海外の靴のサイズで失敗した経験は誰でもあるはず
このような計測器で「足のサイズ」を測ってもらったこと、ありますよね。でも、特に外国の靴の場合、これらを過信することは禁物です。そのわけは???
今回は靴のスタイル紹介からはちょっと寄り道して、「靴のサイズ」について少し考えてみたいと思います。全く同じサイズ表記なのに、ユルい靴がある一方でキツいものもある…… こんな経験、誰でもありますよね。特に外国の靴で、その傾向が強くないですか? その謎に少し迫ってみましょう。そのためには、各国別のサイズ表記の「基準」を理解しないといけませんので、今まで出てきた種類の靴のおさらい+αも含め、以下見てみましょうか。
<目次>
イギリスの靴のサイズは王様の足が基準になった?
エドワード・グリーンの内羽根式キャップトウ、バークレーです。サイズ表記はイギリスサイズの「6 1/2 E」。アメリカサイズの「7」も併記されている丁寧さはさすが! |
●足長
- まず、踵の一番後ろから4インチ(約101.6mm)爪先寄りの部分を起点「0」と定め、そこから大麦一粒分、つまり1/3インチ間隔で表記を1,2,3と進めます。
- 「14」の段階で、表記を一回「1」と読み替え、それ以降は同様に1/3インチ間隔で表記を2,3,4…13,14,15…と読み替えずに進めます。
- 1/6インチ(約4.3mm)ごとに、ハーフサイズを設定します。
●足囲
- 同一表記の足長では、足囲を数値の短いものから一定の間隔(この間隔は各靴メーカーで異なります)で、A、B、C、D、E、F、G、Hなどと表記します。
- イギリスの紳士靴では「E」を標準とするところが多いです。ただし、Church’sやCheaneyのように、「F」を標準とするところもあります。
アメリカの靴のサイズはイギリスとは微妙に違う
アレン・エドモンズの外羽根式セミブローグ、レキシントンです。サイズ表記はアメリカのメンズサイズの「7 D」。ただ「D」と言っても、全体の足囲はイギリスの「E」とほぼ同じです。 |
足長の目盛りの設定方法やその間隔は、原則イギリスサイズと同じです。ただしアメリカサイズは、起点「0」の位置がイギリスとはなぜか異なるので、表記もイギリスの靴とは結果的に変化します。多くの場合、「イギリスサイズ+0.5」でアメリカサイズになりますが、例外も沢山あります。十分気を付けてください。
●足長
- 紳士靴の場合、起点「0」がイギリスより1/12インチ(約2.1mm)だけ踵寄り(後ろ寄り)で始まります。
- また婦人靴の場合、起点「0」が紳士靴よりさらに1/3インチ(約8.5mm)踵寄りで始まります。つまり「アメリカのメンズサイズ+1」=「アメリカのレディスサイズ」です。例えばメンズとレディスで共通の木型を用いる古典的なキャンバススニーカーなどの場合、メンズであってもこの表記を用いることがあるので、知っておいて損はありません。
●足囲
- 同一表記の足長では、足囲を数値の短いものから一定の間隔(この間隔が各靴メーカーで異なります)で、AAAA、AAA、AA、A、B、C、D、E、EE、EEE、EEEEなどと表記します。
- アメリカの紳士靴では「D」を標準とするところが多いです。
ヨーロッパサイズはフランスが起源
ある意味最もイタリア靴らしい靴と言える、グッチのビットモカシンです。サイズ表記はヨーロッパサイズの「39 1/2 D」。グッチは日本やヨーロッパではこのサイズ表記ですが、アメリカでは現在、「7D」などアメリカサイズの表記で売られています。 |
この表記は、ナポレオン統治時代にヨーロッパ大陸に広まったようです。当時のパリの靴職人の縫いのピッチが起源とも、当時パリで流行した刺繍のピッチが起源とも言われていますが、イギリスやアメリカの表記に比べると素直ですので、国を超えて広まっていったのでしょう。その頃国際的に浸透しはじめた「メートル法」との関連もありそうです。
●足長
- 起点「0」は踵の一番後ろとし、そこから2/3cm(約6.7mm)間隔で表記を1,2,3…と進めます。イギリスサイズやアメリカサイズのような読み替えは一切行いません。
- 1/3cm(約3.4mm)ごとに、ハーフサイズを設定します。
●足囲
- 「D」「EEE」などイギリスサイズやアメリカサイズのものをそのまま取り入れたり、Narrow、Medium、Wide等の表記にしたりなど、正直バラバラ。各メーカーで独自の対応をしているのが実情です。
日本サイズが実は一番素直
リーガルの外羽根式ロングウィングチップ、W105です。サイズ表記はもちろん日本サイズの「24.5 EEE」。ただ「EEE」とは言っても甲高に振った設計で、幅そのものは日本の「EE」とほぼ同じです。 |
日本の革靴のサイズ表記は、1950年代後半にそれまでの「文・分」基準から、センチメートル基準へと変化し、1983年に漸くJIS規格、つまり国のお墨付きとなった実は大変新しいものです。歴史が新しい分、表記方法も整理されている感があります。
●足長
- 起点「0」は踵の一番後ろとし、そこから1cm(10mm)間隔で表記を1,2,3…と進めます。イギリスサイズやアメリカサイズのような読み替えは一切行いません。
- 0.5cm(5mm)ごとに、ハーフサイズを設定します。
●足囲
- 同一表記の足長では、足囲を数値の短いものから6mm間隔で、A、B、C、D、E、EE、EEE、EEEE、F、Gと表記します。
- 靴メーカーにもよりますが、紳士靴では「EE」を標準とするところが多いです。
- ただし実際に足囲が「EE」相当の日本人男性は、もはや全体の1/4以下とも言われていて、標準を「E」に細めているメーカー・ブランドも出始めています。
実際に履いてチェックするのがやっぱり大切!
