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資本金とは?基本概要から、平均額や会社設立時の金額設定のポイントをわかりやすく解説


就活などで、企業のホームページをみて情報収集をしていると「資本金」という言葉を目にすることが多いのではないでしょうか。企業によって「資本金100万円」や「資本金10億円」など、かなり差があることがわかります。

なかには、売上の割に資本金が少ない企業も多く存在。資本金を少なめに設定することで享受できるメリットがあるためです。また資本金の意味を正しく理解していないと、その企業の価値を見誤ってしまうかもしれません。

これから会社を設立したい人や自分の勤めている会社への理解を深めたい人は、資本金の役割について把握することが大切。そこで、資本金の基本概要から増資・減資までわかりやすく解説します。
   

資本金とは?平均額や会社設立時のポイント

資本金とは、簡単に説明すると会社の事業運営の基礎となる資金のことです。株式会社の場合は、投資家から集めた出資金の合計を指します。

会社を立ち上げてからお金を調達する方法は、大きく分けて、内部留保・借入金・増資の3種類。借入で調達した資金は借入金として負債の部に計上されますが、増資で調達した資金は資本金となります。つまり、投資家から集めた出資金額の合計が資本金です。厳密にいうと、一部のお金は資本準備金という別の項目にすることも可能です。

創業時は、他者から出資を受けるハードルが高いので資本金は自己資金で始まるケースがほとんどです。また、資本金はあくまで出資を受けた元手であり、その後に生み出した価値の増減は反映されていません。そのため、資本金の額だけを見て会社の価値を判断することは危険です。

参考)会社を立ち上げてからお金を調達する方法3種
  1. 内部留保:それまでの利益などを積みあげて、貯まったお金のこと
  2. 借入金:金融機関からお金を借りるという方法
  3. 増資:投資家から出資を募集すること ←資本金にあたる

▽参考記事
資本金とは?資本金が多い会社の価値と判断方法

■会社設立に必要な資本金は1円
2006年に施行された「新会社法」によって、会社は1円から設立できるようになっています。施行前は、株式会社は1000万円、有限会社は300万円の資本金が必要でした。有限会社は設立できなくなりましたが、「最低資本金制度」が廃止され「資本金1円」で株式会社を設立できます。また、有限会社の代わりに「合同会社」を設立できるようになりました。

株式会社を設立できれば、株式や社債などを活用した資金調達が可能になったり優秀な人材を採用しやすくなったりします。企業との取引などの場面で有利になるかもしれません。

たしかに、起業における金銭的なハードルが大幅に下がったといえます。しかし、会社を設立するには最初からある程度の資金が必要です。資本金は1円に設定できますが、会社設立時に登録免許税や定款認証に関する費用が発生する点に留意しましょう。

さらに、社会的な信用や銀行からの融資を考えると「資本金1円」は避けたほうが無難です。信用性が低いと、よい人材が集まりにくい難点もあります。融資を受ける予定のない場合や、個人事業主が節税目的で法人化する場合でも「資本金1円」は信用力の面で大きく劣りますし、銀行口座の開設に支障が出る可能性もあります。後述の通り、資本金の平均は約300万円といわれていますが、少なくとも会社の設立費用などだけでも数十万円はかかります。「100万円」など見栄え的にも体裁が整うような資本金の設定がよいでしょう。

▽参考記事
「新会社法」で、有限会社がなくなる?

■資本金の平均額
会社設立時の平均資本金額は「約300万円」といわれています。総務省・経済産業省の「平成28年経済センサス‐活動調査結果」によると、「資本金300万円以上500万円未満」が約34.7%、「1,000万円以上3,000万円未満」は約33.5%でした。次いで「500万円以上1,000万円未満」が約13.2%。つまり、全体の約8割が資本金300万円から3000万円未満に設定していることが読み取れます。

一方で資本金が「300万円未満」の企業は約6.5%あり、少ない資本金でも会社を設立し経営できることもわかります。設備投資や会社の維持費が低い業種であれば、資本金額が少なくても会社を経営しやすいといえるでしょう。例えば情報通信業などは、資本金が少ないケースが多いと考えられます。そのため、あくまで資本金は企業の規模や将来性をはかる一つの目安でしかありません。

出典:
資本金とは?会社設立時の平均額や使い道について解説(三井住友カード)
政府統計の総合窓口(e-Stat)「平成28年経済センサス‐活動調査」

■資本金が多い会社は安心か
資本金とは簡単にいうと過去に出資を受けた金額の合計なので、その後の業績と切り離して考える必要があります。つまり、会社の売上が増えても資本金の額は変わりません。

