2/2 引越しで、積み忘れたものは子どもの心？ [引越し] All About

一体何が原因なの！

そんなTちゃんの姿を眺めながるとWさんの気持ちもどんどん落ち込んでいきました。何が一体Tちゃんを塞ぎこませてしまったのでしょう。どんなに考えても原因は見つからず、Tちゃん自身にも全く分からない様子。学校に行かなくなったTちゃんは、日に日に自分の部屋に閉じこもる時間が長くなっていきました。

突きつけられた現実が受け止められなくて……

ある日、朝ごはんの時間になってもTちゃんは起きてきませんでした。「Tちゃんどうしたの！」階下からのお母さんの呼びかけにも返事はありません。不審に思ったお母さんは階段を駆け上り、Tちゃんの部屋のとびらを開けたとたん目を疑いたくなるような光景が……。

びりびりにはがされた壁紙、タンスから出され散乱した数々の衣服。そして今まで見た事もない形相のTちゃんが買ったばかりの机をキズつけているではありませんか。小さい頃から優しく、どんな言いつけも守ってきたTちゃんとは思えない変貌ぶりに、Wさんは呆然と立ち尽くしてしまいました。

「ごめんね、つらかったのね……」、お母さんのほほに涙が伝います。そしてTちゃんをゆっくりと抱きしめました。

時間を取り戻そう

それからWさんは専門家にアドバイスをもらいながら、２人での時間を大切にするよう心がけました。ゆっくりご飯を味わい、一緒にお風呂に入り、一緒に寝ました。以前住んでいたマンションにも時間があれば出かけました。友だちを家に呼んだり、Tちゃんが寂しい思いをしないよう子犬を飼い始めました。

ペットが少しずつ心をいやしてくれた

徐々にTちゃんの表情が和らいできました。数ヶ月後、学校に再び通えるほどになりました。初めは保健室でしか過ごせなかったこともありましたが、今ではみんなと一緒に授業を受けられるようになりました。

すっかり以前と同じようになったTちゃんに原因を聞いてみても、「わからない」と言います。「ただ、急に学校に行きたくなくなった」と言うばかり。

引越しが幼い心にどのように作用したかは分かりません。しかし、小さな引越しでさえそれが引き金となって様々な感情が一気に押し寄せ、心のバランスを失ってしまったのでしょう。特に引越しは、幼い子にとって世界が変わる一大事。引越しの忙しいひと時にも、その様子に気を配ることを忘れずにいたいものです。