マンションで水漏れ事故が起きたら保険はどうなるか
マンションのような共同住宅で起こる代表的なトラブルの一つが水漏れ、漏水事故です。水漏れの発生原因にもよりますが、加害者と被害者がいるような事故になると複雑なトラブルに発展することもあります。マンションで水漏れ事故が起きたときに厄介なのは、交通事故などとは異なり、事故の当事者双方が同じマンションに住んでいるということです。
戸建てでは考えにくいことですが、マンションでは火災などよりはるかに頻度が高いのが水漏れ事故です。マンションにおける水漏れ、漏水事故について、最近の動向や考えや保険による対処法を解説します。
<目次>
最初に水漏れの原因を特定する
水漏れ事故が発生した際に最初にしなければならないことは、水漏れの原因を特定することです。保険を使うにしても原因が不明なままだと「誰が契約している保険の」「どの補償を」使えばいいのか決まらないからです。原因次第では一部保険金の支払い対象にならないものがでてきますので、早めに水漏れの原因を特定することが必要です。
上から水が漏れてくるからと言って必ずしも上の階に住んでいる人に責任があるとは言えません。事故原因を調べてみたら共用部分の設備に不備があった、ということになれば管理組合が責任を問われることもあります。
水漏れについて簡単にまとめると以下の3つのパターンです。
- 上階の専有部分から水漏れ
- 共用部分から水漏れ
- 雨漏りや吹き込み
同じところから何度も水漏れが起きたら…保険金は?
マンションも建築してから10年、15年も経ってくると設備が老朽化してきます。共用部分の給排水管の不備で水漏れが発生した場合、これが老朽化によるものであればきちんと修繕しない限り、何度も同じところから水漏れが起こる可能性があります。保険に加入しているのだから保険で支払ってもらえばよいと考える人もいるでしょうが、きちんと修理もせず何度も同じところから老朽化などが原因で水漏れが起きた場合、保険会社から事故性がないとみなされて保険金の支払いや契約の継続を拒絶されるケースもあります。
一般的にさび、瑕疵(かし)、老朽化などは保険の対象にはなりません(事故ではないと考えるため。物は時間が経てば当然古くなっていくから)。事故が起きた際に修理しないという選択はないでしょうが大事なところです。
水漏れ・漏水事故への支払いとなる保険を知っておく
マンションでの水漏れ事故の対処法を知っておきましょう
■損害賠償の場合
マンション管理組合:施設賠償責任保険
居住者:個人賠償責任保険 等
上記2つの保険は、管理組合専用の保険の特約で加入できるようになっています。個人賠償責任保険は専有部分の火災保険や自動車保険などにも特約があります。
水漏れの事故原因がはっきりしない場合、原因を特定するための調査が必要です。しかし原因調査費用については、管理組合で一括して加入する保険ではこうした補償は一般的に付帯しています(もしくは特約等で補償を追加)。
年間の原因調査費用の上限が決められているケースが多いので金額のチェックも忘れずにしておきましょう。ただし、老朽化などで水漏れの原因となったそのものの修理(例えば給排水管の修理費など)などは対象外です。
個人賠償責任保険などは本来は所有者個人で加入するものです。しかしそうすると必ずしも所有者個人が保険に加入するか分からず、事故の際に被害者とトラブルになりかねません。そうした背景もあり、マンション管理組合でも特約で一括加入できるようにしているケースもあるのです。
■火災保険などの場合
水漏れ事故で加害者がすぐに損害賠償してくれないような状況にある場合、契約している保険の内容にもよりますが、被害者側が自分の火災保険などでとりあえず修理を進めるということも考えられます。火災保険では漏水に対しては「水濡れ」という補償でカバーします。水漏れではなく水濡れですので間違えないようにしてください。
被害が続いている状況では、水漏れを何とかしないと被害者側はたまったものではありません。管理会社や管理組合、自分の加入している保険会社等に相談してみましょう。自分が被害にあったときに保険がどこに(専有部分、共用部分)、何を目的に(建物、家財)、どんな内容の保険になっているのかは必ず確認しておくことが大切です。
マンション管理組合の最近の保険の動向
2015年10月、2019年10月に火災保険の改定がありました。この背景は自然災害の多発や水漏れ・漏水事故の増加です。特に老朽化したマンションの水漏れ事故が増えています。■マンション管理組合が加入する共用部分の保険
現状マンション管理組合の保険には築年数別料率(古いマンションほど保険料率が高くなっていく)を各社適用し始めています。そのため築年数が経過しているというだけで古いマンションほど不利になる傾向にあります。
2015年10月の改定直前の数年は築年数のみを理由に契約の引き受けを断る損保もあったほどです。2015年10月及び2019年10月の火災保険の改定では、マンションは一般的に保険料が引き上げられています。
マンション管理組合で加入する共用部分の保険には、水漏れに対応した賠償責任保険の補償や原因調査費用、水濡れの補償は必須なのです。築年数が古く、管理状態がよくない状態の管理組合は火災保険料がかなり高くなる可能性があります。以前のように色々な損保が契約を取りたがる状況ではなくなっています。
生命保険は年を取ると健康上の問題や年齢の関係で保険料が高くなるため、加入しにくくなるのはよくある話です。これはマンション管理組合が加入する火災保険も築年数がそれなりに経過していると同じ状況だと考えてください。
■マンションの所有者が個別に加入する専有部分の火災保険
専有部分も共用部分も同じマンションですから、2015年・2019年の改定で保険料が一般的引き上げられた状況にあることは変わりません。
木造の一戸建て住宅に比べるともともとの火災保険料が安いので、木造に比べればまだ負担は少ないですが、専有部分も保険料は上昇傾向にあることを理解しておきましょう。またマンションを取り巻く火災保険の状況は当面続くものと考えてください。
マンションの火災保険はこれからは適正な管理という予防の観点が重要なポイントです。補償は重要ですがきちんとした修繕計画を立てて定期的に修繕を行い、老朽化による事故を減らしていくことが必要です。
水漏れ、漏水事故の被害者になったとき知っておきたいこと
専有部分あるいは共用部分からの水漏れ、漏水で自分が被害者になることがあります。その場合はすでに解説したように加害者側の賠償責任保険で損害賠償してもらうかたちになります。水漏れ事故であれば、人身事故は考えにくいので基本は物損事故です。覚えておきたいのは対物賠償する場合、基本的な考え方は時価賠償です。
例えば水漏れの結果、パソコンが壊れてしまったら、損害賠償は時価で計算します。つまり購入時の新品ではなく、使用した年数分を考慮したかたちになります。自動車事故などと同じです。これが相手から損害賠償を受けるときの基本です。
このとき自分が加入している火災保険の利用もありえることも覚えておきましょう。昨今の火災保険は時価ではなく、再調達価額(新価)で契約しているのが一般的です。
上記のパソコンの例だと、加害者の損害賠償は時価でされるが、自分の火災保険は新価で計算するのが現在の火災保険です。
つまり相手との損害の計算に差額が生じます。被害が小さければ大した金額にはならないでしょうが、それなりに大きな損害があった場合、差額も馬鹿になりません。自分が火災保険を契約している保険会社に確認してみてください。
※損害保険会社によって補償の名称など異なるケースがあるので必ずご確認ください。
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