ぶどうジュースとの違い
これが麦汁をつくる仕込槽 |
なぜか。大麦はでんぷんをたっぷり含んでいる。酵母は糖分をアルコールに変えることはできても、でんぷんをそのままアルコールに変えることはできない。そのため、でんぷんを糖分に変えるために糖化という工程が必要になるが、糖化の役目を担う酵素を大麦自身につくらせるために発芽させ、麦芽という状態にする。これを製麦というが、ビールだって、麦焼酎だって同じことをやる。
ワインのようにぶどうの果肉自体に糖分があると、ぶどうをつぶしてジュースを取れば酵母を加えてアルコールへと変えられるのだが、大麦といった穀類はそうはいかないのだ。で、発芽をほどよいところで止める乾燥時にピート(泥炭)を焚き込んでピーテッド麦芽にすると、スモーキーなフレーバーのモルト原酒になっていく。
澄んだジュースは華やかだ
粉砕麦芽と温水を投入 |
まず麦芽をモルトミルにかけ細かく粉砕する。粉砕麦芽をグリストというが、粒の大きさによってハスク、グリッツ、フラワーに分けられる。大体配合費は2:7:1程度。ハスクの粒が最も大きく、殻皮が含まれていて、これが麦のジュース、麦汁を濾過する時に濾材となる。
その粉砕麦芽を温水にした仕込み水とともに仕込槽に投入。粥状(マッシュ)にして、糖化酵素の働きに最適な温度の63.5℃に設定。30分ほど内部に装置されたレーキ(熊手状の撹拌機)をゆっくり回転させてかき混ぜ、次に40分ほど静置。酵素の働きが進行し、糖やアミノ酸といった栄養分が温水に溶け込む。またハスクが下降して、仕込槽の底部に沈殿して濾過層をつくる。
清澄麦汁をテイスティングする職人(写真すべて山崎蒸溜所/撮影・川田雅宏) |
麦のジュースの取り方でもモルト原酒の香味タイプが違ってくるのだ。これが糖化・濾過工程。次に発酵に向かうのだが、またの機会に発酵の話をしよう。
INDEX「ウイスキーの歴史と製造法」もご覧いただきたい。