人気俳優の長谷川博己さんが「全自動で～！」と叫ぶ様子に“インパクトがすごい”と話題のCM、見覚えがある人も多いのではないでしょうか。「WealthNavi（ウェルスナビ）」 のこのCM、実はマーケティング目線でも注目のポイントがあります。
そこで今回は、同社マーケティング部の山川力也さんを取材。その内容をもとに、マーケティングガイドの筆者がCMに秘められた「戦略」について解説します。
チャーミングな長谷川さんが“意外”なCM
「全自動で～！」と叫ぶコミカルな長谷川さんが意外？ 画像提供：ウェルスナビ
――長谷川さんを起用した理由は？
山川さん：「将来のお金のことが心配な人たちに、ウェルスナビを教えずにはいられない人」という親しみのある役柄をチャーミングに演じていただける俳優さんを起用したいと考えていました。ブランド独自の信頼感や安心感の醸成と幅広いユーザーからの認知獲得という今回のCMの目的に対して、誠実でクリーンなイメージをお持ちの長谷川さんがピタリとはまりました。
――CMの反響は？
山川さん：現在放映中の「教えてあげたい」シリーズ第2弾は、SNSなどで「最近CMでよく見るウェルスナビ」とのコメントを目にする機会も増え、うれしい効果です。CMを見た子どもたちが、長谷川さんが叫ぶセリフ「全自動で～！」を真似するようになったとの声も寄せられています。彼らが大人になる頃には、資産運用が当たり前の世の中になっていて、ウェルスナビも選択肢のひとつとして当たり前に認知されているとよいなと思います。
――第2弾のおすすめポイントを教えてください。
山川さん：前作よりも「教えたい」気持ちが強いキャラクター設定になっています。当社のYouTubeチャンネルで見比べていただくと、「全自動を教えたい」気持ちの高まりがパワーアップした長谷川さんを楽しんでいただけると思います。
専門家目線で“投資”マーケットの注目点をわかりやすく
なぜ今、「全自動を教えたい」気持ちがより高まっているのでしょうか。直近では、岸田首相が掲げた「所得倍増プラン」で投資への注目が集まっていることも関係します。日本における個人の金融資産は2000兆円（2022年9月末時点、日本銀行発表の資金循環統計）を超えていますが、その半分以上は現金や預金で保有されています。1000兆円を軽く超えるそのお金を、株式などの投資に回すことによって、投資先の企業が成長し、株価が上昇。それによって、個人の金融資産をもっと増やしていこうというのが「所得倍増プラン」の狙いです。
ところが、日本ではまだまだ投資に対する意識は低いまま。株式や投資信託で運用されている個人の金融資産は、投資先進国であるアメリカの5割越えと比較して、日本では1割程度に過ぎません。このような事実を踏まえれば、日本において“投資”というマーケットは、ニーズが急速に高まり、近いうちにホットなマーケットになることが見込まれるといっても過言ではないのです。
クール、クリーン、クレバーなCM戦略がカギ
そのような有望市場で存在感を高めて自社サービスを多くの顧客に利用してもらうためには、プロモーション戦略が重要な鍵を握ります。大河ドラマ（NHK）で主演をつとめるなど数々の映像作品に出演し、幅広い世代から愛され人気を博している長谷川博己さんを起用すること。まずはその点で、ウェルスナビはより多くの潜在顧客に浸透し、その認知度を高めることに成功しているといえるでしょう。また、長谷川さんのクール、クリーン、クレバーなイメージが、信頼や信用、そして実績が重要視される金融資産の運用というサービスを利用する安心感にもつながっています。
また、投資そのものの“わかりづらさ”や“リスク”に不安を抱くだろう人たちには特に、「全自動で～！」というシンプルかつインパクトのあるメッセージが効果的です。普段の長谷川さんのクールなイメージをいい意味で裏切るコミカルな印象のCMは、そのギャップから多くの人の脳裏にくっきりと焼き付けられるのではないでしょうか。
