時代時代の街並みが共存する歴史ワンダーランド
エディンバラ(エジンバラ)

ロイヤル・マイルとザ・ハブ

中世や近世に迷い込んだような街並みが広がるロイヤル・マイル。中央奥の建物はヴィクトリアン・ゴシック様式の傑作、ザ・ハブ

東にカールトン・ヒル、南にアーサーズ・シート、西にキャッスル・ロックといったダイナミックな岩山がそびえ、北には北海のフォース湾が広がる風光明媚なエディンバラ。世界遺産「エディンバラの旧市街と新市街」は3つの岩山に囲まれた美しい土地に切り拓かれている。

エディンバラ旧市街&新市街(Googleマップ/航空写真)
エディンバラの見所(Googleマップ/ガイド制作の見所マップ)

旧市街は東のホリールード宮殿から西のエディンバラ城に至るロイヤル・マイルを中心とした地域で、バロック様式の王宮、ゴシック様式の大聖堂、ルネサンス様式のお城、ノルマン様式の教会等々、古いもので800年以上の歴史を誇るレンガや石造りの建物が並んでおり、中世や近世の街並みが広がっている。
新市街の整然とした街並み

雑然とした旧市街と対照的な新市街の整然とした街並み。1767年、当時無名の建築家ジェームス・クレイグのデザインがコンペティションを勝ち抜いて採用された (C) Kim Traynor

一方、旧市街の北に広がる新市街は近代の街並みだ。こちらは18世紀後半に建設された計画都市で、「新市街」といっても200年以上の歴史を持つ。区画整理された土地に高さのそろった建物が整然と立ち並んでおり、ジョージアン様式という古代や中世の建築を近代風にアレンジした重厚かつ軽快なデザインで統一されている。

新市街や旧市街の北や西にはさらに新しい新・新市街が広がり、その外側には現代建築もしばしば見られる現代都市が展開している。エディンバラは町歩きをするだけでさまざまな時代を行き来できる歴史ワンダーランドなのである。

スコットランドの首都エディンバラ

カールトン・ヒルから眺めたエディンバラの絶景

カールトン・ヒルから眺めたエディンバラの絶景。円形の建物は詩人ロバート・バーンズを称えたバーンズ・モニュメント、中央奥にはエディンバラ城、右にはスコット・モニュメントが見える

多彩な顔を持つエディンバラ。その第一の特徴は「スコットランドの首都」であるという点だ。そもそもイギリスの首都はロンドンなのに、なぜスコットランドに首都があるのだろう?

イギリスの正式名所は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」で、主としてグレートブリテン島のスコットランド、イングランド、ウェールズと、アイルランド島の北アイルランドの4つの国から成立している。

17世紀はじめにスコットランド王ジェームズ6世がジェームズ1世としてイングランド王に即位すると、両国とも同じ王様を掲げる同君連合となり、王はロンドンに居住した。スコットランドはイングランドによる支配を警戒してたびたび反抗するが、17世紀半ばにイングランドのクロムウェルによって占領され、1707年にグレートブリテン王国として合併した。これによりスコットランドの国王や議会は廃止されている。
ホリールード宮殿

ホリールード宮殿。12世紀にはホリールード寺院の敷地だったが、15世紀に宮殿が建てられ、17世紀にバロック様式の現在の形に仕上がった

エディンバラは1492~1707年の間、スコットランドの首都として繁栄した。この首都を守る城がエディンバラ城であり、王の住居がホリールード宮殿で、スコットランド国教会の教会堂がセント・ジャイルズ大聖堂だ。旧市街は王国の主要な建物が立ち並ぶまさに中枢だった。

近年、スコットランドではイギリスからの分離独立が論争されている。1999年にはスコットランド議会が復活し、2004年にはホリールード宮殿の正面にモダンなスコットランド議事堂が竣工した。これもスコットランドの人々の独立心の現れなのだろう。

アーサー王にシャーロック・ホームズ、ハリー・ポッター!
文芸都市エディンバラ

新市街から眺めた旧市街とアーサーズ・シート

新市街から眺めた旧市街。奥に見えるアーサーズ・シートは3億年以上前の火山活動によって誕生した噴火口で、200万年ほど前の氷河期に氷河に削られて断崖が形成された

エディンバラはイギリスの文学や芸術と強い関わりを持つ文芸都市でもある。

まずはアーサー王物語。5~6世紀を生きた伝説の王様アーサーと円卓の騎士たちを主人公とする、騎士道物語に魔法使いや巨人の伝説、キリスト教の聖杯伝説なども絡めた壮大な物語だ。旧市街の南西にはアーサーズ・シート(アーサーの玉座)と呼ばれる岩山があり、王の居城キャメロットがあったとも伝えられている。

高層ビルのない旧市街&新市街で、天を刺すようにそびえているのがヴィクトリアン・ゴシック様式のスコット・モニュメントだ。歴史作家ウォルター・スコットの偉業を称えた記念塔で、高さ61mの頂上付近まで登ることができる。
エディンバラ城から見下ろすプリンシーズ・ストリート・ガーデンズ

