ワイン/ワイン関連情報

このワインに、十円玉を入れてみると……(2ページ目)

『甲州きいろ香』開発にまつわる、風味のサイエンス。メルシャンが富永教授と「甲州」品種の共同研究。香りの成分を目印にして、このブドウの適熟期を探る。捜し求める味と香り、そのメカニズムとは?

執筆者:橋本 伸彦

「香りの素」

醸造責任者の味村興成氏
ボルドーの代表的白ブドウ品種、ソーヴィニヨン・ブランを摘み取ってワインを造るのに一番いいのはいつか?
この問いに対して、富永博士の仮説は「香りの素」がブドウの中で一番増える時期を目安にすればいいのではないのか? というものだった。

この「香りの素」をプレカーサー(前駆体)と呼ぶ。たとえばソーヴィニヨン・ブランにある柑橘系の香りを持つ3-メルカプトヘキサノール(3MH)。この物質の前駆体が発酵の過程で酵素によって変換され、グレープフルーツやパッションフルーツに似た香りを放つ形になる。

2004年秋、富永氏はメルシャンが畑で散布するボルドー液を制限して試作した甲州ブドウから高濃度の3MHを発見する。ボルドー液の成分(硫酸銅)からくる銅イオンがワインに残ると、3MHと結び付いてしまって香らない。冒頭の十円玉が柑橘系のアロマを消してしまうのと同じことが起こっていた訳だ。

甲州ブドウに3MHが含まれているならば、ソーヴィニヨン・ブランと同じように収穫時期を選ぶことで柑橘系の香りを生かすことが可能ではないか? これがまずひとつ目の研究テーマだった。さて、もうひとつは?

甲州種の「欠点臭」とは≫
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