京都、至高の宿「俵屋旅館」
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俵屋旅館の外観。 |
秋。特に中秋の名月の頃は、京都に住んでいても、何か特別に京都らしさに浸りたくなるものです。「
俵屋旅館」(英語表記では“The Tawaraya”)は、言わずと知れた創業300余年の洛中の老舗名旅館。「麩屋町姉小路上る」という京のど真ん中にあるにも拘らず、一夜ここに篭って何もしない時間を過ごすと、近くに住む京都人であっても、外の賑わいから隔絶されて、身体中に沁み渡るような濃密な京旅情を味わうことができます。
宿で一日中篭るとなると、非日常の室礼の中でくつろぎ、さっぱりと汗を流し、美味しい料理を食べ、ぐっすりと眠る、という4大要素が、高レベルで維持されていることが不可欠です。俵屋はいずれにおいても素晴らしいですが、何よりも「心配り」から生まれるホスピタリティの高さは世界最高クラスでしょう。
南北に走る麩屋町通に面した入口は、奥に拡がる400坪に18室という空間を、外界から隠すかのようなごく狭い間口。ここは大きな旅館とは異なり、宿泊客だけが通れる歴史のある小入口なのです。
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世界的著名人達が通ってきた歴史のある玄関。 |
外の通りからは見えないように設えられた玄関は充分に広く、この季節は、梅原隆三郎氏筆の「月」や、加藤静允氏の「月秋草図屏風」が出迎えてくれました。この俵屋の正面玄関を、一体どれだけの世界的著名人達が通って(上がって)きたのかを考えると、一歩一歩の足取りに長い歴史を感じるのです。