フルーツを使ったフランス語とは? 桃やプラムで表現!
フルーツを使ったフランス語
ガイドに寄せられた一通の楽しい質問メール。「質問なのですが 英語でpeachというと、女性に対する 褒め言葉と聞いたことがあります。 例えば She is a peach. は「とてもステキな人!」等。フランス語でもそのような意味で使えるのでしょうか? 」(T.Mさん)
先の質問にある英語表現に関しては、辞書にこそのっているものの、現在ではほとんど使われていないようで、この表現にぴったりあてはまるフランス語表現はないとのことでしたが……。
せっかくおよせいただいたご質問。そのままにしておくのは、あまりにも「もったいない!」ということで、今回は、「フルーツを使ったフランス語表現」をフランス人に徹底調査。その中でも日常会話で普通に使う表現を選んでいただきました。T.Mさん、御協力いただいたみなさん! 本当にありがとうございました。
桃編:ソフトなイメージはもはやなし?
甘~くやさしいイメージのpêche
それでは、ご質問いただいた「ピーチ」からまいりましょう。
やさしい、ソフトなイメージがある桃ですが、フランス語の世界に足を踏み入れると、
il m'a mis une pêche.(彼は私をなぐった)、
il a ramassé une pêche.(彼は一発食らった)という風に、「痛いもの」となってしまうようです。pêcheのもつ色や、形が殴られた跡を思いおこさせるのかもしれませんね。
- avoir la pêche(アウ゛ワール ラ ペシュ/元気である)
avoirは、「持っている」という意味なので、直訳は「桃を持っている」。スタンダードな表現で同じ意味をあらわすものに、
être en pleine formeや
se sentir plein d'énergieなどがある。見知らぬ人に、「Vous avez la pêche?」(元気ですか?)と問われても、別に桃をほしがっているわけではないのでご注意を。
プラム編:なすびとプラムの不可解な関係とは?
さて、Vous avez la pêche?と聞かれて「prune(プリュヌ/すもも)ぐらい」と答えてもウケるかどうかは知りませんが(試してみてください)、「もも」つながりで、「プラム」を使った表現をみてみるとこれがなかなかのくせ者です。
- pour des prunes(プール デ プリュヌ/無駄に)
pourは「~のために」という意味を持つ前置詞。直訳は、「プラムのために」。
pour rienが、スタンダードなフランス語で、
travailler(トラヴァイエ/働く)、
compter(コンテ/数える・考慮に入れる)のような動詞といっしょに使います。
- secouer comme un prunier(スクエ コム アン プリュニエ/強く揺さぶる・しかりつける)
secouer は「揺さぶる」、commeは「~のように」という意味。prunierは「プラムの木」のことで、直訳は「プラムの木のように揺さぶる」。熟したプラムを木から落とすためにはげしくゆさぶることから。
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Aubergine(なすび)にはご用心! |
- prendre une prune(プランドル ユヌ プリュヌ/違反をとられる)
この場合のpruneは、
contravention(コントラヴァンシオン/違反・駐車違反きっぷ)の意味。
Je me suis garlé en stationnement interdit, j'ai pris une prune.(駐車禁止区域に車をとめてたら、違反きっぷをきられた)というような感じで使う。それでは、意地悪な質問を一つ。次の文はどういう意味でしょう?
L'aubergine m'a collé une prune. (直訳:なすびがわたしにプラムをくっつけた。)
さてさて、「なんじゃそりゃ???」という感じですが、aubergine (オーベルジーヌ)という名詞は、「なすび」を表すと同時に、かつて「なすび」色の制服を身にまとい、活躍していたフランスの「駐車違反取締の女性」のことをさします。現在は制服の色も変わり、
pervenche(ペルヴァンシュ/ツルニチソウ)に変化。Pruneについては、解説済みですので想像はつくでしょう。
「駐車違反取締の女性に違反きっぷを貼られた。」が正解でした。
あまりにもの、わけのわからなさ加減にちゃぶ台をひっくり返したくなってしまった方、スミマセン。
りんご:禁止行為、愛の営みの象徴
フランス語ではpomme d'amour(愛のりんご)と呼ばれるりんご飴
フランス語で、「りんご」は
pomme (ポム)。「じゃがいも」のことを
pomme de terre(ポム ドゥ テール/「地面のりんご」)と呼ぶことは、フランス語学習者の方ならよく知っていますよね。それでは、お次はこのpommeを使った表現をお届けしましょう。
- être bonne pomme (エートル ボヌ ポム/ばか・お人よし)
êtreは、フランス語のbe動詞、bonneは「おいしい・よい」を意味する形容詞
bonの女性形。ニュアンス的には、
trop gentil(優しすぎる)という感じ。
- haut comme trois pommes (オー コム トロワ ポム/りんご3つ分の高さ)
背の低い人を形容して大げさにいう言葉。……って、小さすぎませんか??
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Lucas Cranachの手によるÈve |
- croquer la pomme (クロケ ラ ポム/誘惑に負ける)
croquerは「(音をたてて)かじる」という意味の動詞。誘惑に負けて禁断の実をかじってしまった
Ève(エーヴ/イヴ)の逸話からきている。
- pomme d'Adam (ポム ダダン/のどぼとけ)
こちらは、ÈveではなくAdamの方。英語にもおなじような表現がありますが、「アダムのりんご」とは、「のどぼとけ」のこと。起源としてはヘブライ語の誤訳説が有力なようですが、女性代表Èveの差し出した誘惑のりんごを食べて喉につまらせてしまったのが男性代表のAdamと考える逸話も。聖書にはAdamとÈveが食べた実が「りんご」であるという記載はないそうですが、確かに後者の方がポエチックですね。
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同じくCranachによるAdam像 |
となると、白雪姫は、「知恵の実」の象徴りんごを食べ、それをのどにつまらせて男性化してしまった女性が、王子様の愛で、また女性らしい女性にもどるという現代女性のシングル化に警鐘をならすお話???
なんてことはないでしょうが、本当だったら、おそろしいですね。グリムさん。
- Une pomme de discorde(ユヌ ポム ドゥ ディスコード/争いの種)
discordeは、「不和」を意味する女性名詞。あまり使われる表現ではないそうですが、なかなか美しい表現です。起源は、
guerre de Troie(トロイ戦争)の原因となったとされている、不和の女神la Discordeが、自分が招待されなかった祝宴に投げ入れた「黄金のりんご」から。
- tomber dans les pommes (トンベ ダン レ ポム/気絶する)
tomberは「倒れる/落ちる」を意味する動詞。同じ意味を表すスタンダードな表現は、
s'évanouir (セヴァヌイ-ル)。直訳は、「りんごの中に倒れる」ですが、想像しただけでも痛そうなので、できればもうちょっとソフトなフルーツがいいかな。
さてさて、フルーツとフランス語の関係は、思ったよりは甘~くない!
続きの表現は次号でお届けいたしましょう。
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