サントリーニ島で世界遺産を考える
こんなかわいらしい家々がそこかしこにある。ぜひ街を迷い歩いてみよう。©牧哲雄 |
世界には、非常に美しいが世界遺産にはなりにくいという街並みが数多く存在する。
たとえば「東洋のヴェネツィア」と言われる中国の蘇州。川と湿地と家々が複雑に入り組んだ景観は息を呑むほど美しいが、家は現代の普通の家を白く塗っているだけだし、川にはタンカーが行き来して、湿地の保護は進まず、開発だって進行中。こんな状態で世界遺産になるのは難しいが、大自然と人々が一体となって生活する様子に心底感動するだろう。
サントリーニ島の街並みも同様だ。歴史的に古いわけではないし、文化財として法律で厳しく保護されているわけでもない(壁や屋根の色は規制されていたりするが)。しかし、これ以上に美しい島が世界にいったいいくつあるだろうか?
世界遺産にはどんな意味があるのか?
普遍的価値とはいったい何か?
サントリーニ島はきっとそんなことまで感じさせてくれる。
ちなみにアクロティリの遺跡は1989年に世界遺産に推薦されて審議されたが、審議は延期されており、現在はギリシアの暫定リストからも外されている。とはいうものの、エーゲ文明でこれほど保存状態のよい遺跡は他になく、エーゲ文明やエジプト文明の影響を感じさせる非常に美しい壁画や、動物たちの躍動感溢れる絵で覆われた壷など、見所も多い。郊外には紀元前9世紀から栄えた古代ティラの遺跡もあるので、ぜひ立ち寄ってみよう。
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