資本金が多くても、売上が少なければ会社が倒産してしまう可能性も考えられます。事業運営による赤字や新規事業の失敗などは資本金に反映されないためです。

一方で会社の売上が好調であれば、資本金の何倍もの価値をもつケースもあります。そのため資本金のみでその会社の価値を判断するのではなく、事業内容など会社の全体像を理解することが重要です。

会社を総合的に理解するには、その会社の事業内容を確認するだけではなく経営方針や会計資料などもチェックしたほうがよいでしょう。プロのアナリストでも会社の価値判断は難しいですが、ある程度の予測は可能です。

▽参考記事
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会社設立でおさえたい資本金のポイント

(1)業務の認許可には一定の資本金が必要な場合がある
資本金は1円から設定できますが、業務によっては一定の資本金額が要件になるケースもあります。許認可が必要な業務の一部は、資本金を一定の金額以上にしないと業務の許可が降りません。

そのため、会社でどのような事業をするのか決まったら、その事業は「許認可業務」に該当するかどうか、あらかじめ要件を確認しておく必要があります。資本金が不足し、あとから増資する必要がないようにしましょう。

例えば、「労働者派遣業」の許可を取得する場合には、会社設立時に資本金2000万円以上が必要になります。また「有料職業紹介事業」は資本金500万円以上、「一般建設業」は資本金500万円以上といった要件もあるので注意してください。

また、許認可を受ける場合には定款にもその点を記載します。企業は定款に沿って事業活動を行うため、あらかじめその業務について記載しておかないと許可が降りないケースもあります。

(2)融資に必要な資本金の金額
特に創業期については、資本金と融資の受けやすさも関係があります。融資を受けたい場合には資本金は多く見積もったほうが好ましいです。基準はありませんが、資本金は多ければ多いほど信用性を高めることにつながります。あまりに少ない資本金だと、返済能力を疑われ、融資を受けづらくなる可能性があります。

例えば資本金が100万円の企業と1000万円の企業を比較すると、後者のほうが融資を受けやすいでしょう。業種によっても異なりますが、印象は大きく違います。何度か決算をやれば、決算時の利益をもとに融資の判断ができますが、特に創業期は自己資金で審査する側面が強いため、資本金も重視されるのです。

だからといって、資本金が多くても必ず融資を受けられるわけではありません。融資審査で重要なポイントは、お金の回収できるかどうかです。あくまでも、資本金は会社の体力を示す情報の一つとして認識しておくことが大切です。

(3)資本金が1000万円未満だと節税になる
資本金は1000万円未満にしておくと、会社設立から最大2年間は消費税の納付が免除になります。そのため、999万円に設定している会社も見かけます。消費税は会社が顧客から預かり、国に納付します。しかし、資本金が1000万未満であれば無条件で消費税が1年間免除に。さらに、設立後6ヶ月間の課税売上高が1000万円未満であれば2年間免除になります。

法人住民税の均等割は資本金1000万円以上の場合だと18万円支払う必要がありますが、1000万円以下の場合は7万円です。ただし、従業員が50名以下の場合に限ります。(均等割の金額は、自治体により異なります。上記の金額は多くの自治体が採用している金額であり、一例です。)

参考:
納税義務の免除(国税庁)
均等割額の計算に関する明細書(東京都主税局)
 

資本金額別にみる会社の特徴

資本金の額によって、享受できるメリットは異なります。金額によって節税の質に違いが出るだけではなく、会社の信用性にも違いが生じます。たしかに資本金は1円から設定できますが、資本金ごとに異なる優遇措置を確認したうえで決めることが重要です。

■資本金1000万円|新規法人
資本金を1000万円以下にすれば、従業員数によって節税額が変わります。

従業員が50人以下の場合は7万円(都道府県の法人住民税5万円・市町村の法人住民税2万円)が費用としてかかります。しかし、資本金が1000万円から1億円以下になると18万円(都道府県の法人住民税13万円・市町村の法人住民税5万円)発生してしまいます。

従業員が50人を超えている場合は、14万円(都道府県の法人住民税12万円・市町村の法人住民税2万円) もしくは20万円(都道府県の法人住民税15万円・市町村の法人住民税5万円)が必要です。

従業員が50人以下であれば、資本金が1000万円以下と1,000万円を超過している場合とで、法人住民税が11万円も違ってきます。これは大きなメリットなので1000万円以下にしている企業は比較的多い印象です。

会社設立後に最大2年間免除になる消費税については1000万円「未満」の会社が対象ですが、法人住民税の節税は1000万円「以下」が対象である点に留意しましょう。

消費税と法人住民税のどちらも節税したい場合には、資本金を1000万円未満にしておく必要があります。

参考:
均等割額の計算に関する明細書(東京都主税局)

■資本金3000万円|中小企業
資本金が3000万円以下の会社は「特定中小企業者等」に該当します。特定中小企業者等には「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別控除」の適用があります。