エディンバラ城から見下ろすプリンシーズ・ストリート・ガーデンズ。左は高さ61mのスコット・モニュメント、右下はエディンバラ・ウェイバリー駅。奥にはカールトン・ヒルも見える

カールトン・ヒルの西にはスコットランドを代表する詩人ロバート・バーンズを称えたギリシャ建築風のバーンズ・モニュメントがある。スコットランドでは彼の誕生日である1月25日のバーンズ・ナイトには伝統料理ハギスを食べ、「ハギスに捧げる詩」を歌う風習がある。また、『ジキル博士とハイド氏』や『宝島』の著者ロバート・ルイス・スティーブンソンもエディンバラの出身だ。以上三名ゆかりの品々は旧市街の作家博物館に収蔵されている。

新市街の東にはシャーロック・ホームズの像が立っており、正面にはザ・コナン・ドイルというバーがある。著者コナン・ドイルはこの辺りで生まれ、エディンバラ大学に通っていた。

また、近年はハリー・ポッターゆかりの地を巡るポッター・トレイルが人気を博している。生活保護を受けるほど困窮していた著者J.K.ローリングがカフェ、ザ・エレファント・ハウスで第一巻『賢者の石』を書き上げた逸話は特に有名。他にもホグワーツやダイアゴン横町のモデルといわれるジョージ・ヘリオット・スクールやヴィクトリア・ストリートなど数々の名所がある。

エディンバラは世界最恐のホラー・タウン!?

北西方面から眺めたエディンバラ城

北西方面から眺めたエディンバラ城。至宝スクーンの石と、オナーズ・オブ・スコットランドと呼ばれる王冠・宝剣・王笏の三種の神器が収められたクラウン・ルームは必見

エディンバラは中世から近代まで、スコットランドとイングランドの対立や宗教改革の抗争など争いが絶えることはなかった。一説によると1100年の歴史の中で26回も包囲されており、世界でもっとも侵略を受けた都市のひとつとされている。

それだけに戦いの跡や虐殺場・魔女裁判の跡地など、おどろおどろしい逸話を持つ場所も少なくなく、そんな場所ではしばしばポルターガイストや霊現象が報告されているという。これを逆手に取った心霊ツアーも数多く、エディンバラの人気アトラクションのひとつになっている。特に有名な心霊スポットを3件紹介しておこう。

■世界最恐の墓地、グレイフライアーズ・カークヤード
切り傷や引っかき傷、失神などを起こす人が絶えず、被害が多かったことから入場できる地域が制限され、夜間はツアーでのみ立ち入りが認められている。これらは17世紀にキリスト教長老派約1000人を虐殺したジョージ・マッケンジーの呪いとされており、1998年に浮浪者が墓廟のドアを開けたことから呪いが開放されたという。また、19世紀には遺体泥棒が多くの墓を暴いてエディンバラ大学医学部に密売しており、安息を破られた霊たちの怒りを招いたともされる。
Greyfriars Kirk(公式サイト。英語)
カールトン・ヒルから眺めた旧市街

カールトン・ヒルから眺めた旧市街。右の尖塔がザ・ハブ、中央の王冠状の尖塔がセント・ジャイルズ大聖堂、右下の橋はノース・ブリッジ

■幽霊が暮らす地下都市跡、メアリー・キングス・クローズ
ロイヤル・マイルは貴族が暮らす高級住宅街だったが、丘の下にはゴミや汚物を捨てるゴミ捨て場が広がっており、スラム街が展開していた。しかし、ペストをはじめとする疾病が流行ったことから17世紀に封鎖することになり、貧民もろとも埋め立ててしまったという。以来周辺では多くの霊が目撃されており、リアル・メアリー・キングス・クローズでは発掘された地下都市跡が見学できる。
Real Mary Kings Close(公式サイト。英語)

■心霊現象の宝庫、エディンバラ城
エディンバラ城は町を守る城であると同時に、囚人を収容したり拷問や処刑を行う刑場でもあったことから多くの霊が目撃されるという。もっとも有名な霊はバグパイプ奏者で、地下トンネルが発見されたときに迷わぬように音を出しながら探索していたが突如音が途切れ、以来発見されることはなかったという。他にも、16世紀に魔女裁判で火あぶりの刑に処せられたレディ・ジャネットの霊や、クロムウェルも目撃したという頭のないドラム奏者の霊、入口のゲートハウス付近に現れる幽霊犬などが有名。
Edinburgh Castle(公式サイト。英語)

エディンバラの名所&見所

ミリタリー・タトゥー

ミリタリー・タトゥー。毎年8月にエディンバラ城で開催されるパレードで、タータンの入ったキルト(腰巻き)をはじめ伝統衣装に身を包んだ兵士たちがバグパイプの音色をバックに行進を行う (C) Kim Traynor

