旅する世界遺産 華麗な建築物
掲載日: 2006年 11月 07日
エローラ石窟群でインド美術にうっとりする
インド三大石窟(せっくつ=石の洞窟)と言えば、アジャンター石窟群、エレファンタ石窟群、エローラ石窟群(いずれも世界遺産)だが、このなかで、彫刻の規模と美しさにおいて最高峰にある石窟がエローラの第16窟=カイラーサナータ寺院(カイラーサ寺院)だ。
今回はカイラーサナータ寺院をはじめとする34の石窟からなるインドの世界遺産、エローラ石窟群を紹介しよう。
創造神ヴィシュヴァカルマは、ラーシュトラクータ朝の君主クリシュナ1世の祈りを聞き入れ、王のためにシヴァ神に捧げる寺院を建立した。完成させた寺院のあまりの美しさに、ヴィシュヴァカルマは自分自身でさえも驚いて、身震いしたという。この伝説の寺院がエローラ第16窟、カイラーサナータ寺院だ。
高さ32m、底面85m×50mのカイラーサナータ寺院は重い。玄武岩の黒のためか、下から山のように突き上げる構造のためか、その美はタージ・マハルの華麗な白と対極をなし、ひたすら重厚・荘厳だ。
カイラーサナータ寺院は、ヒマラヤの聖山カイラス(カイラーサ山)に住む世界の王(ナータ)=シヴァ神を祀るために建立された。ヒンドゥー教の寺院らしく、寺院の壁も天井も神々の彫刻や、ヒンドゥー教の神話『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』の場面を描いたレリーフで覆われている。たとえばシヴァ神とその妻パールヴァティーの結婚式や、パールバティーが戦いの神ドゥルガーと化して武器を投げつける様子、美の女神ラクシュミーや愛の神カーマの物語などが描かれている。
驚くのは、この寺院が石を積み上げて造られたものではなく、山を彫った「彫刻」であること。100年をかけてノミとカナヅチだけで山を彫り、掘り出された石はなんと20万トン。3階以上の多層構造で空中回廊まである巨大な彫刻ながら、壁は恐ろしいほど繊細なレリーフで埋め尽くされている。規模と繊細さが同居した、数少ない遺跡のひとつだ。
エローラ石窟群、ユネスコの登録名称は「Ellora Caves」。「cave」とは洞窟だが、岩を洞窟状にくり抜いた石窟が34もあることから「石窟群」と呼ばれている。
石窟は天然のものではなく、職人が硬い岩盤を一つひとつ掘り進めたもの。掘りながら、同時に寺院の柱や梁、仏像、レリーフなどを刻み込んでいった。こうして彫られた34の石窟は岩山の中腹2.5kmほどに点在し、第1〜12窟が仏教の窟院、第13〜29窟がヒンドゥー教の窟院、そして第30〜34窟がジャイナ教の窟院となっている。
インドの仏教は6世紀頃には衰退に向かい、4世紀頃バラモン教が変化して生まれたヒンドゥー教が勢力を伸ばすと少しずつ混ざり合い、やがてヒンドゥー教は仏教を吸収する形でインド中に広まった。ジャイナ教は、仏教とほぼ同じ紀元前6世紀前後に、マハーヴィーラ(ヴァルダマーナ)によって成立した宗教だが、これも仏教やヒンドゥー教の影響を受けながら伝えられた。
たとえば仏教窟とヒンドゥー教窟は同じ時代に平行して造られたものもあるようだが、双方が双方を吸収し合っていたためか、お互い平和に共存していたようだ。現在多くの遺跡が破壊されているように見えるが、これは13世紀以降インドに広まったイスラム教徒が偶像崇拝を嫌って破壊したものだと言われている。以下では宗教窟ごとに解説しよう。
今回はカイラーサナータ寺院をはじめとする34の石窟からなるインドの世界遺産、エローラ石窟群を紹介しよう。
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| カイラーサナータ寺院。下に小さく見える人と比べると巨大さがわかる。この寺院、石を積み上げて造ったのではなく、岩を掘り抜いた「彫刻」。世界最大の彫刻とも言われる。©牧哲雄 |
神すらその美に打たれたカイラーサナータ寺院
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| 下から見たカイラーサナータ寺院。象の彫刻と記念柱スタンバ。©牧哲雄 |
高さ32m、底面85m×50mのカイラーサナータ寺院は重い。玄武岩の黒のためか、下から山のように突き上げる構造のためか、その美はタージ・マハルの華麗な白と対極をなし、ひたすら重厚・荘厳だ。
カイラーサナータ寺院は、ヒマラヤの聖山カイラス(カイラーサ山)に住む世界の王(ナータ)=シヴァ神を祀るために建立された。ヒンドゥー教の寺院らしく、寺院の壁も天井も神々の彫刻や、ヒンドゥー教の神話『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』の場面を描いたレリーフで覆われている。たとえばシヴァ神とその妻パールヴァティーの結婚式や、パールバティーが戦いの神ドゥルガーと化して武器を投げつける様子、美の女神ラクシュミーや愛の神カーマの物語などが描かれている。
驚くのは、この寺院が石を積み上げて造られたものではなく、山を彫った「彫刻」であること。100年をかけてノミとカナヅチだけで山を彫り、掘り出された石はなんと20万トン。3階以上の多層構造で空中回廊まである巨大な彫刻ながら、壁は恐ろしいほど繊細なレリーフで埋め尽くされている。規模と繊細さが同居した、数少ない遺跡のひとつだ。
世界遺産エローラ石窟群の全貌
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| 本殿に祀られたシヴァ・リンガ。リンガは男性器、土台のヨーニは女性器を表し、世界が生命力溢れた神の子宮にあることを示す。©牧哲雄 |
石窟は天然のものではなく、職人が硬い岩盤を一つひとつ掘り進めたもの。掘りながら、同時に寺院の柱や梁、仏像、レリーフなどを刻み込んでいった。こうして彫られた34の石窟は岩山の中腹2.5kmほどに点在し、第1〜12窟が仏教の窟院、第13〜29窟がヒンドゥー教の窟院、そして第30〜34窟がジャイナ教の窟院となっている。
インドの仏教は6世紀頃には衰退に向かい、4世紀頃バラモン教が変化して生まれたヒンドゥー教が勢力を伸ばすと少しずつ混ざり合い、やがてヒンドゥー教は仏教を吸収する形でインド中に広まった。ジャイナ教は、仏教とほぼ同じ紀元前6世紀前後に、マハーヴィーラ(ヴァルダマーナ)によって成立した宗教だが、これも仏教やヒンドゥー教の影響を受けながら伝えられた。
たとえば仏教窟とヒンドゥー教窟は同じ時代に平行して造られたものもあるようだが、双方が双方を吸収し合っていたためか、お互い平和に共存していたようだ。現在多くの遺跡が破壊されているように見えるが、これは13世紀以降インドに広まったイスラム教徒が偶像崇拝を嫌って破壊したものだと言われている。以下では宗教窟ごとに解説しよう。
各宗教窟の詳細は次のページへ。




