暮らしの歳時記/秋の行事・楽しみ方(9~11月)

「天高く馬肥ゆる秋」とは? ことわざの意味とじつは怖い由来

「天高く馬肥ゆる秋」ということわざは秋の素晴らしさを表す意味で使われていますが、なぜ馬が登場するのでしょう? このことわざには怖い由来があり、秋になるとやってくる敵を警戒することばでした。今と昔では全然違う「天高く馬肥ゆる秋」の意味、由来、使い方について解説します。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

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「天高く馬肥ゆる秋(てんたかくうまこゆるあき)」を解説

「天高く馬肥ゆる秋」とは?

「天高く馬肥ゆる秋」とは?

「天高く馬肥ゆる秋」ということわざは秋の素晴らしさを表す意味で使われていますが、なぜ馬が登場するのでしょう? このことわざには怖い由来があり、秋になるとやってくる敵を警戒することばでした。今と昔では全然違う「天高く馬肥ゆる秋」の意味、由来、使い方について解説します。
 
<目次>
 

過ごしやすい秋を称賛!「天高く馬肥ゆる秋」の意味

秋は空が澄み渡って高く見え、馬も食欲が増して肥えるような収穫の季節。天気が良くて食べ物も美味しく、過ごしやすい秋を称賛する意味合いで使われています。 
 

秋は敵の襲来に警戒せよ!「天高く馬肥ゆる秋」の由来

秋になると逞しく育った馬に乗って敵が攻め込んでくるから警戒せよ!

秋になるとたくましく育った馬に乗って敵が攻め込んでくるから警戒せよ!

元々は今のような快適な意味ではありませんでした。「天高く馬肥ゆる秋」は、中国唐代の詩人・杜審言(としんげん)の「漢書」にある次の一文に由来します。

「雲浄妖星落 秋高塞馬肥」
(そらきよくしてようせいおち あきたかくしてさいばこゆ)

「妖星」とは凶事の前兆と信じられていた不吉な星(彗星や流星など)、「塞馬」とは北方の馬(ここでは遊牧騎馬民族・匈奴<きょうど>の馬)のことをさします。秋になると肥えてたくましく育った馬に乗って敵(匈奴)が攻め込んで来るから警戒せよ、といった内容です。
 
中国の王朝・前漢(紀元前206年-8年)では、遊牧騎馬民族・匈奴との戦いが激化していました。匈奴は秋になるとたくましく育った馬に乗って収穫物を略奪しに来ることが多かったため、前漢の将軍が敵の襲来に備えるよう警告したのです。紀元前214年に秦の始皇帝によって作られたといわれる「万里の長城」は、騎馬民族の侵入を防ぐための高い壁ですが、当時は一部しか建設されていなかったため、匈奴の侵入を十分に防げませんでした。
 
その後、匈奴が滅亡すると、「天高く馬肥ゆる秋」は過ごしやすい秋の到来を表す意味合いで使われるようになりました。
 

「天高く馬肥ゆる秋」の使い方

「天高く馬肥ゆる秋」は時候の挨拶としても使われます

「天高く馬肥ゆる秋」は時候の挨拶としても使われます

秋の季節の快適や素晴らしさを表す「天高く馬肥ゆる秋」は、日常会話や時節の挨拶として使われています。
 
・天高く馬肥ゆる秋、いかがお過ごしでしょうか。
・天高く馬肥ゆる秋となりましたが、お元気ですか。
・天高く馬肥ゆる秋、ますますご壮健のことと拝察いたします。
・天高く馬肥ゆる秋といいますが、本当に過ごしやすい季節ですね。
・天高く馬肥ゆる秋、こんなにいい季節を楽しまない手はありません。
・天高く馬肥ゆる秋、食欲の秋となりましたが、健康のため太り過ぎないよう気をつけてください。
 
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