定年・退職のお金

定年退職後の健康保険は何を選べばいい?

定年退職後に加入する公的医療保険には4つの選択肢がありますが、いずれにしても保険料が高いことに驚きます。有利な保険は退職時の給与やその後の収入、家族構成、健康状態などで一人ひとり・世帯ごとに違います。退職後2年間の保険料を比較して決めましょう。

大沼 恵美子

執筆者:大沼 恵美子

貯蓄ガイド

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退職後に加入する公的医療保険、どうする?

日本は「国民皆保険」――国民すべてが何らかの公的医療保険に加入する制度――ですので、退職後も何らかの公的医療保険に加入しなければいけません。その選択肢には次の4つがあります。
 
  • 国民健康保険の被保険者
  • 家族の組合健保あるいは協会けんぽ(以下、健康保険)の被扶養者
  • 任意継続被保険者
  • 特例退職被保険者制度の被保険者 
 
退職前の健康保険加入期間や給与水準、勤続年数、家族構成などによってどれが得かは異なります。そのため、それぞれの加入条件や保険料等を比較する必要があります。4つの選択肢について、順に解説しましょう。
病院通いが増えたなぁ。日本の健康保険制度はほんとにありがたい!

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定年退職後の健康保険(1)国民健康保険……前年の所得が算出基準、上限・軽減あり

国民健康保険は、各市町村と都道府県が共同で運営する健康保険制度です。

保険料は、前年の所得を基に、国が定める課税限度額以下に収まるよう、自治体が独自の賦課方式や料率などから算出します。令和4年度の課税限度額は、医療保険分65万円、後期高齢者支援金分20万円、介護保険分17万円です。所得が一定以下の世帯に対しては、保険料の均等割額や平等割額を7割・5割・2割軽減する制度があります。
 

定年退職後の健康保険(2)家族の健康保険の被扶養者……厳しい条件あり

年金が少ないおかげ(?)で息子の健康保険の扶養家族に入れた。条件厳しいからな……

年金が少ないおかげ(?)で息子の健康保険の扶養家族に入れた。条件厳しいからな……

家族に健康保険に加入している人がいれば、その人の被扶養者になるという道があります。そうすれば保険料の負担はゼロ! いいですね。しかし、健康保険の被扶養者として認定されるには、次の加入条件を満たす必要があります。
 
  • 年収が130万円未満(対象者が60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受給する程度の障害者の場合は、180万円未満)
  • 同居では被保険者の年収の半分未満、別居は被保険者からの援助による収入額より少ないこと
  • 健康保険法で定めている被扶養者の範囲内であること
 
より厳しい加入条件を設定している健康保険もありますので、被扶養者になる予定の健康保険に「被扶養者の条件」について事前に確認しておきましょう。手続きは、退職の翌日から5日以内に、被保険者の勤務先で行ってもらいます。
 

定年退職後の健康保険(3)任意継続被保険者……任意脱退可能

「任意継続被保険者」とは、「退職日の翌日から最長で2年間、退職前の会社の健康保険に継続加入することができる」という制度です。いつでも任意脱退できます。 

この手続きを行えば、退職後も働いていた時とほぼ同じ保険給付と健康保険が独自に行っているさまざまなサービス(例えば「人間ドック受診無料」「1カ月の医療費負担上限額を低額に設定」など)を受けることができます。こちらのメリットのほうが実は大きいのかもしれません。

【任意継続被保険者になる条件】
  • 健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上あること
  • 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申請手続きをすること
 保険料は、「退職時の平均標準報酬月額」と「退職時の平均標準報酬月額」のどちらかに保険料率を掛けて算出され、100%自己負担します。後者であればかなり高額ですので、事前に確認しましょう。

ちなみに、多くが加入する協会けんぽ(=全国健康保険協会)は、前者の「健康保険の全被保険者の平均標準報酬月額」を用います。令和4年度継続被保険者の標準報酬月額の上限は30万円です。

※平均報酬月額については日本年金機構の解説を参照ください。
協会けんぽ/令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
 

定年退職後の健康保険(4)特例退職被保険者制度……お得とは限らない

特例退職被保険者制度とは、一定の条件を満たして厚生労働大臣の認可を受けた「特定健康保険組合」が実施している退職者医療制度です。老齢厚生年金の受給資格がある人で健康保険組合に20年(40歳以降は10~15年、健康保険組合によって期間は異なる)以上加入していた人が退職し、75歳で後期高齢者医療制度に加入するまでの間、加入できます。

この制度を設けているのは、パナソニック、富士フイルムグループ、慶應義塾、東京ガス、日立、キリンビール、ホンダ、民間放送、全日本空輸などがあります。
 
加入手続きは退職後3カ月以内に行います。年金証書が手元に届いていない人は、国民健康保険や任意継続被保険者などにいったん加入し、年金証書が届いた翌日から3カ月以内に手続きをします。
 
保険料は本人の年収や扶養者の有無に関係なく、現役の被保険者の収入によって決まり毎年見直され、任意継続被保険者と同じように、健康保険が独自に行っているさまざまなサービス、例えば「1カ月の医療費負担上限額を低額に設定」「保養所の利用」などを受けることができます。

ある企業のホームページに、「特例退職被保険者制度の保険料と任意継続被保険者制度の保険料とを比較し負担額の少ないほうの制度を選択すること。特例退職被保険者制度の加入要件を満たしている人は、任意継続被保険者制度2年満了後、期限内に手続きを行えば特例退職被保険者制度への加入可能。それぞれの案内等を自宅に送付する」とありました。必ずしも「特例退職被保険者制度はお得」といえないようです。
 

定年退職後の健康保険、保険料以外もチェック!

一般に、定年退職後1年間は、国民健康保険に加入するより、任意継続被保険者あるいは特例退職被保険者制度を選択するほうが保険料の負担が少ない、といわれます。しかし、退職時期と年収によっては国民健康保険料のほうが低額で、2年目も世帯所得によっては、軽減措置によりかなり低額になる可能性があります。退職後2年間の保険料を比較して決めましょう。

保険料と別の視点でもチェックします。退職前から病院との縁が深い人や病弱な人には、医療費の自己負担分――国民健康保険の高額療養費と任意継続・特例退職被保険者制度の医療費の付加給付金――の比較が重要です。

リタイアを決めたら早めに企業や地方自治体のホームページで保険料の見込み額をシミュレーションしましょう。そうすることで世帯にとって有利な健康保険制度を見つけることができます。

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