムバス
バスルームは、つくり方(工法・構造)によって、在来工法(現場施工型)、システムバス(ユニットバス)、ハーフユニットに分けることができますが、現在、新築やリフォームの際に多く取り入れられるのは、さまざまなメーカー商品が揃うシステムバスでしょう。システムバスとは、工場で作られる部材やパネル(床・壁・天井)などの構成部材を現場に運び込み組み立てる、乾式工法の浴室のこと。浴槽や水栓金具、床・壁・天井材などを、ひとつひとつを選びプランニングし、現場で施工を行う在来工法の浴室に比べて工期が短いのが大きな特徴です。在来工法よりも自由度が少ない点は否めませんが、最近では、商品バリエーションも豊富になり、品質や仕上がりが均一で安定していることは大きなメリット。防水性や保温性なども高いので、2階や3階に浴室を設ける場合にも向いています。
シャワー中心の入浴スタイルに適する「フルフォールシャワー」、お手入れを楽にする「まる洗いカウンター」なども。リフォーム対応力を向上した戸建住宅用。[アライズ] LIXIL
設置する条件などにあわせたシステムバスの種類
■戸建て用・マンション用商品としてのシステムバスには、戸建て用と集合住宅(マンション)用があり、それぞれの構造や間取りの特徴に適したタイプが用意されています。メーカーや商品によって異なりますが、戸建て用のシステムバスは、集合住宅用に比べて広めのタイプや窓のバリエーションなど揃えたタイプが充実。集合住宅用は、シンプルなデザインで、コンパクトなサイズや限られた空間を広々と見せる工夫が施されたタイプがみられます。
壁のジョイント部をスリムにし、壁裏の出っ張りを抑えた薄型配管を採用、浴室と浴槽のサイズアップを図ったシステムバス。[マンションリモデルバスルーム ひろがるWGほっカラリ床シリーズ] TOTO
システムバスは、新築はもちろんリフォームでも取り入れやすい設備機器。特に最近では、リフォーム向けの商品、もしくはリフォーム工事がしやすいパーツなどを揃えた商品が充実してきています。
リフォーム向け商品には、既存の空間に合わせて施工することができたり、施工方法に工夫を施し工期を短くするなどの特徴を持つものが多くみられます。たとえば、既存の空間の高さや梁などに合わせた調整が可能なタイプや搬入しやすいように分割されたもの、狭い空間でも施工しやすい工夫のあるものなどもあり、住みながらのリフォームや空間が狭い集合住宅などでも取り入れやすいような商品が多くみられるようになりました。
■高齢の方が使いやすいタイプ
多くの商品は、誰もが使いやすいユニバーサルデザインとなっていますが、特に高齢の方(介護する方)の使い勝手を考慮した商品もみられます。手すりをはじめ、滑りにくい床など、安全性にも配慮されているので、介護リフォームなどでのプランニングもしやすいでしょう。
出入りがスムーズに行える浴槽形状、使いやすい手すりなど、サービス付き高齢者向け住宅だけでなく、介護リフォームをされる住宅にも適する。コンパクトなサイズも揃う。[アクアハートa-U 1616] パナソニック エコソリューションズ
住宅の場合、浴槽と洗い場を持つシステムバスが一般的ですが、浴槽と洗面台を設けたユニット、もしくは、ワンルームマンションなどにみられる、浴槽と洗面台、トイレを設けた(スリーインワン)ユニットもあります。商品は限られますが、2世帯住宅やゲストルームなどでプランニングされるケースもあるでしょう。
1616タイプ・1坪タイプなど、数字や坪数で表記された広さが揃う
限られた広さの浴室でも、ゆったりとしたバスタイムを実現するマンションリフォーム用。狭い搬入経路でも運びやすい2分割構造を採用。 [リノビオVシリーズ Dタイプ] LIXIL
たとえば、1坪タイプで内寸が1600ミリ×1600ミリのシステムバスは、数値の上2桁を用いて「1坪タイプ・1616タイプ」などと表記されます。1坪は通常 (尺モジュールの場合)、柱芯1820ミリ×1820ミリですが、内法寸法なので数値はそれよりも小さくなります。1坪タイプでも壁厚などを工夫することで空間を広げ、1717(内寸が1700ミリとは限らないケースも)などとした商品もありますし、メーターモジュールの場合などではサイズが異なるので注意が必要でしょう。
一般的な注文戸建て住宅での主流は、1坪タイプ~1.25坪タイプ。1坪タイプと1.25坪タイプの主な違いは洗い場の広さなので、家族で一緒に入ることが多かったり、介護が必要などという場合であれば、大きめのサイズの方が使い勝手がいいでしょう。
