障害発生前の予防法、夏のアイシング
アイシングは動脈を冷やす。指導する中野ジェームズ修一さん |
ウォーミングアップのストレッチング |
爪先を立てて支点にし、膝を振る。股関節も動く。続いてかかとを支点にして同様に膝を左右に振る |
股関節を回す。筋肉の動きも意識する |
肩を回す。指先を肩に触れて、肘を前回転、後回転 |
肩胛骨をほぐす。両手を頭上に伸ばし、手のひらを外側に向け、ゆっくりと肘を曲げて手を下ろす |
クーリングダウンのストレッチング |
右足を折りその上に左脚を伸ばし、立てた足の爪先を前屈しつつ手前に引く。続いて爪先を外側へ倒して抑え(写真の状態)、さらに反対に倒して抑える |
両足を合わせ、爪先を持って大腿部の開脚と腰部を伸ばす |
大臀筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋をストレッチ |
大臀筋を伸ばす |
腰をかがめて手を地面についた状態から、手は地面につけたままで膝を伸ばす。足の背面を伸ばす |
ストレッチングをしないとどういうことになるのか。先生は試しに、左脚は何もせず、右脚だけ入念にストレッチングするという実験をしたことがあるそうです。すると、しばらくの間左脚だけが調子悪かったとのこと。ストレッチングの効果をまざまざと実感したそうです。
オーバートレーニングを判断する
障害発生の最大の原因は「オーバートレーニング」。「練習」「休養」「栄養」のバランスがよければ、コンディションが良好であり、「練習」が過大で「休養」と「栄養」が不足しているオーバートレーニング状態にあると、障害を起こす可能性が高くなります。調子がいいと感じて練習量を上げると、逆にオーバートレーニングになって障害を起こす可能性が高まるということになります。自分がオーバートレーニングなのか否かを判断する能力は、障害を予防する上でたいへん重要だといえるわけですが、難しそうです。
起床時のチェックで発見できる
その早期発見、予防法として中野先生が上げたポイントが二つあります。(1)起床時安静時心拍数が通常より ±5~10拍/分 のズレ
(2)起床時の体重が急激に低下
以上の2点です。異変を感じたら、練習量を減らし、十分な休養を取り、食事に偏りや不足がないか確認しましょう。
トレーニングの後はアイシングの習慣を
障害発生時の手当でもあり、夏のトレーニング時の必須項目、アイシングもこの日のテーマです。アイシングによって障害の発生はかなり減らせるとのことですから、読者の皆さんもぜひ実行してみてください。アイシングには「RICE」という原則があります。
R:Rest → 安静(血液循環を抑える)
I:Ice → 冷却(血管を収縮させるのと、細胞の代謝レベルを下げる)
C:Compression → 圧迫(血管を圧迫して内出血を抑える)
E:Elevation → 挙上(患部を心臓より高く挙げ、内出血を抑える)
アイスバッグを使い動脈を冷やす
冷却方法は、アイスバッグに氷を入れ患部に当てて冷却します。手を使わずに患部にバッグを当てられるラップサポーター付きの製品も出ています。局部的な患部ではなく、体全体を冷やすときには、動脈が体表に近いところを通っている部位(頸動脈、腋下動脈、大腿蔵脈)に当てて血液を冷やします。走りながら体を冷やすときにも、スポンジを頸動脈や腋の下に当ててみてください。
もう一つアイシングには法則があります。それは2・2・2の法則です。「20分間、2時間おき、2日間」というもの。それで痛みや腫れがひかなければ医師に相談しましょう。
迷ったら冷やす
冷やした方がよいのか温めた方がよいのか迷うこともあると思います。迷ったときには冷やします。というのは、温めるべきところを冷やしたときよりも、冷やすべきところを温めてしまった時のほうが、悪化させるリスクが大きいからです。障害を起こした直後で温めた方がいいケースとは痙攣ぐらいでしょう。
すぐ冷やす、様子を見ていると悪化します
最後に重要なこと。軽い痛みの段階ですぐに冷やすことです。患部の状態は放置しておくと次第に悪化してきます。悪化すればそれだけ治りも遅くなります。「しばらく様子をみてから」とか、「明日医者に診せるまでは、このままにしておこう」は事態を悪化させる元。すぐに冷やすのが得策です。アスリートは、冷蔵庫に氷や保冷剤を欠かさない、この心がけが必須です。