ジョギング・マラソン/ジョギング・マラソンの走り方、トレーニング

サブスリー達成に必要な体のひねりと脚の振り…上半身は捻らない!

マラソンサブスリーランナーなら必須。体の捻りと脚の振り、運びのフォームについて解説します。上半身をひねるなど、体の捻りについては誤解しているような(あるいは軽視している?)ランナーが多いように思います。練習して正しいランニングフォームを身につけてみましょう。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

<目次>

サブスリー達成に必要な体の捻りと脚の振りとは?

サブスリー達成のために必要なこと

サブスリー達成のために必要なこと

ここでは、足首から太ももにかけてを「脚」、くるぶしから爪先までを「足」とします(本来の言葉の意味そのものです)。両方合わせた意味で使うときは「アシ」とします。
 

骨盤が寝ているとピッチ走法がしづらい

猫背の前傾姿勢(赤)で骨盤(青)を立てようとするとさらに前傾を強めることになる(グレー)。ここで上半身をグッと起こしてへそのあたりから下半身を目に突き出すようにすれば(緑)、骨盤を立ててもバランスがよくなる。脚も楽に振れるようになるし呼吸も楽に
猫背の前傾姿勢(赤)で骨盤を立てようとするとさらに前傾を強めることになる(グレー)。ここで上半身をグッと起こしてへそのあたりから下半身を目に突き出すようにすれば(緑)、骨盤を立ててもバランスがよくなる。脚も楽に振れるようになるし呼吸も楽に
では、そのフォームから。今回は足の振り出しと着地ですが、腕振りに関しても「速い人のフォームには共通要素がある」を少し補足します。

腰位置のフォームは、「速い人のフォームには共通要素がある」で少し振れましたが、骨盤をなるべく立てること。骨盤が寝ると、その分だけアシの前後の開閉位置が前方になります。脚は上がるが、着地点がやや前方になる(体がそっくりかえる)ために体をしっかり押し出せません。そのまま骨盤を立てようとすると、体が前傾します。背筋が強くて上半身が丸まらずに前傾するならまだいいのですが、背筋が弱いと猫背になります。

すると、お腹を圧迫して呼吸が苦しくなりますし、重心位置のバランスをとるために脚を前方に大きく踏み出さなければならないので、ストライドが広がります。これ(ストライド走)が、市民ランナーレベルでは中間点以降の疲労を大きくしてしまい、後半の失速につながるのです。

したがって、腰位置は骨盤をなるべく立てます(おへそが前方にひっぱられるような、とよくいわれます。それに加えてお尻の穴を引き締めるような感覚)。これが腰の位置が高いという姿勢なのですが、背筋が弱いと維持しきれません。背筋を強化する筋トレを行いましょう。
 

体の軸は真っ直ぐに、上半身は捻らない

基本的な腕振り/肩のラインは進行方向に対して垂直を保ち、腕振りの方向は進行方向に平行
基本的な腕振り/肩のラインは進行方向に対して垂直を保ち、腕振りの方向は進行方向に平行
肩を振ってしまっている/腕の付け根を支点にせずに、肩の付け根を支点に腕を前後に往復運動させると、肩が大きく動いてしまう
肩を振ってしまっている/腕の付け根を支点にせずに、肩の付け根を支点に腕を前後に往復運動させると、肩が大きく動いてしまう
腕を振らずに体を捻って腕を振っている気持ちになっているランナーは多い。上半身の体の捻りはムダな動き。推進力を生んでいない
腕を振らずに体を捻って腕を振っている気持ちになっているランナーは多い。上半身の体の捻りはムダな動き。推進力を生んでいない
次に脚の振り出し方ですが、まず「体の軸」について説明しましょう。

体の軸を真っ直ぐに、といいますが、これを背骨を中心にして体を捻ることと勘違いしている人がいます。補強運動にツイストをすすめる方もいますが、ツイストをよくしていると体を捻るクセが付くようなので、私はすすめません。上半身は捻らない、捻る動きは封じ込めるべきだと考えてください。

背骨を中心に意識していると、背骨を中心にして体を捻ってしまいがちです。例えば、時計回りに体を捻ったときに左肩から左体側は前に出ますが、右肩から右体側は後へ下がってしまいます。次に右肩を前に捻れば左肩は後に戻ります。これでは推進力が相殺されてしまいます。力の方向が遠心力によって、前方ではなく回転方向にずれてしまうのも不経済です。