価格帯ごとに商品シリーズが。取り入れるアイテムで費用は変わる
通常、メーカーの商品には、価格帯によっていくつかのシリーズがラインナップされています。高いデザイン性や機能性を持つ高額のシリーズ、一般的な普及タイプのシリーズ、手ごろな価格のシリーズなど、大きく分類されているので、予算に合わせて検討することになるでしょう。注意したいのは、同じシリーズの中でも、広さや取り入れるアイテムによって価格は大きく変わるということ。プランニングによっては、普及タイプでも高額シリーズよりも高くなることもあります。選ぶ際には、そのシリーズの基本仕様(標準仕様)に何が含まれ、どのようなグレードのものかの確認を。手ごろな価格のシリーズを選んでも、希望するアイテムや機能が基本仕様に含まれていなければ、オプション等で追加することになり、最終的に費用がアップしてしまうこともあるからです。
水アカや汚れをはじく浴槽やカウンター、水栓を採用。浴び心地と節水性の「ダブル水流シャワー」、空間を華やかにする「キャンドル調LED照明」などを揃えた戸建て住宅用システムバスルーム [オフローラ] パナソニック エコソリューションズ
高額商品を中心に心地よさを高める工夫が
各メーカーの最近の商品傾向は、心地よくリラックスできる空間づくり。特に高額商品を中心に、快適さをアップする工夫や機能が搭載されているのが特徴でしょう。たとえば、ゆったりとくつろげる浴槽、デザイン性の高い水栓金具や多機能シャワー、ミスト機能、AV機器など、プライベートな時間を豊かに過ごすことができるアイテムがみられます。また、デザイン性の高い壁材、開放的な窓や出入口ドア、空間を演出する照明なども揃っています。
間接照明によるやわらかな光の陰影と細部にまでこだわりぬいた壁・床・水栓など、心も身体もリラックスできるバスルーム。[シンラ] TOTO
洗面やキッチンとのコーディネートも。お手入れのしやすさは標準的に
全体的にはシンプルな空間のつくりが多くみられ、すっきりとした形状の浴槽や水栓金具、カウンターや照明などを組み込んだタイプが増えてきています。バスルーム空間だけでなく、隣接する洗面脱衣室、キッチンやトイレなどの水まわり空間とのコーディネートが可能な商品も。システムバスのプランは単体で考えるのではなく、住まい全体としてトータルに検討する傾向となってきています。また、価格帯に限らず、汚れにくくお手入れが簡単な工夫は多くみられます。カビが生えにくく、掃除もしやすい床や壁、浴槽など。排水口の形状や素材に工夫を施し、メンテナンスが楽なタイプも標準的となってきました。
ショールームでは空間の広さを体感。操作することも重要
システムバスは、在来工法とは異なり、ショールームで実際の空間を確認できるというメリットがあります。選ぶ際には必ずショールームに足を運び、実物で比較検討を。さまざまなシリーズや広さの商品が展示されているので、その空間に身を置いて、体感することがポイントです。浴槽内にも入るなどして、実際の動作をしてみること。お子さんと入浴を希望しているのであれば、家族で一緒に確認を。水栓金具やシャワー、出入り口扉なども実際に操作して使い勝手をチェックするようにしましょう。【関連記事】
- 浴室の種類と特徴/システム、在来、ハーフユニット
- システムバスの価格はココで変わる
- システムバスの浴槽の素材&性能の特徴と選び方
- ハーフユニットバスの特徴とプランニングのポイント
- 人工大理石、FRP、木etc.浴槽素材の種類と特徴
- 浴槽のタイプと設置方法の種類&プランニングの考え方
- 浴槽、床材、水栓etc.システムバスのパーツ&アイテム
- システムバスのオプション、どんなものがある?
- 浴室扉(ドア)の種類と特徴&選び方のポイント
- 水道・光熱費にも大きく影響する浴室の最新省エネ設備
- 浴槽用や洗い場用、シャワーetc. 浴室の水栓金具の種類
- 浴槽用の水栓金具 バス水栓の種類と特徴&選び方
- 浴室の洗い場に設置する シャワーバス水栓の選び方
- スプレー、ミストetc. 多機能シャワーの種類と特徴
- 浴室換気暖房乾燥機の種類と特徴&選び方の注意点
- 家庭用ミストサウナの特徴と選び方
- システムバスにみる 誰でも使いやすく安心な工夫とは
- 広さは?機器選びは?バスルームプランのありがちQ&A
- ホテルのようなバス・サニタリー空間をつくる方法
- 満足いくシステムバス選びのためのショールーム活用法