ワイン/ワイン関連情報

このワインに、十円玉を入れてみると……(3ページ目)

『甲州きいろ香』開発にまつわる、風味のサイエンス。メルシャンが富永教授と「甲州」品種の共同研究。香りの成分を目印にして、このブドウの適熟期を探る。捜し求める味と香り、そのメカニズムとは?

執筆者:橋本 伸彦

フェノール臭をへらす

欠点臭について語る博士
甲州種のワインによくあるのが、一種のフェノール臭だった。フェノールといってもいわゆる「ポリフェノール」とは関係ない。

フェノール化合物の一種、4-ヴィニルフェノールによるクレオソートやプラスチックのような匂いは、少量しかなくともブドウの好ましいアロマを隠してしまい、ワイン自体の味を平板でメリハリのないものに変えてしまう。「欠点臭」に分類される所以である。このフェノール臭が、甲州の個性と言われてきた、まったりとどうにもハッキリしない風味の原因だったのだ。

フェノール臭を減らすことが、課題となった。

そこでメルシャンはブドウの生育中に分析を頻繁に行い、香りの素である前駆体(プレカーサー)がたっぷり含まれていてフェノールが少ない時期をとらえて収穫できないか? と考えたのである。このようにしてメルシャンのチーフ・ワインメーカーである味村興成(あじむら・こうせい)氏と富永氏の協力で「甲州アロマプロジェクト」が始まった。

甲州アロマプロジェクトとは≫
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