やみくもな暗記は失敗をまねく!
たとえ20代であっても、同じようにフランス語の活用表を眺めながら、ため息をつかれた方は多いと思います。今回は、寿命がつきる前に、フランス語動詞の基本的(邪道?)な覚え方をマスターして、フランス語動詞制覇への第一歩を一緒に踏み出してみましょう。
<目次>
フランス語の動詞の覚え方……絶対にやってはならない方法
まず最初に、私自身の経験をふまえて「動詞の活用を覚えるときに、この覚え方だけは絶対にしないで!」というご忠告からさせていただきたいと思います。大学入学後、はじめてフランス語というものに接した私は、試験にむけてがむしゃらにフランス語動詞の活用を暗記しておりました。結果、ペーパーテストでは満点。その反面、フランス人教師の授業では、なるべくさされないようにうつむいておくという習性が身についてしまいました。さて、どうしてでしょうか?
それは、フランス語動詞の活用を自分に覚えやすいような読み方に変えて暗記してしまったからです。よく英語を学びたての中学生が、Wednesday(水曜日)と覚えるために「ウェッドネスデイ」などとやっておりますが、こうした暗記方法をフランス語の動詞活用の暗記に応用してしまうと後々かなり困った状況になってしまいます。
それでは、フランス語の動詞の中で最も数の多い第一群規則動詞(語尾が-erで終わる動詞の活用を例に、もう少し具体的に間違いのパターンをみてみましょう。
フランス語の活用、「イルス パルレント」って?
フランス語学習者のバイブル?!『フラ語動詞こんなにわかっていいかしら?』 |
Je (私)parle (ジュ パルル)
Tu (君)parles(チュ パルル)
Il(彼)parle(イル パルル)
Elle(彼女) parle(エル パルル)
Nous (私たち)parlons(ヌ パルロン)
Vous(あなた/あなたたち) parlez(ヴ パルレ)
Ils (彼ら)parlent(イル パルル)
Elles (彼女ら)parlent(エル パルル)
太字の部分に注目してください。フランス語の第一群規則動詞の活用は単純で、動詞の元の形である不定法(この場合はParler)の-erをとって、主語にあわせて-e, -es, -e, -e, -ons, -ez,-ent,-entと語尾を変化させます。失敗は、この変化を覚えるために、「エ、エス、エ、エ、オンス、エズ、エント、エント」などと勝手な読みをつくって覚えてしまったとことが大きな原因です。
つまり、間違いで言うと、Je parle(私は話す)「ジュ パルル」という発音は「ジュ パルレ」、Tu parles(君は話す)「チュ パルル」は「チュ パルレス」、Ils parlent(彼らは話す)「イル パルル」は「イルス パルレント」。これで、書きはバッチリです。しかし、会話となるととんでもないことになってしまいました。
私の周りにも数人、こういう覚え方をしていたのがおりましたが、全員、フランス語会話の落ちこぼれであったことは言う間でもありません。これは読みを覚えるための発音だと頭ではわかっていても、実際の会話で必ず一瞬この発音が頭をよぎってしまうのです。
フランス語の第一群規則動詞の発音の変化は、記事「ボンジュール! フランス語、学問のススメ」ですでに述べたように、3種類。これは、本当に重要な事実なのですが、私がそのあたりまえの事実に気付いたのはずいぶんと後になってからのことで、直すのにとんでもない時間を浪費してしまいました。
とはいえ、失敗だけを嘆いていてもしかたがありません。
フランス語の活用は口の形で覚える! 顔面体操で美人になろう!
動詞の活用表は音声付きのものがうれしい! |
-er動詞(第一群規則動詞)の語尾だけの発音に着目してみると、主語がelle(エル/彼女)とelles (エル/彼女たち)のときの動詞の語尾の発音はil(イル/彼)、ils(イル/彼ら)の発音と一緒になりますので、この2つの語尾の読みを省略した場合、動詞の語尾の-e, -es, -e, -ons, -ez, -entの読み方は「(無音)|(無音)|(無音)|オン|エ|(無音)」となります。
ところが、先にお話したような間違った覚え方をしなくても、例えば先ほどのJe parle(ジュ パルル/私は話す)というフランス語がでてきた場合に、「ジュ パルレ」と読んでしまう初心者の方は多いものです。
これは、第一群規則動詞の不定法がparler(パルレ)と語尾を「エ」段で発音することと、ローマ字でeのことを「エ」と読んでしまう習慣が原因なのですが、フランス語のalphabet(アルファベ)eの発音は「ウ」です。
動詞の活用語尾の「-e」は無音であるので「ウ」の音を発音するわけではないのですが、Je parleとJeの活用をするためには、動詞parleの最後を「エ」と口を横に開くのではなく、最初に口の形をJe (私/ジュ)と発音したときと同じような形に戻すという癖をつけることが大切です。
この「エ」と発音してしまいそうなところを、「ウ」の音に近い口の形に戻すという作業は、結構口元の筋肉の運動になります。まずは美顔体操をかねて、動詞活用表を見ながら音読でウォーミングアップをはかりましょう。
フランス語の活用の覚え方……発音しながら、手を動かす
音読のウォーミングアップが完了したら、今度は手の運動を加えます。ウォーミングアップは充分に。見ないで読めるようになるまで、続けることが大切です。動詞の活用が暗唱できるようになったところで、綴りを覚えていきましょう。紙と筆記用具を準備したら、「ジュ パルル/ チュ パルル...」と言いながら、音に合わせて手を動かします。きちんと、音の切れ目が綴り字の切れ目になるようにスピードを調整しながら発音し、書いて覚えて下さい。これは、単語覚えの際にも応用していただきたい基本中の基本の覚え方です。
この作業をくりかえしていくことで、音と綴り字の関係がなんとなくわかってきます。そのうち、「ジュ パルル」という音を聞くと頭の中に一瞬で、Je parleという綴り字が浮かんでくるようになります。そこまでいけばしめたもの。
フランス語には、Dictée (ディクテ)と呼ばれる「書き取り」の練習がありますが、それの一番簡単なバージョンと思って練習してください。検定試験などでも、上級では必ず出題されるこのディクテ。きちんと音にあわせて覚えていれば恐るるに足らずですよ。
フランス語のイントネーションを有名な曲で練習
フランス人には心地よい?『恋のマイアヒ』 |
サビの「マイアヒー」の箇所ではなく、イントロが終わった後の曲の開始部分の歌詞が、「最初は小さく、後半部分にアクセントがある」というフランス語のイントネーション状態で繰り返されるため、私はこの曲を聞く度にフランス語の動詞活用が頭に浮かんでくるのです。
ある日、フランス語関係者たちと移動中に、車内でこの曲がかかったので、思わず「Je suis (ジュ スィ), Tu es(チュ エ)...」と英語のbe動詞にあたるフランス語の動詞être(エートル)の活用を口ずさんだところ、これがフランス人講師にも大受けで、みんなで大合唱となりました。興味のある方は、一度だまされたと思ってやってみてください。フランス語の勉強が楽しくなりますよ。
今回は-er動詞(第一群規則動詞)の覚え方を中心にお話してまいりましたが、この覚え方は、他の動詞にも応用できるものです。どんどん覚えて、「フランス語動詞の達人」をめざしてくださいね。
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