ディナー「憩懐石」コースからご紹介
雲丹を纏った伊勢海老。こちらはメインの魚料理から。 |
メニュー構成は「オードブル盛り合わせ」+「温かい前菜」+「スープ」+「メイン(ステーキか魚料理)」+「デザート&カフェ」と決まっていますが、それぞれの内容は仕入れ状況によって、当日に決められるとのこと。メインの肉(ステーキ)も、特に銘柄を固定することなく、その時に良いものを使われているとのことで、シェフの審美眼に適った厳選素材が、その日のメニューとなって登場してくるわけです。
「日本人にとって本当に美味しい料理を、日本人らしく寛げる場でお出ししたい」と、ご自身のスタンスを語られる楠本シェフ。美味しいもの・良いものを少しずつ沢山の種類楽しんでもらいたい、というシェフのサービス精神は、「フレンチ」「和食」「鉄板」など、あらゆるジャンルの「いいとこ取り」とも言える内容のコース料理を食べれば、自ずと伝わってきます。そして、その強い思いが、彼我の本物を知るベテランシェフだからこそ紡ぎ出すことができる真骨頂の「フレンチ懐石」となり、この「隠れ家」で五感を楽しませてくれる時間となって結晶しているのでしょう。
それでは、6,000円(税サ抜)の「憩懐石」コースから御紹介します。
・本日のオードブル盛り合わせ
春を感じさせるパステルカラーのオードブル。 |
しかも、使われている食材も、「オマール海老」「ホタテ」「サーモン」「蟹」「甘エビ」などの多彩なシーフードや、春を感じさせる「白アスパラ」「そら豆」等々、盛り沢山の食材と、それを活かす手の込んだ調理法など、見た目でけではなく、食べることで、さらに驚きがあるのです。
特に、この中で印象的だったのが、写真真ん中にある生雲丹がたっぷりと乗った「魚介尽くしのマリネ」。「オマール海老」「サーモン」「ホタテ」のマリネに、「蟹」と「蟹ミソ」と「甘エビ」のタルタルを階層仕立てに構築し(周りを胡瓜で巻いたティンバロ風)、その上にパステルカラーが際立つ「そら豆のムース」、さらにその上に雲丹を乗せてある、という複雑でありながら渾然一体のバランス感を描き出した至福の逸品。
しなやかに、口中に拡がっていく魚介の旨味エキスが、それぞれの濃厚な風味と絡まり合い、贅沢な海物語を生み出した、この一皿は、単なる海の高級食材同士の組み合わせというだけではなく、それぞれの素材としての魅力が食べ合わせる事で、より実感できるようになっています。
他にも、マリネの上部には、シェフ曰く「寒い冬を越して、芽が出てくるイメージ」として立たせて配された「白アスパラ」と「イクラ」に、「ホウレン草」と「バジル」を混ぜたオイルソース、それに皿の上に敷かれた味と色彩のアクセントでもある「苺のソース」のユニーク性など、どれも食材の質・味・調理技術ともに、この店の実力を堪能出来る内容となっています。
次ページでは、コース料理の続きを御紹介します