ワイン/ワイン関連情報

このワインに、十円玉を入れてみると……(4ページ目)

『甲州きいろ香』開発にまつわる、風味のサイエンス。メルシャンが富永教授と「甲州」品種の共同研究。香りの成分を目印にして、このブドウの適熟期を探る。捜し求める味と香り、そのメカニズムとは?

執筆者:橋本 伸彦

甲州アロマプロジェクト

専門的な質問にも答える博士
このプロジェクトでは、柑橘系の香りを出しつつフェノール臭を抑えることが主目的となった。2005年には熟したブドウの分析頻度を上げ、2週間毎に分析して9月のある時期、従来よりやや早めに収穫することでフェノール臭を抑えるとともに、ワインに爽やかさを与える酸味が十分に得られることが判った。この結果は他の生産者に公開されているというから、メルシャンの研究結果を役立てた甲州ワインが他からも出てくることだろう。

しかしワインの香りというのはブドウの中にある無数の物質が発酵過程で相互に影響し合う複雑なもの。単純に「香りの素が多い」「フェノールが少ない」→「おいしいワイン」となるとは限らないのだ。富永博士が強調したのは、この実験は醸造の中のごく限られた側面を考えるもので、どうしたら旨いワインができるかを分析だけで指南するようなものではない、という点。

肝心なのは「前駆体を目印にしてみたら、全体としてうまく行くのでは?」「フェノールを抑えれば、もっとクリアで豊かな風味になるのではないか?」といった発想で、ワイン造り自体は醸造家の経験と判断によって支えられているのだ。

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