暮らしの歳時記/春の行事・楽しみ方(3~5月)

【時候の挨拶】3月上旬・中旬・下旬の季節の挨拶と結び文、ビジネスやカジュアルに対応

3月の季節の挨拶「時候の挨拶」には何を書けばいいのでしょう? 書き出しの時候の挨拶文には、ビジネスや学校関係で出す文書・お礼状・目上の方向けの漢語調、またプライベートの親しい友人・知人向けのカジュアルな口語調があります。いつ使うのかがわかるよう上旬・中旬・下旬に分けて、例文や結びの文、コロナや健康に関する挨拶文、3月に使える季節の話題などをご紹介します。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

季節の挨拶に何を書く? 3月上旬・中旬・下旬の時候の挨拶と結び文

時候の挨拶とは「拝啓」などに続く書き出しの言葉で、季節感をあらわす

時候の挨拶とは「拝啓」などに続く書き出しの言葉で、季節感をあらわす

3月の季節の挨拶「時候の挨拶」に何を書けばいいのでしょう? 時候の挨拶とは「拝啓」などの頭語に続く書き出しの言葉で、季節感を表します。

時候の挨拶には、ビジネス文書や学校関係で出す文書、お礼状・目上の方向けの「漢語調」と、プライベートの親しい友人・知人向けのカジュアルな「口語調」があります。いつ使うのかがわかるよう、3月の上旬・中旬・下旬に分け、例文や結びの文、コロナや健康に関する挨拶文、3月に使える季節の話題もご紹介します。
 
<目次>

手紙・書類・メール・お礼状で使う、挨拶文の書き方や構成

ビジネスや学校関係で出す文書・お礼状、プライベートな手紙などを書く場合、【前文】⇒【主文】⇒【末文】⇒【後付】で構成するのが基本です。基本をもとに、必要に応じて細かい要素を変えながら仕上げていきましょう。
 
<構成>
【前文】……「拝啓」などの頭語 ⇒ 時候の挨拶 ⇒ 相手の安否や健康を気遣うことば ⇒ 自分の近況やお礼など
【主文】……いわゆる本文
【末文】……結びの挨拶。相手の健康や繁栄を祈ることば ⇒「敬具」などの結語
【後付】……日付 ⇒ 署名 ⇒ 宛名

 

「漢語調」「口語調」……時候の挨拶文は相手・場面に応じて選びたい

時候の挨拶には、短く簡潔に表した「漢語調」と話し言葉でやわらかな言いまわしの「口語調」がある

時候の挨拶には、短く簡潔に表した「漢語調」と話し言葉でやわらかな言いまわしの「口語調」がある

時候の挨拶は、その時々の季節感を表した言葉。「萌芽の候­」のように短く簡潔に表した「漢語調」と、「草木の新芽が萌え出ずる頃となりました」のように話し言葉でやわらかな言いまわしの「口語調」があります。
 
漢語調と口語調は、相手や場面に応じて使い分けます。一般的に、ビジネス文書や学校関係の文書などでは、かしこまった漢語調の表現が使われることが多く、文書の格を高めてくれます。一方、パーソナルな文書では、より身近な口語調を使う方が多いです。また、ビジネスであっても、口語調を用いてやわらかにする場合もあります。
 
いずれにしても、ネガティブではなくポジティブなものがおすすめです。 
 

3月の季節の挨拶/漢語調の時候の挨拶「ビジネス」編

草木の新芽が萌え出ずる頃を表す「萌芽の候」。「○○の候」は「○○の折」「○○のみぎり」に置き換えて使うこともできる

草木の新芽が萌え出ずる頃を表す「萌芽の候」。「○○の候」は「○○の折」「○○のみぎり」に置き換えて使うこともできる

ビジネスシーンでは、かしこまった漢語調の時候の挨拶を使うのが一般的。目上の方への手紙やメールでも使える漢語調の時候の挨拶について、意味とともに例文を交えてご紹介します。時候の挨拶は季節感が大切なため、目安となる時期ごとに紹介しますが、その年によって多少ずれることがあるため、実際の季節感を優先しながら選んでみてください。
 
