男選び
イイ男と出会いたい |
パーティの当日、逸美は気合いを入れて、だがさりげないおしゃれを心がけた。華美になりすぎず、地味すぎない服を選び、メイクもナチュラルに見えながらほんのりとパールを効かせて少し華やかにしてみた。パーティ会場では男女十数名から20名くらいずつで、場慣れしている人が多いように見えた。気後れしながらも、男性には笑顔を見せて応じた。着席対面パーティで前半、皆が自己紹介をして、後半のフリータイムで気に入った人と話して互いに気に入ればそのまま一緒に帰ることが可能というシステムなのだ。
だが、初回ではこれと言ってピンとくる人がいなかった。二度目のパーティでも、フリータイムに積極的に声を掛けてきた男性は、どうしても好きになれないタイプだったので断った。いいなと思った男性は他の20代の女性の所に行ってしまった。(やはりお見合いパーティでもモテる人とそうでない人ははっきりするものね。私ももう32歳だからなぁ。ぜいたくを言っちゃいけないのはわかるけど。でも、やはりどうしても好きになれそうもない人ばかり。カップルになっている人たちもいるようだけど)とても付き合う気には、ましてや結婚したい気持ちになれるような相手は見つからなかった。
相手の身長や体格、髪型や服装のセンス、話し方から歯並びまで、細かい点が気になるのだ。自分の好みが特別うるさいとは思ってはいなかったが、実はかなりこだわるタイプだとつくづく思い知った。自分は自分なりに「上の下」あるいは「中の上」と思っていた。しかし、年齢には勝てないということも思い知らされた。服装や髪型がどうであれ、二十代の女性はやはり肌からして若く見える。張りも艶も違うのだ。男性が若い女性を好むのもむべなるかなと、ついため息が出そうになる。
「三十路」という言葉にはイヤな響きがある。パーティに参加して、かえって自分の年齢を意識してしまったことでさらに焦りが生じてきた。三度目のパーティに参加するときに、(もうこれで最後にしよう。今日、いい人がいなかったらあきらめて、ほかの道を探すことにしよう)と決めていた。そして期待しないつもりで行った先で、逸美にとって運命の出会いがあったのだ。そして、この出会いは相手の男性にとっても、運命的な出会いとなることは疑いようもなかった。
・愛と故意のラビリンス~第1回
・愛と故意のラビリンス~第2回
・愛と故意のラビリンス~第3回
・愛と故意のラビリンス~第4回
・愛と故意のラビリンス~第5回
・愛と故意のラビリンス~第6回