電話をかける!
分かったらどうするの? |
「こう見ても、誰がやったかなんてわかんないわ。麻季子さん、何か分かる?」
「まあ、私なりに思うところはあるけど。でも絵里さん、仮に犯人が分かったらどうするの?」
「理由を聞きたい。で、場合によったら縁を切る」
「まあまあ。分かった。じゃあ、私にまかせてくれる?」
「ホント? いいの? やっぱ“おまかせマッキー”だわ。頼りにしちゃう」
とりあえず年賀状の束を麻季子が預かることにした。誰がやったか想像はついても、実際に相手に確認しないことにははっきりしないのだ。すでに麻季子はある程度の予測をつけていた。自宅に戻ると、改めて年賀状をじっくりと見た。そして、3枚の年賀状を選び出し、絵里が言った人物像をそれぞれ思い出して見比べた。子どもの写真もなく、これといって特徴のない年賀状だが、いくつかのことが判断できた。いずれも自宅のパソコンを使っていると思われる。つまり、自宅でコピーができるということだ。
絵里からの年賀状をモノクロコピーできるはずである。コンビニで簡単にコピーできるとはいっても、そこまでする気はないということではないだろうか。つまり、とっさにしてしまったことで、それほど計画性がなかったのではないか。また、絵里の宛て先を印刷することも容易だっただろう。さらに、印刷した賀詞だけで、手書きのメッセージがない。めんどうで書かないということもあるだろうが、書くことがない、あるいは絵里に年賀状は送っても、一言付け加えるほどの親しさがないのではないだろうか。そして、3枚とも、差出人の子どもは女の子だけである。
男の子ばかり3人の絵里は、女の子が欲しくて3人目までがんばったと言っていた。ということは、絵里自身が女の子を持っている人に対して、無意識のうちにうらやましいという思いを表現していたのではないだろうか? あるいは、その逆で、絵里に対して、男のばかりでうらやましいという気持ちが相手にあるのではないだろうか? 子どもは男の子であろうと、女の子であろうと、大切な宝物のはずだが、もし「女(男)の子がどうしても欲しい」という気持ちが強ければ、切実であればあるほど、身近な友だちがうらやましくなるかもしれないのだ。
男の子じゃなきゃなんて |
相手が次に何かする前に手を打ったほうがいい。麻季子は電話機のそばまで行き、年賀状に書かれている電話番号をプッシュした。3度ほどコールしてから相手が出た。
「あ、もしもし、竹下さんのお宅でしょうか? 私、加瀬と申しますが、美枝さんはいらっしゃいますか?」」
「加瀬さん? どちらの加瀬さんでしょう?」
「あ、あのう、突然お電話して申し訳ありません。私、横山絵里さんの友人で加瀬麻季子といいますが」
ハッと、相手が息を呑んだのが分かった。
次回、最終回「ミセスの危機管理ナビ~揺れ動く心のありか」 アップしました!
■【全4回】連載
第1回「ミセスの危機管理ナビ~切り裂かれた年賀状」
第2回「ミセスの危機管理ナビ~聞き戻せない電話」
第3回「ミセスの危機管理ナビ~推理から見えたもの」
第4回「ミセスの危機管理ナビ~揺れ動く心のありか」
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