京都、最高の弁当を食す。
これは「あと村」の夏の弁当。これでもか! といわんばりの料理の数々は、圧巻です。 |
今まで、あまり「京弁当」というものを食べたことのない方や、お高いだけの弁当を買ってガッカリした方には、特に今回の記事は読んでもらいたいですね。この記事を読み終えた時には、「ほんまもん」の京弁当は、単なる弁当ではなく、芸術作品なのだと分かっていただけると思います。
また、弁当と言えば、観光やアウトドア等の外出時が多いとは思いますが、我が家では、家で御飯を作るのがめんどくさい時は、決まって弁当を頼みます。外で食べるはずの弁当を、敢えて家で食べる。こういう愉しみ方は、地元京都人ならではなのです。特に弁当好きな私は、京都の弁当は、ほぼ全て食べ込んでますが、その中でも、何度でもリピートするほど、食べているのが、「あと村」・「魚常」・「木乃婦」の3店。麻生的には、この3店が、京都の三大弁当だと確信しています。
この3店の弁当は、美味しいだけではなく、コストパフォーマンスの高さが魅力。やはり、普段から食べているものこそ、弁当選びにはシビアになってしまいがち。「これだけしか入ってないのに、何でこんなに高いの~?」と思わせるような弁当は、基本的にリピートするには至りません。しかも、ここで私がオススメする以上は、「味」「価格帯」「彩り」の三要素全てが最高クラスの弁当でなくてはなりませんから、選びに選んだ厳選の三大弁当特集になったものと思います。
それでは、まず一店目は、私が京弁当でもっともオススメしたい「木乃婦」の弁当から、御紹介しましょう。
木乃婦
着倒れの町、新町通・室町通にある中京区屈指の料亭「木乃婦」。意外と知られていませんが、実はここ、仕出しを得意とする、安心して使える料亭でもあるのです。きびきびと小気味よく働く大勢の料理人さんや仲居さんたちは、皆礼儀正しく、先々代や先代から受け継がれた「しつけ」が行き届いていることを感じられる心地よいお店。料亭ですから、もちろん会席(懐石ではない)料理は、繊細な調理に定評があり、非常にハイレベル。ですが、今回オススメするのは、4,200円の京弁当。
2段になっている弁当は、芸術的な美しさすら伴っている。 |
下の段はあなご、車えび、烏賊、栗、イクラを乗せたちらし寿司となっており、厳選された素材も良好。特筆すべきは、間に敷かれた錦糸玉子と、焼き海苔の細さ! 弁当では軽く扱われがちな御飯すら、「木乃婦」では丁寧な仕事で、弁当の華となるのです。この辺のこだわりが、普通の折詰弁当とは、ひと味もふた味も違うところでもあります。
さすがに、これだけ手が込んで美しく作り込まれていると、2段に分かれた弁当を広げて、眺めているだけで、まるで一枚の絵画のような美しさすら感じてきます。はっきり言って、これはもう弁当の域を超えていますね。弁当という名の芸術作品というべきでしょう。これ程のレベルの彩りや美しさを描き出すのに、どれだけの手間暇がかけらていることか。食べてしまえば、それで終わりの儚い弁当という存在にまで、これほどまでの情熱と愛をかたむける……。こういう想像しただけで、気が遠くなるほどの仕事ぶりには、本当に感服です。
見た目の美しさ、手の込みよう、繊細な味、そのどれもが麻生的には、京都最高の弁当と確信できるクオリティ。木乃婦は店内で食べるのも良いですが、一度はこの彩り鮮やかな京弁当を食べてもらいたいと思います。きっと京弁当のレベルの高さが分かってもらえることでしょう。
次ページでは、他の2店について御紹介します