味わいの表現
味と味覚の違いを意識しましょう
さて、これらの味の性格を理解したら、実際に香りと同じように、味を様々に表現してみましょう。
味といった場合、一つ重要なことがあります。それはなにかというと、「味」と「味覚」の差を認識しておくことです。つまり、「味覚」は、人間の感覚に名づけられた五感の一種ですが、「味」は味を発するものの属性的な意味合いを持つということなのです。
したがって、茶の味を表現する場合は、「味覚の語彙」は、その茶を味わったときに、その人がどのように感じるかということを表現すること、そして「味の語彙」は、そのものが持つ味の属性を表現するという違いがあるのです。
もちろん、両者は相当部分で重複し、あえて区分することが無意味な場合もありますが、そもそも茶が持つ属性なのか、茶を飲んだ人が感じた印象なのかを区分することで、より人に味や味わいを伝えることができるのではないでしょうか。
例えば、「甜」と「渋」ということを考えてみましょう。
甘く感じる ⇒ 甜
渋く感じる ⇒ 渋い
これは、それを感じる人間の味覚を表現する語彙です。一方、
甘味を持つ ⇒ 甜
渋さを持つ ⇒ 渋い
というのが味の語彙です。
つまり、そのものが「成分上糖分を含むから甘い」と言うことなのか、実際にはどのぐらいの糖分が含まれるか分からないが「かなり甘い」というその人が甘味を感じたということの表明なのか、これらを区別して表現すると、より人には的確に物事が説明できるわけです。
さて、味の語彙には、美味、佳味、滋味、珍味、風味、うまさ、うま味、おいしさ、まずさ、薄い、あっさり、さっぱり、軽い、淡白、淡々、濃い、濃厚、こってり、しつこい、くどい、重い、まったり、まろやか、軟らかい、硬いなどの表現ができますが、これらはそのものが持つ性質であるところの「味」を表すときに利用する語群です。
つまり、もともと渋みをもつ性格のものについて、その渋みがあるのか無いのか、一方で、渋みを持つものについて、評者が渋みを感じたのかどうかということは、本来区別して表現されるべきものなのです。
特に、茶そのものの品質をテイスティングする場合には、客体に徹して評者の感情表現する味覚の語彙を拝するのが一般的であるといえるでしょう。
このようなことを認識した上で、まずは、香り同様、参考になるワインの味わいの表現を見てみることにしよう。