ここではエディンバラの主立った名所と見所を一気に紹介していこう。

■エディンバラ城
岩山キャッスル・ロックに立つ城塞。頂上にそびえるクラウン・スクエア、代々の王が戴冠を行った「スクーンの石」などの宝物を収蔵するクラウン・ルーム、12世紀に建設された最古の建物セント・マーガレット教会など数多くの見所がある
Edinburgh Castle(公式サイト。英語)

■ホリールード宮殿
スコットランド王の王宮。特に悲運の女王メアリー・スチュアートの居城として有名で、メアリーの寝室などが見学できる。美しい廃墟・ホリールード寺院や王家の宝物を収めたクイーンズ・ギャラリー、アーサーズ・シートを含むホリールード公園が隣接している。
Palace of Holyroodhouse(公式サイト。一部日本語)

■セント・ジャイルズ大聖堂
スコットランドの人口の40~50%が信じるスコットランド国教会の教会堂。1124年頃の創建で、14世紀に大火を受けて改築され、15世紀に王冠状の尖塔をはじめゴシック様式の意匠が加えられた。
St Giles' Cathedral(公式サイト。英語)
セント・ジャイルズ大聖堂

ゴシック様式の意匠が美しいセント・ジャイルズ大聖堂。19世紀にはめられたステンドグラスには聖ジャイルズ(アエギディウス)をはじめとする聖人たちの姿が描かれている

■ロイヤル・マイル
ホリールード宮殿からセント・ジャイルズ大聖堂を経てエディンバラ城に至る1マイル(1.6km)で、旧市街最大の見所。スコットランド議事堂、子供史博物館、リアル・メアリー・キングス・クローズ、作家博物館、スコッチウィスキー・エクスペリエンスなど多くの名所がある。
ROYAL MILE(公式サイト。英語)

■プリンシーズ・ストリート・ガーデンズ
旧市街と新市街に挟まれた庭園群で、園内には世界最古と言われる花時計やロスの噴水、スコット・モニュメントなどがある。また、国立スコットランド美術館やエディンバラ・ウェイバリー駅などが隣接している。

■エディンバラ新市街
旧市街の北に広がる区画整理された街区で、家並みはジョージアン様式で統一されている。特に特徴的なのはシャーロット広場で、ロバート・アダムが設計した首相官邸ビュート・ハウスやジョージアン・ハウスなどの見所が集中している。

■カールトン・ヒル
新市街の東に位置する丘で、旧市街と新市街が一望できる。ギリシャの世界遺産「アテネのアクロポリス」のパルテノン神殿を模したナショナル・モニュメントや、ナポレオンのフランス海軍を破ったトラファルガー海戦での勝利を記念したネルソン・モニュメント、私立天文台などがある。
Calton Hill(公式サイト。英語)

エディンバラへの道

ホリールード寺院

廃墟ながら美しいたたずまいを見せるホリールード寺院。宮殿に隣接する王家の教会堂だったが、1688~89年の名誉革命で大破し、一時修復されたものの18世紀の嵐で再び破壊された (C) XtoF

■エアー&ツアー情報
最寄りの空港はエディンバラ。日本からの直行便はないのでロンドンやヘルシンキ、アブダビなどを経由する。格安航空券で8万円前後から。ツアーは6日間10万円前後から。

ロンドンから陸路で移動する場合は電車で4~5時間、長距離バスで9~10時間。
世界遺産「フォース橋」

フォース湾に架かる世界遺産「フォース橋」。エディンバラ城の北西わずか13kmほどなので、ぜひ訪ねておきたい

■周辺の世界遺産
エディンバラが面するフォース湾には「フォース橋」があり、南西約50kmに「ニュー・ラナーク」がある。ロンドンに立ち寄る場合はロンドンと近郊に「ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター寺院及び聖マーガレット教会」「ロンドン塔」「河港都市グリニッジ」「キュー王立植物園」がある。

エディンバラのベストシーズン

ワン・オクロック・ガン

旅行者に人気のイベント、エディンバラ城のワン・オクロック・ガン。日曜と特別な祭日を除く毎日午後1時、1発の空砲が空に放たれる

エディンバラは北緯56度と樺太より緯度が高いが、暖流である北大西洋海流の影響で比較的暖かい。夏の平均最高気温は18度、最低は10度、冬は6度と2度。札幌の夏よりかなり涼しいが、冬は札幌より10度ほど気温が高い。

降水量は年間を通じてほぼ一定で、日本に比べてかなり少ない。雨は降らないわけではないが、あまり気にすることはなさそうだ。ベストシーズンは気候が穏やかな夏とその前後。

世界遺産基本データ&リンク

エディンバラ城と旧市街

左がエディンバラ城、右の街並みが旧市街。エディンバラ城の右側にエントランスとなるゲートハウス、その左に曲面の城壁、そして王の居室だったロイヤル・パレスが見える (C) Kim Traynor

【世界遺産基本データ】
登録名称:エディンバラの旧市街と新市街
Old and New Towns of Edinburgh
国名:イギリス
登録年と登録基準:1995年、文化遺産(ii)(iv)

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