子どもを犯罪から守る防犯7カ条とは?
我が子をどのように守るべきか、改めて考えておきましょう
<目次>
第1条:「気をつけて」の内容をしっかり伝えよう
何に気をつけるかわかっていないと…… Copyright(c)Illustrated by Yukiko Saeki
「小さな子どもにヘンなことは教えたくない」「まだ小さいから……」と、大人は言葉を濁します。しかし、具体的に「何から身を守るべきか」を知らずにいては、実際に被害に遭いそうになったときにわけもわからないまま、最悪の事態を招いてしまうかもしれません。一見、普通の人に見える人が悪意を持って子どもに近づくことがままあるものなのです。そのときに、自分の身に起こりつつある被害の意味がわからなければ、事態をさらに悪化させて、心身に傷を負ってしまうかもしれないのです。
子どもの成長度は一人一人違います。子どもの「性格」「体格」「運動能力」など、親こそが一番知っている我が子のレベルに合わせて、わかりやすい言葉で伝えてあげましょう。たとえば、「あなたの大切な体は、知らないヘンな人には絶対にさわらせてはいけない」と具体的に話して、不審な人物が体にさわることがあり得るけれども、それは絶対に許してはいけないことだと伝えます。
そして、そのためには、とくに一人きりでいるときに不審な人に近寄られることを避けることを教えます。「なによりも大事な自分の体と心を守るため」に、「絶対にNO!」という鉄則を教えるのです。「人には親切に」と教えることと矛盾するようですが、「道を教えて」と言って、どこかに連れ去るケースもあるのです。(子どもに道を聞くことは、「声かけ」として、学校や地域での事件例として報告される昨今です。常識のある大人は子どもに道を尋ねてはいけません)。
子どもに伝えることが難しいと感じる親御さんもいるかもしれませんが、「こういうこともあり得るけれど、あなたはそれを避けること、危険を防ぐことができるのよ。あなたと私たち家族の幸せのためにがんばろうね」と、ポジティブに話を持っていくことが、子どもにイヤな気持ちを残させないで前向きに安全対策ができるようになる大切なポイントだといえます。
第2条:「子どもの個人情報」を守ろう
自分の名前を知っている知らない人は安全? 危険? Copyright(c)Illustrated by Yukiko Saeki
たとえば、子どもの靴やランドセルなどの持ち物にはよく名前が書かれています。新入園・入学の時期には子どもの持ち物に名前を書くことが親の役目でもあります。「名札」も必ずと言っていいほど身につけます。これは、「ワタシ(ボク)の名前は○○です」と、すべての人に教えていることです。また、家の表札に、家族全員の名前を表記しているお宅もあります。
さらに、自宅前に放置した三輪車や自転車に子どもの名前が書いてあると、「この家には小さい子どもがいて、その子の名前は○○だ」と、誰にでもわかってしまいます。また、親子で外出したときに、「○○ちゃん、早くしなさい」などと、子どもの名前を大きな声で呼んだら、周囲の人にその子の名前が知られてしまいます。知らないうちに子どもの名前を世間に知らせているのです。
そうやって子どもの名前を知った不審な人物が、「○○ちゃん、おかあさんが交通事故にあったから、一緒に来なさい」と言ったらどうでしょう? 子どもはその人のことを知らないけれども、自分の名前を知っている人ということは、「知っている人」なのでしょうか、それとも「知らない人」なのでしょうか? 自分の名前を知っている人だから、と油断してしまったら? どんな悲劇が待ち受けているかもわからないのです。
子どもの名前も大切な個人情報です。表札や持ち物などの人目にふれる場所に名前を書くことは極力控えましょう。年賀状に子どもの写真を載せるご家庭も多いようですが、いかがなものでしょうか。また、人前では(一人っ子であっても)「おにいちゃん」「おねえちゃん」「ボク」などといって、なるべく名前を呼ばずに済むようにしましょう。
