ISC2024、シングルモルト「山崎12年」全部門での頂点に立つ
左・「山崎12年」/右・ISC2024「マスターブレンダー オブ ザ イヤー」受賞、福與伸二チーフブレンダー
前回記事『山崎蒸溜所100周年16/新たな脚光を浴びたISC2003「山崎12年」金賞受賞』をアップしてすぐ後の朗報だった。
この「シュプリーム」とは各部門の最高賞「トロフィー」のなかから、さらに傑出した製品1品のみに授与されるものである。実は昨年、山崎蒸溜所100周年の2023年のISC2023においても「山崎25年」がこの「シュプリーム」を獲得しており、2年連続の快挙となった。
その前、ISC2022では「白州25年」が「トロフィー」を獲得している。「響」はISC2017において「響21年」が「シュプリーム」を獲得している。
また今回のISC2024では福與(ふくよ)伸二サントリーチーフブレンダーが「マスターブレンダー オブ ザ イヤー」を受賞。さらにサントリー株式会社が「プロデューサー オブ ザ イヤー」を受賞した。
今回の「山崎12年」ISC2024「シュプリーム」受賞は次の100年に向けての第一歩を踏み出した、つまり山崎蒸溜所101年目の快哉である。山崎のフラッグシップであり、ジャパニーズシングルモルトの代表的存在といえる「山崎12年」が受賞したことに意義がある。しかも審査員全員一致という授与であったという。
さて、今回は山崎蒸溜所100周年記事の最後となる。前回記事からつづき、今日までの歩みを語る。21年前、ISC2003において「山崎12年」が日本のウイスキー史上初の金賞を受賞し、シングルモルトへの注目が高まったことは事実である。しかしながらウイスキーを長く飲みつづけてくれていたファンがシングルモルトへ傾いていったという状況であり、ウイスキーの市場が拡大した訳ではなかった。ただし、コアなファンが「山崎」「白州」だけでなくスコッチのシングルモルトにも関心を示したことで、後のブームのベースを築いたといえるだろう。
販売数量が下降線をたどるなかでV字回復のきっかけをつくったのが「角ハイボール」である。2008年頃から本格的にマーケティング活動をはじめ、専用ディスペンサー(『春だ!角だ!最強ハイボールタワーだ!』記事、ならびに『炭酸水とハイボールの歴史6/超炭酸をうむ「ゼウス」』記事参照)の開発やレモンピールやスライスを絞り入れる飲み方を提案するなど、とくに居酒屋を中心にした肩の凝らない展開が功を奏した。また角ハイとともに味わう料理の提案も受け入れられた。
正直な私見をここで言わせていただく。当時(現在も、かもしれない)シングルモルトを中心に“ウイスキーと料理のマリアージュ”という展開がみられた。わたしは「なにがマリアージュだ、格好つけやがって、気取ってんじゃない」と言いたかったが、立場上そうは書けなかった。プライベートでマリアージュについて聞かれると「柔らかいシングルモルトのハイボールとカレーライスとの相性がいいよ。試してごらんなさい」と応えていた。できるだけ面倒のない格好つけない相性、味わい方を伝えたかったし、わたしはシングルモルトを飲むときは料理を必要としない飲み手だから仕方ない面もある。
なんだか関係者が気取ってマリアージュだなんだと言って、余計にウイスキーの敷居を高く、面倒で堅苦しくしていると感じていた。そこへ居酒屋と角ハイボールの大衆的な世界が生まれた。1970年代に「オールド」が爆発的人気を誇ったのは日本が豊かになっただけでなく、寿司屋をはじめ和風料理店で「オールド」の水割りを味わうという、楽しみ方の間口を広げたことにある(『山崎蒸溜所100周年14/1970年代ホワイトスピリッツ・ブームを凌駕したオールド』記事参照)。居酒屋と角ハイの広がりは、かつての「オールド」の時代を彷彿させた。
さらに2009年には「角ハイボール缶」が登場。自宅で気軽楽しめ、ハイボールが日常のなかに浸透していく。(次ページでは、2010年代から現在までの歩みを語る)