伝統の継承と革新
山崎蒸溜所のポットスチルの前で。彼らは6基の大きさ形状の異なるポットスチルを見て驚いたらしい。 |
エール酵母と木桶発酵というクラシックなつくり込み。また他にも数種の酵母を用いてステンレスと木桶の発酵槽を使い分ける。蒸溜では初溜釜6基の大きさ形状が異なることにも驚いたようだ。
これだけで多彩な原酒を生むことは明白。彼らはひとつの蒸溜所でスコットランドの何十もの蒸溜所を集めたような原酒のつくり分けがされていることが驚異であり、古典的なつくりと進化しつづける姿に敬意を表していた。
さらには樽熟成。ホワイトオーク、スパニッシュ、ミズナラといった樽の使い分けにも驚いていた。
とくにミズナラ樽での熟成には興味を抱いたようだ。バリー・ウォルシュ氏は「世界のどこも使っていない樽。響の持つ繊細さや甘く華やかなエステリーな感覚は、ミズナラが生む原酒が影響していることを知った」と語った。
山崎か、白州か
面白かったのはロバート・ヒックス氏とコリン・スコット氏が口論したという話。彼らは山崎のブレンダー室で、山崎と白州のさまざまなニューポット(蒸溜後の無色透明なモルト原酒)をテイスティングした。ブレンダー室でさまざまな原酒をテイスティング。山崎と白州、どちらが素晴らしいか激論する場面も。 |
ただ審査員全員が山崎と白州の違いが際立っていることに驚き、それがゆえにジャパニーズブレンデッドの傑作『響』の繊細さ複雑さが生まれると理解したようだ。
もっといろいろ書きたいのだが、今回はISC代表者イアン・グリーブ氏のコメントで締める。「ジャパニーズは点数をつけるのが難しいほどレベルが高い。とくに響、山崎に代表されるように、香りのよさ、甘さ、そして後味のよさが際立っている」。
今後、このセミナーでの審査員の発言は小出しにしていくので注意して見守っていて欲しい。このシリーズはもう少しつづけようと思う。
前回の『いい蒸溜所とは未来を語れること』も是非ご一読いただきたい。