すでに子どもの名前を知られてしまっていると思われる場合は、「名前を呼ばれても、あなたが知らなければ知らない人と思ってね」と伝えておきましょう。もし本当に知り合いなら、後で話題になるはずですから、そのときは「安全のために、警戒させているのよ。ごめんなさい」と言えばいいでしょう。
第3条:一人きりになる時間・場所を把握しよう
子どもが襲撃されるのは、一人きりか子どもたちだけで少数でいるときが多いのです。子どもの生活をよくチェックして、とくに一人きりになる時間と場所を把握して、そこで起こりうる危険を探り、対策を用意してあげましょう。子どもの生活範囲をマップ=地図にして、友人宅からの帰り道などでどうしても一人きりになる場所を知って、実際に親子で歩いて、どんな危険が起こりうるか、被害に遭わないためにどうすべきかを検討しておくのです。そして、「一人きりになったら」なるべくその場を離れて人のいる場所に移動する、何かあったらすみやかに避難できるように「今いる場所から一番近い避難場所はどこか? 」を常に考えておくことです。助けを求めるにはどこに行ったらいいかを色々な地点で、「避難場所はここ」とチェックしておきましょう。「子ども110番の家」「コンビニ」「交番」「知人の家」「病・医院」など、人がいる場所を覚えておくようにしましょう。
自宅においては、たとえば、子どもだけで留守番をさせるときに、来訪者があってもドアを開けない、電話には出ない、など取り決めをしておくことです。留守番電話を通して親とわかれば電話に出る、玄関ドアを開けるときには「暗号」のように、チャイムやノックを親子で決めた鳴らし方にするなど、ちょっとした決まり事を作っておくといいでしょう。
第4条:大声を出す訓練をさせる
防犯ブザーは子どもの必携品! Copyright(c)Illustrated by Yukiko Saeki
大人が自分でもできないことを子どもにだけ強いることは、説得力がありません。まず、どうして「何かあったら大きな声を出す」必要があるのか? そこから考えて教えなくてはいけないのです。実際には、何かあったときには、衝撃と恐怖で固まってしまい、声も出せなくなります。ドラマのように、「キャー」とは、簡単には言えないものです。
心理学用語で「インモビリティ~immobility=動けなくなること」と言いますが、動物が襲撃を受けたときに、身を縮めて動きを止めることです。人間も大人ですら、たとえば大きな物音がしたときは、ハッとして動きが止まります。驚愕の事態が起きたときには、声を出すこともできなくなります。これが「インモビリティ」です。
さて、犯行をたくらんでいる人は、実行時には緊張状態にあるといいます。彼らは「音」と「光」を嫌います。これは、ほとんどの「防犯グッズ」「セキュリティ商品」が「音」や「光」を出すものであることでもご理解いただけるでしょう。たとえば、住宅に侵入しようとしたときに「光」が照射されたり、「音」が出れば、犯行を思いとどまる可能性が高いということなのです。
襲撃者はターゲットを「確実に襲うことができる相手」として、子ども(女性、高齢者などの弱者)を選んでいます。たやすくだませる、あるいは言うことを聞かせられる、力で圧倒できる相手として選んでいるものです。まさか抵抗されるとは思っていないところに、予期していない「大声」をあげられたら、襲撃者はひるみます。襲撃者に「インモビリティ」が起きるのです! だからこそ、「大きな声をあげること」は効果があるのです。そして、襲撃者がひるんだすきに、全速力で走って逃げることが望ましいでしょう。
とはいえ、いざというときに声を出せるかどうかは、訓練次第です。布団をかぶってお腹の底から大きな声を出す練習を親子でしておきましょう。また、「もし、声をあげて、相手が逆上したらどうするの? 」という疑問もあろうかと思います。これには「インモビリティ」を理解しておくことと、子どもが絶対にそういう状況におちいらないように、十分に子どもの安全対策をしておくことです。そういう場面に遭遇しなければ声をあげる必要もないのです。そこまで心配する親御さんなら、子どもにしっかり安全対策を教えていると考えても間違いないのではないでしょうか?
