ウォーターハンマー
「音は科学的に解明できます」 |
何かというと、四階建ての集合住宅だったんですが、普通はビルの上に水のタンクがあって下に水を落とすんです。ところが、そこはポンプ室があって下からポンプで上まで汲み上げていたんです。それで上のほうの「圧」を保っていたわけです。下の方で夜中にトイレを使いますと、水がいっぺんにざーっと流れる。そうしますと、上の方に今まで圧がかかっていたのが、圧がグッと減ります。
そこに「真空」ができて、「ウォーターハンマー」といいますが、「ポーン」と音がするんです。今度は真空を抑えようとグッと上に上がります。そこで「ウォーターハンマー」の繰り返しが起きて、「トントントン」という音がするんです。このような原因のつかめない音、要するに原因は一階にあって、しかも上の方で音がすると、いったことは非常によくあります。
――そうすると、不審な音で悩んでいる方々は、原因を突きとめるためにはやはりこちらのようなところに調査の相談をしたほうがいいということですね。
私もそれで調査に行ったんですが、不審な音がするということでどんどん尾ひれがついてしまうんですね。それが一番いけないことだと思います。それで、そちらでは「霊媒師」を呼んだわけです。霊媒師が行くと、今度は住民がそれに乗っちゃうんです。コンセントを入れていないのにドライヤーが回ったとか。コンセントを入れずにドライヤーが動いたら、これはもう「ノーベル賞」以上のことだぞ、って話になっちゃいますよ(笑)。
――あの、テレビで一時取り上げられていたお話ですよね。
そうです。霊媒師が来て、あちこちに榊(さかき)が立っていました。あんまり効かないと思いますけど(笑)。結局、どこまでが本当で、どこからが嘘かを見分けないと。
音は科学的に解明できる!
――つまり、音というのは、すべて科学的に解明できるということでしょうか。中には科学的に解明できない音というのもあるんでしょうが、結局、音というのは物理現象ですから。たとえば、幽霊が出てくるときの音というのがあるんですが、夏の夜、空の臼を杵で叩いたような「カーン」という音が何にもないところでするんです。
それも調べてみますと、上昇気流は夏の夜、激しいですから、バァーッと上がってそこが真空になります。そこに空気が流れ込んで、そのときにポーンと音がするわけです。これが「幽霊の音」とされていたわけです。
それから、集合住宅などでも夜にミシミシと音がすることがありますね。建物が昼間太陽に照らされて、夜になると冷えてくる。材質というのは伸び縮みしますから、たとえば金属とボードでは材質が違うため収縮度が違うので、そこでピーンと音が発生するんです。ですから、音というのは、全部科学的に解明できるものだと思います。
――建物や近隣の音もそうですが、たとえば冷蔵庫の音が気になるとか、食器洗いの音がうるさいと隣人から言われた人もいるんですが、日常の生活音についての対策というのはいかがでしょうか。音を出さないようにすることと、音が気にならないようになるために何か…できる対応策はありますか。
一番いいのは、家具を音のする方向に置くということですね。たとえば、こちらの壁から音がすると思えば、その壁にタンスでもなんでもいいですから家具を置くことでかなり軽減します。そうですね、音のエネルギーでいえば、おそらく1/100くらいになるんじゃないですか。
――エッ、そんなに違うものなんですか?
そうです。それからカーテンというのは、高い音には効果があります。しかし、普通の低い音とか騒音には効果がありません。