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ウイスキー&バー/初心者のためのウイスキー入門記事

モルト原酒は麦のジュースから生まれる

できるだけ蘊蓄は言わないようにしているが、今回は仕込みってなんだ、ってことを伝える。原料の大麦は、ワインのぶどうのようにはいかないんだな。麦のジュースを抽出するまで、面倒なんだよ。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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ぶどうジュースとの違い

これが麦汁をつくる仕込槽
これが麦汁をつくる仕込槽
モルトウイスキーのつくりの話をしよう。大麦を発芽させるのがはじめのはじめ。
なぜか。大麦はでんぷんをたっぷり含んでいる。酵母は糖分をアルコールに変えることはできても、でんぷんをそのままアルコールに変えることはできない。そのため、でんぷんを糖分に変えるために糖化という工程が必要になるが、糖化の役目を担う酵素を大麦自身につくらせるために発芽させ、麦芽という状態にする。これを製麦というが、ビールだって、麦焼酎だって同じことをやる。

ワインのようにぶどうの果肉自体に糖分があると、ぶどうをつぶしてジュースを取れば酵母を加えてアルコールへと変えられるのだが、大麦といった穀類はそうはいかないのだ。で、発芽をほどよいところで止める乾燥時にピート(泥炭)を焚き込んでピーテッド麦芽にすると、スモーキーなフレーバーのモルト原酒になっていく。

澄んだジュースは華やかだ

粉砕麦芽と温水を投入
粉砕麦芽と温水を投入
これでやっと糖化・濾過という工程に向かう。酵母を加える発酵工程はまだまだこの後のこと。
まず麦芽をモルトミルにかけ細かく粉砕する。粉砕麦芽をグリストというが、粒の大きさによってハスク、グリッツ、フラワーに分けられる。大体配合費は2:7:1程度。ハスクの粒が最も大きく、殻皮が含まれていて、これが麦のジュース、麦汁を濾過する時に濾材となる。
その粉砕麦芽を温水にした仕込み水とともに仕込槽に投入。粥状(マッシュ)にして、糖化酵素の働きに最適な温度の63.5℃に設定。30分ほど内部に装置されたレーキ(熊手状の撹拌機)をゆっくり回転させてかき混ぜ、次に40分ほど静置。酵素の働きが進行し、糖やアミノ酸といった栄養分が温水に溶け込む。またハスクが下降して、仕込槽の底部に沈殿して濾過層をつくる。

清澄麦汁をテイスティングする職人(写真すべて山崎蒸溜所/撮影・川田雅宏)
清澄麦汁をテイスティングする職人(写真すべて山崎蒸溜所/撮影・川田雅宏)
仕込槽の底部から麦汁を抽出するのだが、そのタイミングは人間の官能によって決められる。よく澄んだ清澄麦汁を取ると、果実のような香り高いエステリーさのある、華やかで伸びのいいリッチな酒質となる。濁り麦汁だとエステリーな感覚は少なくなり、重く厚みのある酒質を生む。
麦のジュースの取り方でもモルト原酒の香味タイプが違ってくるのだ。これが糖化・濾過工程。次に発酵に向かうのだが、またの機会に発酵の話をしよう。

INDEX「ウイスキーの歴史と製造法」もご覧いただきたい。
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