第5条:防犯ブザーを使いこなそう
また、どうしても声を出せない場合に備えて、強い味方があります。今日、今からでも危険な事態に備えて、できること……「防犯ブザー」を持っておくことです。自分は声を出せなかったとしても、「防犯ブザーで音を出すことはできる」のです。各地の学校で子どもたちに持たせている「防犯ブザー」ですが、手の届かないランドセルの横につけていてはいざというときに使えません。常にすぐ鳴らせるように携帯しなくてはなりません。また、ひもを引くときにどれだけの力が必要か、電池を抜いて親子で練習しておくといいでしょう。ハンカチやティッシュを必ず持つように、防犯ブザーを忘れずにいつも持っているようになることが理想です。子どもが一人きりになるときには、常に携帯して鳴らせるように持っておくことです。ただ、「学校から配布されたから、子どもに持たせていれば安全」と思っているようでは不十分です。あくまでも「道具」なのですから、使い方をしっかりとわかっていなくてはなりません。電池切れもチェックしましょう。「防犯ブザーを持つ意味」を、子どもも大人も理解しておけば、置き忘れたり、持って出るのを忘れたりといったこともなくなるでしょう。「いざというときに身を守ることのできるモノ」なのですから。
第6条:シミュレーションを繰り返そう
親子でしっかり「安全作法」を身につけよう! Copyright(c)Illustrated by Yukiko Saeki
実際には、「いつもよくしてくれるあのいい人が」とんでもないことをする場合もあり得ます。若いおにいちゃんだからと安心してもいられません。人を疑うことは悲しいことですが、「自分の身を守るため」「家族の幸せを守るため」として、あらゆる危険を考えておかなくてはならないのです。
たとえば、「おじさんのワンちゃんが迷子になっちゃった。一緒に探してくれる? 」と、ニコニコと話しかけられたら、動物好きな心やさしい子なら、ついていってしまうかもしれません。「キミくらいの子どもが好きなゲームを教えてくれる? 後で一つ買ってあげるから一緒に買い物に行こう」と、ゲーム好きな子どもが声をかけられたら、誘惑に勝てないかもしれません。
このように、子どもの好きなモノ、いわば弱点を突かれることを考えて、日頃からよく話をしておきましょう。そして、どんなことを言われても、絶対に知らない人にはついていかないように約束させましょう。子どもにやさしい言葉や表情で近づく不審者を撃退するには、様々なシチュエーション=場面を想定してシミュレーション=模擬訓練をすることです。お父さんが不審者の役をして、実際にRPG ロールプレイングゲームのように繰り返し練習しておくとわかりやすく、自然に身につくものです。
第7条:親子で「安全作法」を身につけよう
親がまず、子どもの安全についてしっかり理解したところで、次に子どもと一緒に安全のために覚えておくべきことがたくさんあります。私の提唱する「安全作法」とは、「行儀作法」「礼儀作法」などのように、安全のために「していいことと、してはいけないことを身につける」ことです。状況に応じて、「こういうときは、こんなことはしてはいけない」「こんなときは必ずこうすること」という約束事です。これを教えるには、親子の会話を多くすることです。たとえば、「道を歩くときは必ず周囲をよく見て、不審な人や車に早く気がつくようにしてね」「エレベータに乗るときは一人でね。知らない人とは一緒に乗らないで」といったようなことです。結局、誰も「やったことのないこと、経験のないことには弱い」のです。親子の日常のコミュニケーションの中で、こうした危険、被害を想定した状況を話して、どうすべきかをしっかり確認しあっておきましょう。練習問題を多く解いておけば、万が一の事態=応用問題にもスムーズに対応できるようになるでしょう。
子どもにばかり安全を要求しても、親が安全に対していい加減でまったく説得力がなければ、効果も期待できません。自宅においては、家中の窓や玄関ドアのカギかけを一緒にして回る、外出時には、周囲に気を配って、車やバイク、人物などを警戒することを親が示して「歩き方、周囲への警戒の仕方」を教えられるように、親の防犯対策を子どもが手本とできるように、親がまずしっかり身につけていただきたいものです。
安全は何もせずには手に入りません。「あのとき、ああしておけばよかった」「ああもできた、こうもできた」と、後悔しないためにできることをすべてやっておくことで、被害に遭わないように、また万が一被害に遭っても最小限で済ませることができるはずなのです。
■ガイド執筆・関連書籍 【関連記事】