俵屋の夕食

庭。
庭を眺めながらの食事も心が華やぎます。
上品な着物姿のお部屋係りの方の、行き届いたかつ控えめな心配りで順次運ばれてくるお料理は、料理出しのタイミングの良さに驚くばかり。

また、料理の着物でもある「器」も骨董一辺倒でなく、古き佳きものを充分知り尽くした当代の作家さん達(加藤静允、細川護煕、村田森など)の作品を積極的に取り入れ、ご主人「佐藤 年」さんの絵付けによる可愛い作品も登場して目を楽しませてくれます。

カフェ。
別料金で珈琲もあります。すっきりとした香味で気分もリラックス。
俵屋は伝統(クラシック)と現代(モダン)の融合が見事なデザイン性を誇り、何とも好ましい特徴がありますが、料理もまたしかり。「これでもか」という派手な嫌味がなく、吟味された上質の素材を使い、手間暇を充分掛けていながら、見た目の派手さを敢えて抑えて、ほっこりと包み込んでくれるような料理、口に入れると素直に「美味しい」という言葉がつい出てきて、思わず顔を見合わせてしまうような料理なのです。これこそ俵屋のしつらいにしっくりと融け込んだ料理ではないでしょうか。毛筆のお品書きの最後に「料理長 黒川修功」と、くっきりと書かれたそのお名前だけが、料理だけが浮くことのないように、と深慮されて、俵屋の味を守り続けてこられた存在感を控えめに主張されているように感じましたね。


・先附
先附
見た目にも洗練された美しさがある先附。
先附は、「胡桃豆腐(割醤油)」(写真奥)に、「鱧煎餅」「松葉牛蒡」「銀杏煎餅」「紅葉人参」「木ノ芽」(写真左手前)、さらに「子持ち鮎の有馬煮(しめじ)」(写真右)という内容で登場です。どれも一つ一つ丁寧かつ綿密に手が込んだ料理となっており、黒川料理長の卓越したテクニックとセンスが冴え渡っていましたが、特に印象的だったのが割醤油でいただく「胡桃豆腐」! つぅるんつぅるんの滑らかテクスチャが、舌の上で心地良く弾み、風味も抜群。割醤油が引き立てる胡桃の味わいも見事な一品でした。


・小茶碗
小茶碗
「おぼろ蒸し」。う玉落とし、乱引山葵、百合根。
後述する「土瓶蒸し」も然り、料理長の出汁は心に響くような旨味の調和。この「出汁」だけでも素晴らしいですが、その中に入っている具も絶妙な柔らかさの「う玉」や「百合根」等、実に繊細に手が施されていて、一口毎に実に愉しめる味わい。引き算料理という印象が強い和食ですが、こういった折重なることで生まれる旨さも同時に併せ持つところが、日本が誇る「和」の凄味。