また、「○○の候」は「○○の折」「○○のみぎり」に置き換えて使うこともできます。
  
3月全般で使える「弥生の候」「萌芽の候」                  
  • 弥生(やよい)の候=弥生・3月となりましたが
  • 萌芽(ほうが)の候­=草木の新芽が萌え出ずる頃となりましたが
<例文>
「弥生の候、ますますご清栄のこととお慶び申しげます。」
 
3月上旬の「早春の候」「浅春の候」「解氷の候」
  • 早春(そうしゅん)の候=早春の時期を迎えましたが
  • 浅春(せんしゅん)の候=春まだ浅い時期ですが
  • 解氷(かいひょう)の候=暖かくなり氷が解ける頃となりましたが
<例文>
「早春の折、貴社におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申しげます。」

3月上旬~中旬の「啓蟄の候」「仲春の候」「春情の候」「軽暖の候」
  • 啓蟄(けいちつ)の候=温かくなり冬ごもりしていた生き物が目覚める頃となりましたが
    ※「啓蟄」は二十四節気のひとつで3月6日頃~3月21日頃。
  • 仲春(ちゅうしゅん)の候=春もなかばとなりましたが
    ※「仲春」は二十四節気の啓蟄と春分の期間をいいます。
  • 春情(しゅんじょう)の候=だんだん春めいてまいりましたが
  • 軽暖(けいだん)の候=少しずつ暖かくなり春らしさが感じられる頃となりましたが
<例文>
「春情のみぎり、○○様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。」

3月下旬の「春分の候」「麗日の候」「陽春の候」「春色の候」「春光の候」「春風の候」「桜花の候」
  • 春分(しゅんぶん)の候=春分の時期を迎えましたが
    ※「春分」は二十四節気のひとつで3月21日頃~4月4日頃。
  • 麗日(れいじつ)の候=麗かな春の陽気が続く頃となりましたが
  • 春陽の候=暖かい春の日差しを感じる頃となりましたが
  • 春色(しゅんしょく/はるいろ)の候=春らしい雰囲気を感じるようになりましたが
  • 春光(しゅんこう)の候=春の日差しがきらめく頃となりましたが
  • 春風(しゅんぷう)の候=春風が心地いい頃となりましたが
  • 桜花(おうか)の候=桜の花咲く頃となりましたが
<例文>
「春光の候、貴店ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。」
 
 

3月の季節の挨拶/口語調の結びの挨拶「ビジネス」編

結びの挨拶は、相手や趣旨によって変わります。ビジネスなどのフォーマルな文書でよく使われる、今後もよろしくとお願いする結びの挨拶、相手の繁栄や健康を祈る結びの挨拶、3月ならではの結びの挨拶、コロナ関連の結びの挨拶を例文で紹介します。
             
■今後もよろしくとお願いする結びの挨拶
  • 「今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。」
  • 「引き続きご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
  • 「今後におきましても相変わらぬご厚誼(こうぎ)を賜りますよう お願い申し上げます。」
  • 「これからも変わらぬご支援ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」

■相手の繁栄や健康を祈る結びの挨拶
  • 「貴社のますますのご発展を心より祈念しております。」
  • 「末筆ながら、一層のご隆盛を衷心よりお祈り申し上げます。」
  • 「皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。」
  • 「皆々様のご多祥を心よりお祈り申し上げます。」

■3月ならではの結びの挨拶  
  • 「寒暖定まらぬ時期ですので、ご自愛専一にてお願い申し上げます。」
  • 「天地も躍動する春、今後のさらなるご発展をお祈り申し上げます。」
  • 「年度末でご多用かと存じますので、体調を崩されませんようご留意ください。」
  • 「新年度に向け、健康には十分にご留意なされ、さらにご活躍されますことを祈念申し上げます。」

