東方美人はこんなお茶 |
夏のお茶、東方美人
「オリエンタルビューティー、Oriental Beauty」。訳して「東方美人」。台湾烏龍茶(フォルモサウーロン)とは、まさにこのお茶のことを指すのです。なんとも素敵な名前のお茶ですね。その昔、台湾の烏龍茶が大々的にヨーロッパに輸出されていた時代に、時の大英帝国女王ヴィクトリアが、アジアのお土産として献上されたこの茶をコップで淹れた際に、美しく上下に舞い踊る様に感動し「オリエンタルビューティー」と呼んだのがいわれだとか。
産地は、台湾北西の新竹縣の峨眉・北埔・関西・横山、苗栗縣の頭[イ分]・老田寮・三灣・南庄・獅潭などが中心で、台北縣の坪林・石碇・新店・三峡、桃園縣の亀山・龍潭などでも作られています。品種は、青心烏龍、青心大有(有の冂の=が無い文字)、白毛猴、大慢種など。昔は烏金烏龍という品種で作られていたのだそうです。
夏になると、「ああ!東方美人の季節だよね」と思ってしまうのです。
なにしろ、春茶が終わったころ発生するウンカ(ミドリヒメヨコバイ、中国語では、小緑葉蝉)という害虫がいないと出来上がらないお茶で、年に一度だけ夏に向けて作られるお茶だから。
東方美人の作り方は、こちらをご覧ください!→「香檳烏龍茶」
ウンカは蝉の仲間なので、口に管が付いているのですが、それで茶葉や茶の茎から樹液を吸う害虫なのです。このウンカが樹液を吸うことで、なぜか香りが良くなるのだそうです(そのメカニズムを京都大学が研究してたはずなんですが、どうなったのでしょう。今度取材してみます)。
白や褐色の茶葉が混ざる |
東方美人の様々な名前
ところで、この東方美人、実に多くの名前が付いています。白毫がキレイだから「白毫烏龍」とか、香りがよいから「香檳烏龍」(シャンパンとかチャンピョンにちなんだという説も。)とか、さらに俗称として「番荘」、「五色茶」、「紅茶」、「老也寮茶」、「福寿茶」、「着園茶」などと様々な名前で呼ばれています。特にこのお茶の主要産地である新竹縣峨眉や北埔では、「膨風茶(ポン フォン チャア)」とか「椪風茶」などと呼ばれています。
そもそも、この膨風とは「ほら吹き」という意味です。「椪風茶」という名前は、「ほら吹きでは問題だ、きれいな言葉を使うべきである」と、日本統治時代に日本人が「膨風」と発音が似ている「椪風」という漢字をあてはめ表記させるようになったのだそうです。
なぜ「ほら吹きか」というと、お茶にウンカが大量について売りものにならなかったとき、姜という茶農が機転を利かせてこれを製茶し日本人に売ったら高く売れたにもかかわらず、だれも信じてくれず挙句のはてには「ほら吹き=膨風」呼ばわりされてしまったためなんだとか。
2003年9月には、新竹県が「地方特色茶統一名称協調会」という会合を開催し、今後「東方美人茶(膨風茶)」と表記を統一することで決定したというニュースが流れていました。でも、日本では膨風茶という名前はあまり一般的ではありませんね。
小さくそろった芽 |
よい東方美人の選び方
さて、そんな夏においしい東方美人ですが、数年前にあちこちの東方美人を取り寄せて、20種類ぐらいを一気に飲み比べしたことがありました。紅茶のように豊穣な香りと味わいのするこのお茶を20種類というのは、それはそれで結構つらいお茶会でしたが、面白いこともわかりました。おいしいと思う東方美人は、一芯二葉で、茶葉自体が非常に小さくそろっていること。白毫が多いこと、そして茶を抽出するまでに時間がかかるということ。
火入れの仕方とか、発酵の違いによって、味も香りもまったく変わってきますので、人によって好みが違うでしょうけれど、この三つは、良い東方美人に共通して見られた特徴だといえるでしょう。
東方美人の入れ方は、基本的な烏龍茶と変わるところはありません。茶壷で入れても蓋碗で淹れてもOK。ただ、良質の東方美人の場合は、上述のように、抽出するまでに比較的時間がかかりますので、その辺を頭に入れておいたほうが良いかなと思います。
私の場合、東方美人は蓋碗で淹れることが多いのですが、3gの茶葉に150cc程度の湯を入れ、5分程度時間を置くとおいしく飲めるかなと思っています。もちろん、熱湯を使ってくださいね。
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