散歩/江戸風情を探す散歩ルート

四谷左門町から番町へ怪談の現場を歩く(2ページ目)

夏の風物詩というのがいくつかあるが、その定番ともいえるのが怪談である。今回は怪談の現場やそれにまつわる神社などを巡る散歩をしてみた。

増田 剛己

執筆者:増田 剛己

散歩ガイド

於岩稲荷田宮神社を訪ねる

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静かな住宅街の中に赤い幟が見える。ここが「於岩稲荷田宮神社」だ。
「四谷怪談」というのは、よくできた怪談話である。子供から大人までが楽しめる。僕が子供の頃、テレビで見たお岩さんというのは、顔が腫れ上がって実に怖かったという記憶がある。

なぜ、お岩さんがこんな顔になったのかといえば、夫である伊右衛門に毒薬を飲まされたからだ。この伊右衛門というのが、悪い男で、結婚に反対するお岩さんの父親を殺害し、美人のお岩さんと結婚するし、お岩さんに飽きて、他の女が好きになって、妻を毒殺しようとするのである。そして、お岩さんは幽霊となって復習するのである。

この怪談は正式には「東海道四谷怪談」という。原作は鶴屋南北。1825年(文政8年)に歌舞伎として上演されたのが最初である。もともと芝居で上演されたということで、四谷怪談には視覚的な怖さがたくさんあるわけだ。しかし、それだけではなく、人間の怖さそのものも描かれているのだ。

というわけで、僕とEくんは、外苑東通りから住宅街へ。住所は左門町だ。ほどなく、赤い幟(のぼり)が見えてきた。ここが於岩稲荷田宮神社だ。

実在したお岩さん

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稲荷神社だけに狛犬ではなく、狐である。
鶴屋南北のこの原作は、実にリアルなのだけれど、それもそのはずで、南北はこのストーリーを実際に起きたいくつかの事件からヒントを得て作っているのである。

ならば、お岩さんは実在したのかといえば、実在したのである。このあたりがややこしいところなのだが、お岩さんの墓は巣鴨にある。以前の記事で巣鴨を散歩したときに訪れている。お岩さんもその夫の伊右衛門も実在した。が、鶴屋南北が「東海道四谷怪談」を書いた200年も前の話だ。

この話は忠臣蔵外伝という形でつくられた。この忠臣蔵もそうなのだけれど、実在した人々を題材としながらもそこにフィクションを組み上げている。そのため、吉良上野介はまるで悪人のように描かれているわけで、このお岩さんも同じである。実際はお岩さんと伊右衛門は仲のよい夫婦だったそうだ。
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一角にあった「手清めの水」。こういうものを見るだけでもなんだか気持ちが落ち着いてくる。
通称「お岩稲荷」と呼ばれている「於岩稲荷田宮神社」は、道をはさんだ少し先にもある。こちらも「縁結び」「厄除け」「芸道上達祈願」などの幟(のぼり)がある。先ほどのお稲荷さんもそうだが、いろいろな施設などがあり、ここだけでも小一時間いても飽きない。

この於岩稲荷田宮神社は実はもう1箇所ある。場所は中央区新川である。そちらを訪ねてみるのもいいかもしれない。
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