■コロナ関連の結びの挨拶
  • 「コロナ禍で落ち着かない日々が続いております。くれぐれもご自愛くださいますようお願い申し上げます。」
  • 「コロナ禍中、まだ春寒の日もございますので、くれぐれもお体にご留意なされ、さらにご活躍されますことを祈念申し上げます。」
 

3月の季節の挨拶/口語調の時候の挨拶「プライベート」編    

「花の蕾もほころぶ季節となりました」は、話し言葉でやわらかな口語調の時候の挨拶

「花の蕾もほころぶ季節となりました」は、話し言葉でやわらかな口語調の時候の挨拶

プライベートの場合、書き出しの時候の挨拶は、口語調のカジュアルな表現が好まれます。
 
■上記「ビジネス」編で紹介した漢語調の「○○の候」の意味を表す文は、口語調の時候の挨拶として使えます。 
  • 草木の新芽が萌え出ずる頃となりましたが
  • 春まだ浅い時期ですが
  • 少しずつ暖かくなり春らしさが感じられる頃となりましたが
  • 暖かい春の日差しを感じる頃となりましたが
  • 春の日差しがきらめく頃となりましたが
  • 春風が心地いい頃となりましたが
  • 桜の花咲く頃となりましたが
 
■その他にも、この時期の情景を綴って挨拶することができます。
春を感じさせる沈丁花の香り

春を感じさせる沈丁花の香り

3月向きの時候の挨拶に、相手の安否や健康を気遣う言葉を加えた例文を幾つか紹介します。
  • 「春なお浅く、朝夕はまだまだ冷え込む昨今ですが、お変わりありませんか。」
  • 「野山の雪も解け始め、ようやく当地にも春がめぐってまいりました。そちらはお変わりありませんか。」
  • 「春寒も緩みはじめ、ようやく過ごしやすい気候になってまいりました。お元気でご活躍のことと存じます。」
  • 「桃の節句も過ぎ、うららかな春の日が続いておりますが、お変わりありませんでしょうか。」
  • 「暦の上でははや啓蟄を過ぎ、冬ごもりの虫たちも顔をのぞかせる季節となりました。お元気でご活躍のことと存じます。」
  • 「花の蕾もほころぶ季節となりましたが、皆さまお健やかにお過ごしでしょうか。」
  • 「ひと雨ごとに暖かくなり、春の訪れを感じる今日この頃。お元気でいらっしゃいますか。」
  • 「春が近いことを知らせるように、春雷が鳴り響きました。お元気でお過ごしでしょうか。」
  • 「小鳥のさえずりに目を覚ます季節となりました。その後お変わりございませんか。」
  • 「穏やかな日差しに春を感じる今日この頃、お健やかにお過ごしでしょうか。」
  • 「霞たなびく春の山を窓外に眺めつつ、お便りしております。皆様お変わりございませんか。」
  • 「暑さ寒さも彼岸までと申しますが、まだ寒い日が続いております。風邪などお召しになっておられませんでしょうか。」
  • 「日毎に春らしくなってきましたが、お元気ですか。」
  • 「春うらら、穏やかな毎日を過ごされていることでしょう。」
  • 「日を追うごとに春も深まり、心華やぐ季節となりました。皆様ご健勝のことと存じます。」
  • 「春風にのってほのかに花の香りが漂う頃となりましたが、その後お変わりございませんか。」
  • 「芳しい沈丁花の香りに、春の到来を感じる頃となりましたが、お元気ですか。」
  • 「花の便りがあちこちから届くようになりました。ご機嫌いかがでしょうか。」
  

3月の季節の挨拶/口語調の結びの挨拶「プライベート」編

卒業する本人やご家族に向け、卒業を話題にしてもよい

卒業する本人やご家族に向け、卒業を話題にしてもよい

プライベートで用いる結びの挨拶も、カジュアルな表現が好まれます。相手に合わせて挨拶の内容を考えてみると良いでしょう。相手の趣味や嗜好に合わせた結びの挨拶、相手の体調を気遣う結びの挨拶、コロナ関連の結びの挨拶の例文を紹介します。参考にしてみてください。
 
