東方美人の香りのメカニズム



香りがとてもよい台湾の東方美人茶


茶の香り、特に青茶の花のような香りが何故発するかについては、「お茶の香のメカニズム」 でご紹介したとおり、茶葉の製茶過程における茶葉のストレスによるものが主たる要因でした。

ところが、東方美人の独特な蜂蜜香あるいは熟した果実香と表現される香りは、この製茶過程における香りに加えて、茶葉そのものが持つ生体反応によるものであることが判明しているのです。

つまり、茶葉や芽は、ウンカという害虫が樹液を吸うと、自分の身を守ろうとするため、独自のポリフェノールを作り出して独特の香りを発するようになるのだそうです。これは、ファイトアレキシンの一種のジオールという物質です。
京都大学の坂田教授と鹿児島県立短期大学の木下朋美氏などの研究によると(『東方美人の香の秘密』香料No.229 2006年3月)、東方美人の特有香は、ウンカの為害で生成される香気成分が大きく作用していることが分かっています。しかも、これらの香りが増加するのは、ウンカの唾液中の酵素が関与していると推測されています。唾液のような分泌物が、葉の細胞にある成分と反応を起こし新しい成分を作り出し新たな香りを発する。

このように、ウンカが付くことによって、茶葉や芽がそもそも従来ない香りを発するようになるわけですが、さらに、これを製茶することで、さらに香気が変化し、リナロール類が著しく増加し、素晴らしい香りが発することになるわけです。

東方美人に感じることのできるマスカットフレーバーの要因物質であるホトリエノールは、もともと茶葉が持つ香気成分であるリナロールが、ウンカの為害による酵素反応によってジオールに変化生成され、さらに製茶工程の加熱により生成されるのだそうです。

もちろん、ウンカによる恩恵は東方美人のみならず、インドのダージリンなどでも活用され、香りの高いお茶が作られています。