スキー・スノーボード中の事故で損害賠償が発生したら、保険は?
スキーやスノーボードはその特性上、ケガや用具の破損・盗難、遭難そして第三者への損害賠償事故などさまざまなリスクがあります。滑走中に転んでケガをしたり用品が破損すれば大変ですが、相手(第三者)がいる損害賠償事故(加害者・被害者になったとき)はさらに厄介です。これは交通事故などと同じことですが、その場で相手と揉めたり言い争ったりすると、面倒な上にとても嫌な思いをします。こうしたスキー・スノーボードの損害賠償事故についてお話しします。
スキー場での事故、どんな場合に損害賠償が発生する?
それでは実際にどのような事故があって、どのような損害賠償がなされる可能性があるのでしょう。主なものは以下の通りです。- スキーヤー・スノーボーダー同士でぶつかった場合の損害賠償責任
- スキー場の管理に伴う事故。例えば事故が発生した場合、危険と思われるところがあるのにその対処をしなかったなど
- スキー場の禁止事項等を無視してゲレンデ外でスキー、スノーボード等(バックカントリー)をして遭難した
最後の「遭難した」ケースは、加害者への損害賠償請求と多少意味合いが違ってきます。スキー場によっては、ゲレンデ外(バックカントリー)への滑走等について禁止事項やローカルルールを設けているところもあります。
最近は外国人旅行者によるケースも増えているようですが、これを無視して遭難した際、救助費用等の請求を受けることもあるので覚えておいてください。いずれにしても、ゲレンデで損害の請求をする事故・される事故にはさまざまなケースがあるのです。
スキー・スノーボード事故の過失割合は?
スキー場での事故は、交通事故と同様にさまざまなケースがあります。そのため、過失割合について一概には言い切れない点があるのはご容赦ください。スキーヤー・スノーボーダー同士の事故については、過去の判例で加害者の過失責任を認めたものと否定したものがあります。例えば加害者が立ち止まっている人に後方からぶつかったケースでは、一般的に衝突を回避する義務は後方からぶつかった加害者にあるため過失があると言えます。しかし、ぶつけられた被害者側が急に曲がった、止まったなどの場合、被害者にも過失が認定されて過失相殺される可能性があります。
もちろんこうした事故と同じように見えて、個々の事故ではちょっとした状況が違うこともあるため個別の事情で判断は変わります。
スキー・スノーボードの事故が車の事故に比べて厄介な点
スキー・スノーボードの事故で第三者とぶつかった場合、過失割合などで揉めることが十分に考えられます。問題の原因になりそうなことをピックアップします。- 事故状況の認識で食い違いがある(車のようにドライブレコーダーなどはない)
- 自分が被害者の場合、相手が保険に加入していない可能性もある
- 相手に逃げられることもある(交通事故のようにナンバーを確認するとかできない)
- すぐに警察を呼んで現場検証ができるわけではない
- 天候や視界が悪いときは事故の状況確認がさらに曖昧で目撃者もいないことも
車には信号や一時停止、優先道路など道路交通法がありますが、スキー・スノーボードはそうではありません。また事故相手の性格によってはさらに厄介になる可能性もあります。
スキー・スノーボード事故の損害賠償に備えるには保険が有効
最低限、自分が事故の当事者(加害者または被害者)になった際、保険で対処できるようにはしておきたいところです。「保険に加入することがすべてではない」という話は当ガイドサイトのさまざまな記事でお話ししていますが、特に損害賠償については少々事情が異なります。相手への損害賠償がいくらになるか分かりませんし、死亡や後遺障害を伴うような人身事故であれば、貯金などで対処できる話ではなくなります。それなりの速度で滑走するスポーツだからこそあり得る話です。ほとんどの人は保険に頼らざるをえないでしょう。
■加害者に必要
個人賠償責任保険特約(個人賠償責任補償特約、日常生活賠償特約など名称は保険商品によって異なります)などには加入しておきたいところです。実際には、自動車保険や火災保険、傷害保険などに特約で付帯する形になります。意識して加入しなくても、すでに特約が付帯されていることも珍しくない補償です。
例えば賃貸物件に住んでいて入居時に火災保険に加入した記憶のある人なら、特約でこの補償がついている可能性が高いです(賠償額はあまり高くない)。自動車保険や持ち家の火災保険・傷害保険も同様です。スキー・スノーボードと謳っていないので、勘違いしがちなので注意してください。
持ち家でマンション管理組合で加入する共用部分の保険にもこの保険を一括で加入しているケースがあります。日常生活全般の賠償をカバーできるものはスキー・スノーボードの事故も対象です(管理組合の保険でそこまでする必要があるのかという議論は別)。
またこの手のレジャー関連やスポーツ関連の保険は、スマホで1日単位で加入できるものが増えてきました。補償が少なめなケースもありますが、数百円で加入できるものが多いので、対応する保険がないようなら検討してみるといいでしょう。
■被害者に必要
ケガの場合には傷害保険、スキー・スノーボード用品などはその補償が必要です。スキー・スノーボード関連の保険であればこれらの補償を付帯することができますが、どこまで補償されるかきちんとチェックしておきましょう。スキーやスノーボードに限定しない一般の傷害保険、先ほどのスマホで加入する保険でも備えることができます。
自分が被害者なら相手に弁償させればいい、と考える人もいるでしょう。しかし相手が逃げた、事故状況の認識の相違で相手と話が進まないということもありえます。
■示談交渉サービスの有無もチェック
最近は示談交渉サービスの付帯が当たり前になってきましたが、個人賠償責任保険特約の中にはこれがついていないこともあるので、念のため確認してください。
世の中には色々な人がいます。スキー場での事故で面倒な相手に出くわしたときに泣き寝入りしろというわけではありませんが、自分の保険でなんとかできる体制を整えておくと事故の際の経済的あるいは精神的な負担は軽くできます。