■相手の趣味・嗜好・状況に合わせたの結びの挨拶     
  • 「春風とともに、たくさんの幸せが訪れますように。」
  • 「恒例のお花見、今から楽しみにしています。」
  • 「いよいよプロ野球のシーズン、私たちも元気で応援しましょう。」
  • 「旅立ちの春、今後のさらなるご活躍をお祈りしております。」
  • 「もうじき卒業式ですね。新しい世界へ向けて前進、前進!」
  • 「4月からの新生活、元気で頑張ってください。」
  • 「花粉の舞うこの時期はつらいものです。どうかご自愛ください。」
 
■相手の体調を気遣う結びの挨拶     
  • 「木々の芽ぶき時は体調を崩す方が多いようですので、御身おいといくださいませ。」
  • 「寒暖定まらぬ時期ですので、くれぐれもご自愛くださいませ。」
  • 「花時は天候不順になりがちです、くれぐれもお体にはご留意ください。」
  • 「思いがけぬ春寒にお風邪など召されませんように。」
  • 「春の日差しのもと、お健やかな日々をお過ごしください。」
  • 「時節柄、体調を崩しませんよう御身おいといください。」
 
■コロナ関連の結びの挨拶
  • 「時節柄、なかなかお目にかかることができませんが、皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。」
  • 「コロナ禍中で落ち着かない日々が続いております。体調を崩しませんようくれぐれも気をつけてお過ごしください。」
  • 「コロナ禍もございますので、くれぐれもお体にはご留意ください。」
  • 「年度末にくわえコロナもございますので、くれぐれもご自愛くださいませ。」
  • 「コロナ禍中、お仕事にも影響があるかと存じます。くれぐれもお体に気をつけてご活躍ください。」
  • 「時節柄、なかなか思うように会えませんが、オンラインでのおしゃべりも大歓迎です。お互い元気で頑張りましょう。」
  • 「テレワークで運動不足にならないよう、お互いに気をつけましょう。」
  • 「コロナが落ち着きましたら、ぜひ遊びにいらしてください。」
 

3月に使える季節の話題

タンポポやつくしなど、身近な草花も話題にしやすい

タンポポやつくしなど、身近な草花も話題にしやすい

3月ならではの季節の話題を紹介します。キーワードとして入れてみると、季節感が出ると思います。
 
■花や動植物・食べ物
沈丁花、椿、桃、桜、すみれ、たんぽぽ、つくし、母子草、クローバー、木蓮、ひばり、つばめ、わらび、ぜんまい、うど

■風物詩や行事・イベント
雛祭り、桃の節句、初節句、お水取り、ホワイトデー、彼岸、墓参り、卒業式、春休み、お花見、新生活準備

■節気・時期
啓蟄、春分、菜種梅雨、霞、春一番、桜前線

 

オリジナルの挨拶を入れることも考えてみましょう

雛祭りを楽しんだかな……相手の顔を思い浮かべてみると、文章が浮かびます

雛祭りを楽しんだかな……相手の顔を思い浮かべてみると、文章が浮かびます

相手の顔を思い浮かべながら考えていると、よりパーソナルで身近な文が綴れます。下手でもいいので、素直に、自分の言葉で考えてみると、心に届く手紙になるでしょう。
  • 「今年の雛祭りはいかがでしたか? 想像するだけでこちらも笑顔になります。」
  • 「菜種梅雨の静かな午後、いかがお過ごしでしょうか。」
  • 「たらの芽を摘んで、少しほろ苦い春の味をいただいています。」
  • 「ぽかぽか陽気に、心楽しくお散歩できる季節となりましたね。」
  • 「お庭の桜は花時を迎えたころでしょうか。」
手紙の書き方 ~心に届く時候・時節の挨拶


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