2足ともフランスのJ.M.ウエストンの靴です。向かって左のフルブローグはサイズ表記が「6 1/2 C」、一方向かって右のローファーのそれは「5 1/2 C」。同じブランドの靴でサイズ表記は全く異なるものの、これらはあくまで「木型のサイズ」が違うに過ぎません。どちらも小生の足には「ちょうどよくて快適」と感じます。 |
以上で各国別のサイズ表記の方式が、一応ご理解いただけたかと思います。でも、それだけでは実は全く不十分。イギリス・アメリカ・ヨーロッパの各サイズ表記と日本のそれとは、「何を基準とするか?」が決定的に違うことを、絶対に忘れないでいただきたいのです。
イギリス・アメリカ・ヨーロッパの各サイズ表記は、もちろん人間の足を参考にはするものの、いずれも靴を造る際に用いるラスト、つまり「木型」が基準で、言わば靴を造る側から捉えたサイズ設定です。例えばイギリスサイズで足長が7ハーフとある靴の場合、それはあくまで「木型の大きさ」を示すのみで、極端に申せば「『7』よりも長く、「『8』よりも短い」ことを表しているに過ぎません。
海外の靴では、たとえ同一ブランドの靴であっても、モデルによって自分の「一番快適なサイズ」が全く異なるケースが多々見られるのは、そのためです。またドレスシューズよりスポーツシューズのほうが、実寸は同じなのにサイズ「表記」が明らかに大きくなりがちなのも、同じ理由からです。なお、日本では暫し間違われるのですが、これらのサイズには「インチ」とか「センチ」のような単位は付きません。
一方日本のサイズ表記は、靴の中に入る「人間の足」が基準になり、こちらは靴を履く側から捉えたサイズ設定と言えます。例えば足長が25.5とある靴の場合、それは「実際の足長が25.5cm位の人のための靴」と言う意味です。なので、このサイズ表記を採用している靴では、モデルや木型が異なっていても、自分の「一番快適なサイズ」が同一に収束する傾向が、比較的高いです。なお、こちらも正式には「センチ」のような単位は付きません。
ただし、日本のサイズ表記はあくまで「踵からつま先までの足長」が基準なので、例えば靴のフィット感には極めて大切な「土踏まず」の長さや位置までは考えられていない短所もあります。土踏まずが長い・短い人が自分の足長のみを頼りに靴を選ぶと、どうしても違和感が出るわけです。そう、どのサイズ表記にも長所・短所があるのです。1970年代にはそれを国際的に統一しようとする動きもありましたが、それゆえ結果的に空中分解してしまったほどですから。
だからこそ靴を選ぶ際は、「サイズ表記」に縛られ過ぎず、自らの足で直接履いて「フィット感」で判断することが、やはり一番肝心なのです。特にインポートシューズを購入される場合は、よくある「サイズ換算表」はあくまで参考程度と考え、あまり信じない方がよろしいでしょう。21世紀に入ってからすっかり主流になったロングノーズな靴の影響で、内外のブランドとも昨今は、同一サイズ表記でありながら以前に比べ足長が長くなる傾向にあるので、この姿勢はますます重要ですよ。
最後に一つ、新たに靴を購入する際、最適なサイズをきちんと確認できる方法を皆様に伝授いたしましょう。いつも履いているサイズから1サイズ下、例えば通常日本の25.5を履く方でしたら、24.5辺りから順番にハーフサイズずつ上げて試着してみるのです。この方法ですと、ユルいのもキツいのもどこまでが「耐えられて」、どこからが「耐えられない」かを、身をもって把握できます!
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