イグアナの飼い方とは
イグアナの飼い方
両爬にほとんど知識がない方向けに、良くも悪くもグリーンイグアナに関する基本的な知識を、ご紹介していきたいと思います。
ただ、少しだけ意識改革みたいな部分もありますので、一般の両爬ファンの方々も、どぞヨロシク。
<目次>
意外にも見かけることが少ない?
イグアナのこと、っていうとどうしても、両爬のことを少し知っている方たちには「今さら、何を...」って感じでしょう。何が今さらなんでしょう?
実は、グリーンイグアナというのは、一般の両爬ファンの方々から見ると
「でかくて、飼育に金がかかるのに、小さくてかわいらしい頃に、むちゃくちゃ安価に安易に売られていた」
という認識、極端に言うと表現は乱暴ですが「販売側が無責任」な感じで売られていた時期があったトカゲなんです。
ですから、グリーンイグアナは一般の両爬ファンからはあまり関心を持たれない両爬の代表なんです。そのため、両爬専門のショップでは、やはりグリーンイグアナは扱わないことが多く、意外にも見かけることが少ない種類と言えます。
グリーンイグアナという生き物
とりあえずは「両爬オンライン図鑑 Terra Herpsグリーンイグアナの項にも書いてありますが、簡単にここでも触れておきましょう。グリーンイグアナIguana iguana は、イグアナ科に属する大型のトカゲです。
熱帯である中南米に分布し、現地では食用になっている場所もあります。
体長(尾を入れない長さ)は最大でも80cmほどですが、成長すると尻尾まで入れた全長は最大で180cmほどになる場合もあります。
グリーンイグアナの成体 |
尾には黒くて太いバンドが入っていて、体色にメリハリを与えています。
雌雄ともに、成体になると後頭部から尾まで背中線に棘状の突起(クレスト)が発達し、迫力が出てきます。このため、ほとんど使われませんが、日本では「タテガミトカゲ」などと呼ばれることもあります。ただ、その迫力は「トカゲ」という枠を超えて「恐竜」や「怪獣」という言葉の方が向いていると思われるほどの迫力ある風貌です。
また喉の下に大きなヒダ(咽頭垂)が発達し、下顎の後方に非常に大きな円形の鱗があるのも目立った外見の特徴と言えるでしょう。
分布地では熱帯雨林の水辺の近くで樹上生活をしています。昼行性で日光浴を好みます。
幼体時は昆虫を食うことも多いようですが、成長すると完全な植物食になり木の葉や果実などを主食にします。
卵生で、メスは20-40個ほどの卵を産みます。飼育下でも繁殖をさせることは難しくはなく、国内で流通するグリーンイグアナは、ほぼすべてが国外で繁殖させた個体です。
飼育下での一般的な寿命は10-15年程度であることが多いようです。アメリカでは29年生きた記録もあるようです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、沖縄県の石垣島にはグリーンイグアナが自然下で繁殖してしまっている場所があります。特定外来生物法などの観点から考えれば憂慮すべき事態ではあります。
一方、ワシントン条約(CITES)で、付属書II類に掲載されている種でもあり、輸出入に制限がある種類でもあります。
さて、ではいよいよイグアナの飼育について考えてみましょう。
イグアナ飼育の大変さ
イグアナ飼育が、どうして両爬ファンの間に、イマイチ評価が低いのかというと、なんといっても、それは「成長したときの大きさ」に尽きます。物理的に「大きい」ということと、その大きさ等に起因する「経済的負担」が何よりも安易なイグアナ飼育を薦めない理由です。
イグアナは2m近くになる生き物
「肩にイグアナを乗せてかわいがりたい」という夢を持っていらっしゃる方がいるのでしたら、まず大きさの感覚だけでも見直す必要があります。グリーンイグアナの幼体 |
イグアナは大きいから設備が大変
ショップで販売されている、ベビーサイズならばもちろん60cmの水槽で飼育はできますが、あっという間にそれ以上の大きさの飼育容器が必要になります。部屋の中で放し飼いというのも選択肢の一つになってしまいます。イグアナは大きいから扱いが大変
