悲観バイアスとは? コロナ禍で気をつけたい思考のとらわれ
コロナ禍のネガティブな情報にばかり触れて、「悲観バイアス」から抜けられなくなっていませんか?
物事を何でも悲観的に受け止め、ネガティブに考えてしまう認知バイアスのことを「悲観バイアス」と呼びます。以前にお伝えした「楽観バイアス」と対極です。「楽観バイアス」が作動すると、根拠なく「自分だけは大丈夫」「なんとかなるだろう」と軽く考えてしまうのに対し、「悲観バイアス」が作動すると、根拠なく「何をしても無駄だ」「この先どんどん悪くなる」というように、深刻に考えてしまいます。
「楽観バイアス」については、「感染対策にも有効!「楽観バイアス」に流されない5つの習慣」をご参照ください。
悲観バイアスのメリット・デメリット……体験とコミュニケーションは激減
「悲観バイアス」は、自分を危機的状況から守るために働く認知です。あらかじめネガティブに捉えておけば、楽観的な行動をして病気やトラブルに遭うリスクを減らすことができるというはたらきがあります。しかし、人間には、たくさんの実体験を通じて自分や他者、世の中のことを理解していこうとする特性があります。他人と会うことで信頼関係を強め、思いを分かち合おうとする特性もあります。
それ故に、悲観バイアスによって体験とコミュニケーションの機会を極端に減らしてしまうと、人生の楽しみや希望が失われ、生きる意義、生きる喜びを感じる機会が薄れてしまうのではないかと危惧しています。
悲観バイアスと共通? ストレスを増やす考え方「認知のゆがみ」
ところで「悲観バイアス」には、「認知のゆがみ」と呼ばれるストレスを増やしてしまう認知パターンとの共通点がたくさんあります。心理学者バーンズが提唱した「認知のゆがみ」には10個のネガティブな認知パターンがありますが、コロナ禍の悲観バイアスと特に共通するのは、「一般化のしすぎ」「心のフィルター」「先読みの誤り(結論の飛躍)」「拡大解釈と縮小評価」ではないかと思います。コロナ禍で人々の心に浮かぶ悲観的思考の代表例を、各認知パターンに沿って考えてみましょう。■一般化のしすぎ
悪いことが起こったときに、「一度あることは二度ある」「悪いことが起こる運命」というように一般化して捉えること。
例)パンデミックが収束する未来を信じられず、「悪夢は繰り返される」などと考えて頭を抱える。
■心のフィルター
考えることがネガティブなことばかりで、「マイナス」のフィルターを通して物事を捉えること。
例)感染対策を万全にして行動しているのに、「感染してしまうかもしれない」と常に不安になっている。
■先読みの誤り(結論の飛躍)
先に起こることが、不幸なことばかりだと信じ込んでしまうこと。
例)コロナ禍で滞る社会や経済のニュースを見ながら、「このままでは日本は終わりだ」と嘆き、頭を抱えている。
■拡大解釈と縮小評価
悪い面ばかり大きく捉え、良い面をあまり評価しないこと。
例)コロナ禍だからこそ実現できたことに目を向けず、「コロナであれもできなくなった」「コロナでこれだけ損をした」と失ったもの数ばかりを考えている。
「認知のゆがみ」については、「「ストレス思考10パターン」をチェック!」もご参照ください。
悲観バイアスへの対処法……大切なのは複数の情報源を参考にすること
パンデミック下では、「悲観バイアス」が作動しすぎてつらくなるのも無理はありません。しかし、悲観バイアスに振り回されているだけでは、前向きに行動することはできません。「極端に悲観的に捉えているかも」と感じたときには、自分の思考の根拠を探ってみましょう。悲観的に考える根拠の情報源がいつも同じである場合(同じ番組の報道、同じ人の意見など)、異なる立場、異なる視点からの情報や解釈にも触れてみることが必要です。ただし、ニュースソースには十分に気をつけること。根拠が明白でない情報に惑わされないように、十分配慮しましょう。
人の多様な考え方と行動を知ると、悲観バイアスから解放される
深刻な状況の中でも、人は多様な考え方と行動をしています。自分一人だけ、あるいは同じメンバーの間だけで考えて悲観的になるより、立場の異なる人、多様な価値観を持つ人の意見を聞き、考え方と行動の幅を広げていきましょう。コロナ禍だからこそ実現できることを存分に味わい、楽しんでいる人もたくさんいます。たとえば、友人に気軽に会って話せないからこそ、丁寧に手紙を書く喜びに気づき、友情を深めることができたという人もいます。人と会えないだけに、自分にじっくり向き合って、瞑想の時間を楽しむことができたという人もいます。
他人の思考と行動の多様性を知ると、悲観バイアスに縛られて苦しむ自分を解放することができます。ぜひ、色々な人の話を参考にしながら、コロナ禍の今だからこそ生活を充実させる方法を見出していきませんか?