パン/パン業界情報、イベント

フランス国家最優秀職人による製パン講習会(3ページ目)

モンディアル・デュ・パン日本実行委員会主催、MOFの称号を持つドミニク・プランショさんとチェリー・ムニエさんによる伝統的なパン、世界中でヒントを得て生まれたスペシャリテ等、製パン講習会の内容をレポート。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

パン ド カンパーニュ

カンパーニュは、発酵を長くとった生地のパン。何を何%入れなくてはならない、という決まりはないそうで、職人によってライ麦粉や石臼挽き粉を配合したり、ルヴァン種を混ぜたりします。

ムニエさんのカンパーニュは15%のライ麦粉入りで、450gの生地をバタール型に成形。先端は細くします。フランス人はパンを買って、先端のカリっとしたところを食べながら帰途に着くのが大好きなのです。

成形したら、布に粉を振って綴じ目を上にしておきます。粉はライ麦粉やそば粉を混ぜると、カンパーニュらしい田舎風のルックスになり、ノアゼットの風味に。 この粉はクラストを少しだけ厚くし、日持ちさせる役目もあるのです。 窯入れの時よりも、成形のときに振っておくとより効果的なのだそうです。

パン ド カンパーニュ

ブリオッシュ トレッセ(ヴォンデ県方式)

このパンは本当は「ブリオッシュ ヴォンデエンヌ」と言いますが、AOC(原産地呼称統制)によりその地方の素材を使うことを厳格に決められレシピが保護されているので、別の場所で使うときは名前を変えねばならないそうです。 ということで、「ブリオッシュ トレッセ(三つ編み)」。

ヴォンデ地方では、大きいブリオッシュをみんなで持って踊る、結婚式の慣習が残っているそうです。プランショさんのお店ではこれを1日に500~800個作ります。

グラニュー糖にヴァニラ、ラム酒を混ぜて一日置くとよりよく香りが浸透します。1/5量の転化糖を混ぜていますが、これはパンのしっとり感と日持ちのためです。入れすぎるとグルテンの生成を妨げるので気をつけます。粗熱が取れたら袋に入れ、3週間保存が可能です。

手前、Dominique Planchot(ドミニク・プランショ)さん、奥、Thierry Meunier(チェリー・ムニエ)さん
ブリオッシュ トレッセ
型に入れずに焼いたものと入れて焼いたもの

ロア ド ボルドー

ロア ド ボルドーは伝統的なパンで王冠を模っています。1月の公現祭でガレット デ ロワのかわりに食べる地方もあるそうです。 素手でバターと砂糖を混ぜ合わせるのは、ヤケドしない温度を保つためです。 1日1回パンチを入れながら5℃で3日間。3日後に分割して粉袋のシートに5、6時間おいてから塗り卵をし、あられ糖を振って焼きます。

素手で温度を感じとる粉袋をベーキングシートに再利用

ガッシュ(ヴォンデ県方式)

ガッシュは「もう一度混ぜる」という意味もあり、祭事の時にパン生地にバターを入れるなどして食べていたことが語源になっているそうです。 ブリオッシュ トレッセと配合が似ていますが、イースト量が少なく、より一層風味よくするためにサワークリームを配合しているところが異なります。

ガッシュ


以上が紹介された8種類のパンです。日本でもこんなパンができるのだ、と感動しました。本国と違う環境、初めて触る粉ゆえに、プランショさんとムニエさんの臨機応変な判断で、テキストに書かれた数値が片っ端から調整、変更されていき、みるみる素晴らしいパンが出来上がっていくところに、MOFならではの感覚と技を見せていただきました。

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