心に残る優しい料理の数々
牡蠣につけるソース一つにも、シェフのセンスが伺えます。 |
牡蠣にはレモンではなく、フランボワーズ・ヴィネガーが添えられており、このフランボワーズ独特の艶のある紅果色が食欲をかきたてます。今回は、頼んだ白ワインが牡蠣に合いそうな感じがしましたので、ヴィネガーをたらした牡蠣に、一緒に飲んでいた白ワインを、ほんの数滴だけかけて、食べてみましたが、これが予想以上の味わいに! トップノートは赤果実、そこから牡蠣のコクが舌に染み渡り、同時に甘酸がジワリと拡がっていき、続いて白ワインのミネラルのノートが鼻腔をくすぐります。王道のレモン+シャブリ以外で、これだけ感激したのは初めてです。なお、これは別注で頼んだもので、コースには含まれておりません。この後にコースの一口アミューズである生サーモンのカナッペが供されました。
・1皿目(冷菜)
蕪の持つ全ての要素を余すことなく昇華した逸品。 |
「かぶらのムース オマール海老のサラダ添え」
シンプルながら野菜(蕪)の持ち味を濃厚なまでに活かした一品。フレンチではソースで勝負! というような料理が多いですが、私はむしろ逆で、どちらかと言えば、こういった食材の良さをそのままストレートに感じられて、何故か魔法のように心に残る、そんな料理が好きですね。こういう食べ手の心に優しく触れてくるような料理に出会うと、非常に嬉しくなります。また、添えられたサラダにはオマール海老が、ごっつりと入っており、こちらも嬉しい演出。
「蟹とホタテ貝のエフィロシェ」
蟹がぎっしりと入った嬉しい冷菜。白ワインとも良く合います。 |
こちらは別の一皿。内側には蟹のほぐし身がたっぷりと包み込まれており、外側のしっかりとした食感に対して、内側は柔らかく、その食感のコントラストが面白い一品。こちらも食材の良さが驚くほど感じられて、印象深かったですね。
・2皿目(温菜)
温菜ではフォアグラが登場。洋梨との甘酸のバランスも良好で、上品な味わいになっている。 |
「フォアグラのソテーと洋梨の赤ワイン煮」
フォアグラと洋梨はどちらとも肉厚さがあり、一緒に食べると洋梨の滑らかな甘味と酸、そしてコクが、フォアグラの凝縮感のある濃厚さと、上手く調和し、舌だけではなく、頭の中で快感すら感じるほどの食べ心地を与えてくれます。
・「ポルチーニ茸のスープ 温泉玉子添え」
和食でもフレンチでも共通しているのはスープ(出汁)を飲めば、その店のおおよそのレベルが分かるということ。もちろん、この店のスープは一口目で、その素晴らしいさを確信できましたね。まるでポルチーニの生えていた森に連れて行かれそうになるほどの奥深い風味、そしてそれに負けないぐらい香ばしく甘い帆立が皿の上に同居しています。
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