鉄道/寝台・夜行列車

最後の力走、寝台特急「富士・はやぶさ」

半世紀にわたって東京と九州各地を結んできた伝統ある寝台特急ブルートレイン。最後まで残った「富士」「はやぶさ」もいよいよ2009年3月で引退となる。栄光ある列車の最後の姿をレポートする

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

「富士・はやぶさ」との下関での出会い

下関駅のEF66
東京より長駆14時間30分走り続けてきた「富士」&「はやぶさ」が下関に到着した。EF66形電気機関車の牽引はここ下関駅までとなる。この列車の廃止をもってEF66形が旅客列車を牽引する晴れ姿は見られなくなる
EF66切り離し
まずEF66形が客車から切り離される。EF66形は直流専用の電気機関車のため、交流電化の九州では走れない
EF66切り離し2
EF66形が単独で車両基地へ引き上げる
本州最西端の駅下関の朝。ラッシュ時のピークを過ぎ、ホームは閑散として、人影もまばらだ。午前8時32分、胸を張ったようなスタイルの電気機関車に牽引された12両編成の長い列車が到着した。前の日の夕方18時3分に東京を発って、一晩東海道と山陽路を走りとおしてきたブルートレイン「富士」「はやぶさ」である。

到着と同時に、大勢の乗客が降りてきて、ホームは賑やかになった。けれど、彼らは下関で降りるわけではなかった。カメラやビデオを片手に列車の先頭に殺到してきたのだ。そんな動きを無視するように、先頭の機関車EF66は青い客車から切り離され、単独で出発して姿を消してしまった。

EF81接近
代わって関門トンネル専用のEF81形が係員の誘導の下、登場して列車に連結される
EF81
EF81にヘッドマークが付いていないのが残念。まもなく九州へ向けて出発だ
ブルトレ後追い
下関を後にするブルートレイン「はやぶさ」「富士」。前6両が「はやぶさ」(熊本行き)、後ろ6両が「富士」(大分行き)なので、最後尾のテールマークは富士となっている
しばらくすると、EF66が姿を消した方向から、別の電気機関車が登場する。サーモンピンクに塗られたEF81だ。関門トンネルを抜けた門司の手前で電流が直流から交流に切り替わるため、関門トンネル専用の交直両用の電気機関車EF81にバトンタッチされるのだ。客車に接近し、係員の誘導に従って、ゆっくりと確実に連結された。この瞬間を映像に収めると、ホームにたむろしていた乗客は慌しく車内へ戻っていった。

8時38分、準備の整った列車は、甲高いホイッスルを鳴らすと、静かにホームを離れた。青い客車が段々小さくなり、やがて視界から消えていく。列車は関門トンネルを潜って、九州へと旅立っていった。

九州に入れば、最初の駅門司で二つの列車に分かれ、さらに別の赤い電気機関車に交替する。それぞれ新たな機関車に牽引されて、前6両の「はやぶさ」は鹿児島本線経由で小倉、博多を通って熊本へ、後ろ6両の「富士」は門司の一つ先の駅小倉から日豊本線に入って大分へ向かう。

乗りたいと思った。伝統ある九州ブルートレインは、2009年3月14日のダイヤ改正を機にまもなく消えようとしている。その最後の乗り納めとして、なんとか九州からの上り列車の寝台券を入手した。

では、いよいよ上り「富士」に乗車しよう。
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