世界中を震撼させた「デュトゥルー事件」

『すべて忘れてしまえるように』
『すべて忘れてしまえるように』

1995~96年にかけて、ベルギーで8歳から19歳までの少女6名が、「マルク・デュトゥルー」と彼の妻を含む共犯者たちの手によって誘拐・監禁・虐待され、救出された2名以外の少女たちはその後、遺体で発見されました。

世界中を震撼させたこの「デュトゥルー事件」は、日本でも報道され、9年を経た今でも記憶に残っている方も多いと思います。救出された2人の少女のうち、80日間監禁されていた少女「サビーヌ・ダルデンヌ」さんは、現在21歳。被害者である彼女が、勇気を振り絞って書いた手記を紹介します。

サビーヌさんは12歳のとき、自転車に乗って学校に向かっている途中、誘拐されました。80日間を幅99センチ、奥行き2メートル34センチの黄色い壁に囲まれた不潔な地下の穴蔵で生き延び、救出された後に待っていたのは、世間の好奇の目でした。

この手記は、冷静な自己分析と現実をすべて見届けた者のみが書ける渾身の内容です。本の初めのほうに、「すべての犠牲者に」と書かれている1ページがあります。この言葉は、事件で命を奪われた犠牲者たちだけにではなく、性被害を受けたことのあるすべての人に捧げられています。

『すべて忘れてしまえるように』の意味

多くの人が子どもの頃に、程度の差はあってもなんらかの性被害に遭っていると考えられます。誰にも言えないまま心の底に閉じこめてある記憶が、心の傷になっている人は多いはず…。そうした人たちに、この本『すべて忘れてしまえるように』は、「尊厳を持って、力強く生きること」を教えてくれます。

また、被害者でありながら世間の好奇の目というものにさらされてしまうという、どこにでもありがちな社会のあり方についても、サビーヌさん自身がこうして手記を発表することで、ほかの誰にもなし得なかった「世間や社会というものの問題点」を真っ向から突きつけています。

プロモーションのために来日中、多数のマスコミからのインタビューを受けられたとのことで、出版元のソニー・マガジンズの広報担当者からは、次のようなメッセージをいただきました。

「サビーヌさんのように被害者が実名でメディアに登場するということは大変貴重な機会であり、この本が、今なお人に言えず苦しんでいらっしゃる方に少しでも勇気を与えてくれることを、スタッフ一同願ってやみません」

「サビーヌさんは今でも、『その土地が好きだから』と、事件当時住んでいたトゥルネで恋人と幸せに暮らしています」という近況も伝えてくれました。次ページでは、事件被害者だからこそ言えるサビーヌさんのインタビュー時の印象的な言葉をご覧下さい。

「サビーヌさんのメッセージ」「『すべて忘れてしまえるように』をすべての人に…」p.2