基本的に、あの大きさにしては温和な性質で、扱うときの危険性は少ないのは事実です。しかし、一方で「鋭いツメ」「大きな口」「長くて丈夫な尻尾」があることも事実です。素肌に爪を立てられれば、皮膚が裂けてしまうこともありますし、振られた尻尾に当たったらミミズ腫れにもなります。さらに大きな口には鋭い歯が並んでいて、想像以上のアゴの力ですから万一、咬まれた場合は大変なケガになります。
彼らに悪気がなくても、間違った扱いをすれば物理的にそうなるのは仕方のないことでしょう。
イグアナを飼う覚悟……経済的負担・設備編
イグアナを健康に、幸せに飼育してあげるためには結構お金がかかることも忘れてはいけません。先にも述べましたが、飼育ケースも大きくなくてはいけません。
また後述しますが彼らには「保温」「紫外線」が必要ですから、光熱費と専用の照明器具が継続的にかかります。
イグアナを飼う覚悟……経済的負担・エサ編
イグアナは植物食性で、できれば毎日新鮮な野菜や果物を与える必要があります。毎日の食事のための買い物をされる方ならわかると思いますが、新鮮な野菜や果物というのは、意外に高いものです。できれば農薬などの心配がない安全なモノを与えたいですし。
イグアナを飼う覚悟……経済的負担・病気編
イグアナは、どちらかというと丈夫な生き物ですが、やはり日本の気候は、彼らのふるさととは異なる環境ですから、さまざまな病気にかかったりケガをしたりして動物病院のお世話になることが考えられます。残念ながら、動物病院でイグアナを診てもらえるところというのは、そう多くはありません。一時期よりは、ずいぶん増えたんですけど。都合良く近所にイグアナを診てもらえる病院があるとは限りませんから、通院に交通費もかかります。
また、一般的ではありませんから、ある意味特別な診療になってしまうため、診察料も割高になってしまうのも仕方ないでしょう。
誤解されてしまう言い方ですが、下手に大きいが故に手術できてしまうため、手術代も必要になる例も多いようです。
周囲の理解が得られにくい
いくら、キレイでおとなしくても見た目は恐竜ですし、大きなトカゲです。イヌやネコよりは周囲の理解が得られにくいのは覚悟が必要です。
特に、アパートなどの賃貸住宅で、はじめの契約書に「イグアナ禁止」と書いてないからいいのでは?なんて言うのは、常識力の欠如でしょう。
部屋を汚す可能性、臭いを付ける可能性、近隣住民の感情などを考えれば、それらの懸念は杞憂であることを理解して許可をしてもらう必要がある生き物です。
いかがでしょうか?イグアナは、キレイでカワイイ、ちょっと変わったペット、というような感覚で飼育できる生き物ではないのがおわかりいただけましたでしょうか?
安易な覚悟での飼育は、イグアナも飼育者も不幸な目に遭う可能性があるのです。
よく考えてみると
ただ、ちょっと冷静に落ち着いて考えてみると、ここまで挙げてきたイグアナ飼育の欠点、あるいは一般の両爬飼育者の中にある、これらイグアナ飼育への先入観って、そんなにマイナス要因でしょうか?よく考えてみたら、これらの欠点って「適温の維持」「紫外線必須」以外は、中型以上のイヌを飼育するのと、別に変わりはないような気がします。というかイヌより楽なのではないでしょうか?
イヌも咬まれれば大けがするし、室内で飼育するのならドッグサークルを使ったり部屋の中で放し飼いしたり。
エサ代だってイヌの方がたくさん食べるだろうし、動物病院の世話になるのはイヌの方が多いような気もするんですが。
私も、イヌやネコを部屋の中で放し飼いしている方の家などに行きますが、毛はスゴイわ、柱や障子、フスマはボロボロになるわ、臭いはするわで、本当に犬猫の飼育者って大変だなぁ、って感じるんです。いや、イヌもネコも大好きなんですよ。私だって。
イグアナ飼育は大変、って結局は、ヘビとかヤモリとかの比較的飼育が楽な両爬飼育者の価値観なんだろうな、と改めて感じているところです。
要は、初心者が何の予備知識も持たずに飼育を始めてしまうところなんだろうな、という気がします。
室内で放し飼いのイグアナ |
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