あいさつ禁止マンションは子供心にどう響くのか?

子供の安全をどう守っていくべきなのか?

子供の安全をどう守っていくべきなのか?

神戸新聞に掲載された「マンション内でのあいさつ禁止」の投書をご存知でしょうか?

あるマンションに住む小学生の親御さんから、
「知らない人にあいさつをされたら、子供に逃げるように教えている」
「子どもは、どの人がマンションの人か判断できない」
「だから、マンション内ではあいさつをしないように決めてほしい」
と提案があり、話し合いの結果、そのマンションでは、住民同士のあいさつが禁止になったのだそうです。

その後、ネットでは様々な意見が交わされ、「その気持ちは分かる」という賛成派と「日本もここまで来たか」という否定派との間で論議になりました。

親として子供を守りたい、でも、人間として大切なことも教えなくてはいけない。その両方をかなえる適切な対応はないのでしょうか?

  

バリアを張っても根本的な解決にはならない

筆者が以前、犯罪の多いパリで、住む家を探していたとき、不動産屋の方に「パリで安全に住もうと思ったら、自ら、籠城しないとダメなんですよね」と言われたことがあります。たしかに、「ここは安全そうだ」と感じるマンションのエントランスには、決まって上から下までの鉄格子があったのを覚えています。

この神戸の親御さんも、同様の発想で、自分の家族の身を守るために、自らバリアを張る保護策を取ったのでしょう。

しかし残念ながら、これらの策は根本的な解決にはなっていません。根本的な解決とは、「犯罪を減らす」ということ。以前学んだ犯罪心理学の教科書に、こんなことが書いてあったのを覚えています。

「セキュリティーを強くすれば、それを破る策を考える」
「壁を高くしたら、その高い壁をも乗り越えようとする」
「結局、本人たちの改心をしなければ、犯罪はなくならないのだ」と。

このようないたちごっこは、逆に、犯罪の手口を巧みにさせる恐れがあります。ちょうど今流行しているインフルエンザと同じです。いい薬ができたと思ったら、その薬が効かない新型のインフルエンザが発生する、しかもさらに強いインフルエンザが……。


子供の身は守れても、子供の心は守れない

とはいえ、日々の生活で、自分に何ができるかというと、やはり、自己防衛ということになってしまうのでしょう。ただ、今回のような「あいさつ禁止」は、子供の身は守れても、子供の心を守りきることができないのではないかと懸念しています。

  • 他者を信用する気持ちが、うまく育まれないのではないか
  • あいさつは社交の原点なのに、コミュニケーション下手にはならないか
  • 身近なはずの「ご近所」に壁を作ることで、いざというときの拠り所が減るのではないか

大人が子供を守るとき、その身だけでなく、心も守ってあげなければ、適切な対策とは言えないと思います。


諸外国は子供をどう守っているか?

先進国の中で、日本ほど、子供たちが単独で外に出ている国はないということをご存知でしょうか? 筆者が長く住んでいるヨーロッパでは、国ごとに年齢制限は微妙に違うものの、基本的に小学生の間は、必ず大人の付き添いが必要です。パパママが無理なら、おじいちゃんおばあちゃん、ママ友やベビーシッターが代行します。学校の送り迎えや友人宅への行き来はもちろん、公園でも子供だけではNGです。

たしかに、朝の忙しい時間帯、玄関で「いってらっしゃい」と見送れたら楽です。でも、一緒について行けば、その分、精神的には非常に安心です。筆者は個人的に、集団登校というもの自体が、現代の環境には合っていないと感じています。車も犯罪も増え、以前のような安全な集団登校ができない状況になってきているからです。


子供の身を守るためのもっと健全な方法とは?

子供に付き添うことは、今の時代、過保護ではないと考えています。いくら大きくなったとはいえ、まだ小学生のうちは、経験値も低いですし、体も小さいです。どうしても、事故や事件へのリスクが高まってしまいます。車を作ったのも大人、犯罪をするのも大人、ならば、そこから守ってあげるのも大人の役目です。

何よりもやるべきことは、子供を自らが守るということです。「あいさつ禁止」では、対処を外に投げてしまっています。不安であれば、子供のガードになってあげることを検討する方が、ずっと健全で安全ではないでしょうか。

親がますます忙しくなってきている現代に逆行するやり方かもしれません。時間のやりくりだけでなく、正直、そのひと手間を面倒に感じる方もいるでしょう。でも、ちょっと付き添えば防げた事故はたくさんあります。マンションの出入口まででもいい、交通量が多い道路だけでもいい、人通りの少ない道を過ぎるまででもいい、ほんの少しの配慮が、車が多い社会、犯罪が多い社会では、事故事件の抑制力になるのはまちがいありません。

 



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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。