では、どのようにするのか。上半身は捻りません。腹から腰の位置にかけての体側を交互に支点とします。例えば、右足を振り出すときは、左体側が支点となってぐっと踏ん張るわけです。この時に状態を捻ると左肩が後に下がり推進力が弱まります。テレビのマラソンレースを見ていても、中間点を過ぎると「肩が揺れてきましたね」などという解説をよく聞きますが、この状態です。体が踏ん張れなくなってきているために肩が揺れ出します。フォームが悪くて最初から揺れているランナーもいますが、こうしたランナーは長くは持ちません。体を使う割に推進力になっていないわけです。

体を前に運ぶために肩の振りは必要ないことは階段を走り上ってみるとすぐにわかります。肩を振らず体を捻らずに上るのと、肩を振り体を捻って上ってみるのと比べると、肩を振ることが何の役にも立っていないことがわかります(階段を上るときに腰は捻ります。インナーマッスルを使った方が階段や上り坂は楽に上がれます)。
 

下半身の捻りの反発力を推進力に変える

体を捻るフォームは女性によく見受けます。これは女性の体の柔らかさと、体型的に腕を横振りしやすいことが原因です。体が柔らかいことは一見良さそうですが、力を発揮するうえでは必ずしも良いとはいえません。人間の筋肉はゴムのような物だと常々思うので、ゴム紐にたとえてみます。細いゴムは簡単に捻れますよね。しかし、その巻き戻しの力とスピードは遅いです。くねくねとして位置も安定しません。

一方、太いゴム紐は捻るのに力がいりますが、わずかにねじっただけでも力強く瞬発力に優れた巻き戻しを行います。

ゴルフを例にすると、女性ゴルファーは体が柔らかくからだが捻られ、フィニッシュでは腕が体に巻き付いています。華麗と見えるフォームなのですが、飛距離は出ません。球筋も一定させるのに苦労します。男性ゴルファー(肥った)は、瞬発力に優れており、パワーもあって飛距離をかせぎます。野球の投手でも、肥満タイプの選手が多いのも体のねじりに関係しています。

有森裕子さんは選手時代「腹筋の有森」といわれるほど腹筋トレーニングをしたという話があります。たしかにすごいお腹をしていました。あの筋肉が瞬発力を産むゴムなのです。捻り戻す力です。
 

体を直線的に前進させる動きと意識

ラインに対して平行に践む。両足の幅の開きはこの程度まで。(走っていれば前後にもっと開いているのは当然)
ラインに対して平行に践む。両足の幅の開きはこの程度まで。(走っていれば前後にもっと開いているのは当然)
次に、脚の前方への運びです。両体側を軸にする走法、2軸走法を行うときに体軸を真っ直ぐにしていれば、脚は直線的に前方に振り出されるのではなく、わずかに弧を描きます。骨盤の付け根を脚の付け根と思って脚を長く使うのはいいのですが、あまり長く使うことにこだわると、骨盤のひねりが大きくなります。足は一本のラインの上を踏んで前進することになります。

しかし、これはアシの動きは弧を描くので移動距離が長くなってしまいます。長くなれば時間もかかります。それに弧を描くと遠心力が働きますから着地時の力が内側に向かい、一歩ごとに進行方向がクロスしてしまいます。

そこで、腰の捻りはほどほどにします。両足の着地点をつないだラインも重ならずに平行線になるくらいが良いようです。その幅は道路の白線の両側がそれぞれの足の中心線のやや外側になるくらいといったところでしょうか。これより広いと脚を長く使っていないといえるかもしれません。

また、間隔が広がると着地時の体重移動が左右に大きく移動し、体を前方に移動させる上で妨げになります。常に「体を直線的(最短距離で)に前に移動させる」という基本に基づいた体の使い方が大事ですし、意識も保つようにします。
 

オーバープロネーションやがに股は矯正する

足の着地はかかとから爪先まで進行方向に向かって真っ直ぐに向きます。かかとは接地しますが、体重はかけません。体重がかかる最初の接点はフォアフット(前足部、足のアーチ部より前方)です。そこから爪先に向かって真っ直ぐに重心を移動させます。

このように真っ直ぐに体重を移動させることは、故障を予防する上でたいへん重要です。オーバープロネーションなどで足首を捻るような着地をすると、バランスを取るために着地時に体重が膝に真っ直ぐに乗りません。オーバープロネーションの場合だと、膝の内側に大きな力がかかります。このことから、膝関節炎、長径靱帯炎、半月板損傷など、膝や周囲の故障を多発します。

サブスリーを達成するには、スピードも付けなければならないし、練習距離も伸ばさなければなりません。膝にかかる負担も大きくなるのです。オーバープロネーションは矯正し、かまぼこ形になった道路端を走らないなどの注意が必要です。

トラック出身のランナーには前足部で地面を引っかくように着地するフォームの選手がいますが、これはスパイクを履くことが多かった名残です。そのフォームではとてもフルマラソンは走りきれません。


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