中国茶に興味を持つと幅広く様々なお茶を飲んでみたくなりますが、日本に存在する黒茶も、とても魅力的ですね。
そこで、今回は日本に存在している「黒茶」を順番に取り上げてご紹介します。その第一弾は四国の「碁石茶(ごいしちゃ)」です。
碁石茶ってなに?
日本の黒茶の代表「碁石茶」
日本にもまるで中国茶さながら、本当に奇妙なお茶が存在しています。特に四国周辺に多く分布しているのはとても興味深いところです。その中の代表的なお茶がこの「碁石茶」でしょう。
2003年ぐらいに、「乳酸菌が豊富に含まれているお茶」としてテレビで取り上げられ健康ブームに乗じて一躍有名になり、生産が追いつかないという話しも聞くほどだった碁石茶。
ちょうど碁石のような形をしているところから、碁石茶と呼ばれていますが、見るからになにか不思議なオーラを放っているこのお茶は、作り手が非常にすくない幻のお茶とされており、現在も高知県長岡郡大豊町東梶ケ内で細々と作られています。
もちろん、雲南省、四川省、湖南省などで作られる中国の黒茶とはその製造工程が異なりますから、中国でいうところの黒茶の分類に入れられるかは微妙なところですが、一度加熱し、酸化発酵を停止させた後、さらに、人為的な発酵を施す大雑把な行程をみると、類似点はあるのだと思われます。
碁石茶の具体的な作り方は、まず6月から7月にかけて、おおきくそだった茶葉を積み、それを蒸してから床に積んで筵で覆って発酵させ、さらに桶に詰め込んで重しを載せ再度発酵させ、3cmほどに切って天日干します。
お茶の世界の中にあっては、ものすごく特殊な、中国の辺境やミャンマーあるいはタイあたりのお茶に通じるものがあります。
以前、カメラマンの堀江克彦先生(『嘉木悠遠 中国雲南省に茶の源流を求めて』という写真集を出版された方)に教えてもらったことがありますが、雲南省の布郎(プーラン)族に「酸茶」というのがあり、カビをつけて竹筒に入れて土に埋め、嫌気性発酵を促進させるのだそうです。
これなどは、ちょうど碁石茶に繋がる製造法なので、碁石茶のルーツは東南アジアではないかという話があるのです。もちろん、タイにはミアン、ミャンマーにはラペソーと呼ばれる、漬物茶がありますから、ルーツがそのあたりだと考えるのは至極最もな話です。
四川黒茶などは、明らかに菌の作用で後発酵させますが、この碁石茶はプーアールの菌とは全く異なる乳酸菌の作用で後発酵させるお茶ですから、黒茶というよりは、「漬物」といったほうが良いかもしれません。