これは中小企業者等が機械等を取得した場合に、その取得価額の7%(ただし法人税額の20%まで)を法人税額から控除できる仕組みです。しかし、資本金が3000万円を超えると特別償却しか適用されない点に注意しましょう。また、所有権移転外リース取引により取得したリース資産は特別償却の適用がありません。

なお生産性向上に資する一定の設備については、資本金3000万円超の法人であっても特別控除が適用されます。

参考:
中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)(国税庁)

■資本金1億円|大企業
資本金1億円以下の企業は「中小企業者」として、資本金1億円超の企業と比較して様々な優遇が受けられます。主な特例を以下に列挙しておきます。
 
  1. 法人税の計算上、所得金額800万円まで軽減税率(15%)が適用できる
  2. 800万円以下の交際費が全額損金算入できる(資本金1億円超では、原則的に交際費全額が損金不算入になる)
  3. 30万円未満の少額減価償却資産が全額損金算入できる(ただし、年間300万円を限度とする)
  4. 特定同族会社の留保金課税の対象除外となる
  5. 欠損金の全額繰越控除が適用できる(9年)
  6. 欠損金の繰戻還付が適用できる
  7. 各種特別償却、特別控除が適用できる
  8. 法人事業税の外形標準課税の対象外になる
  9. 法人住民税の均等割が少なくなる
  10. 原則国税局管轄から外れる(資本金1億円未満の場合)

上記の特例を利用すれば、組み合わせ次第では最大300万円以上も節税できます。また税務以外でも、信用保証協会の融資や中小企業退職金共済などの利用も期待できます。

参考:
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(国税庁)
特別償却・特別税額控除(国税庁)
法人事業税に係る外形標準課税の概要(東京都主税局)

▽参考記事
資本金でこんなに変わる税金
 

資本金の増資とは?メリットデメリットと増資の方法

増資とは、株式会社が資本金を増やすために新たな株式を発行することを指します。会社の運転資金や設備資金、新規事業への投資資金などを調達するために、増資は有効な手段といえます。融資とは異なり、返済不要な資金調達手段であるため資金繰りの改善や財務基盤の強化につながるでしょう。しかし、増資の手続きは難しいので慎重に進める必要があります。

■増資するメリットとデメリット
資本金を増資するメリットは、以下のとおりです。
 
  1. 返済不要の資金調達
  2. 財務体質の強化
  3. 信用力の向上
  4. 株主の参加意識
  5. 株主構成を変えることができる

「1. 返済不要の資金調達」は、増資であれば返済が不要であることを示しています。財務の安定化につながるでしょう。「4. 株主の参加意識」は取引先や従業員に会社の株を所有してもらうことで、会社への参加意識が強くなるメリットがあります。

資本金を増資するデメリットは、以下のとおりです。
 
  1. コストが掛かる
  2. 配当金の支払が発生する

「1. コストが掛かる」は、増資するにあたり登記申請の際の登録免許税や司法書士への報酬の支払いとして合計7万円ほどかかります。なお登録免許税は増資する資本金の額の1000分の7(最低3万円)で、増加する資本金の額によって異なります。

■増資方法
増資には、2つの方法があります。「有償増資」と「無償増資」です。
  • 有償増資:新たに発行する株式に対して、出資者がお金を出して株式を購入する増資
  • 無償増資:出資者がお金を出さず、資本準備金などを資本金に振り替える増資

有償増資の募集方法には「公募増資」「株主割当増資」「第三者割当増資」の3種類があります。
(1)公募増資
不特定多数の投資家から応募者を募る方法。上場企業などの大手企業が株式市場から大規模に資金調達を行う方法であり、未公開会社では一般的に行いません。
(2)株主割当増資
株主全員に、持分割合に応じて新株を割り当てる方法。他に株主を増やすことなく増資する場合に採られます。議決権割合に変化が生じない点が特徴です。
(3)第三者割当増資
取引先や役員、従業員など会社の関係者から募集する方法。中小企業が資金調達手段として増資を行う場合に採用されることが多い方法です。

▽参考記事
増資の方法とは?株式を増やす手続きと税務上の注意点
 

資本金の減資とは?メリットデメリットと減資の方法

減資とは、資本金を少なくする手続きのことを指します。減資を行う目的は、大きく分けて「配当」「欠損填補」「節税」の3つです。「配当」のための減資を「有償減資」と呼びます。これは、会社から実際に配当の形で資金が出ていくためです。一方で「欠損填補」「節税」は、資金が減少するわけではないため「無償減資」と呼ばれます。貸借対照表上の数字が入れ替わるだけです。

■減資するメリットとデメリット
減資を行うメリットは、以下のとおりです。

(1)配当を行える
資本金は投資家から出資を受けた元手であり、配当の金額計算からは除外しなければなりません。そのため配当金額を増やしたい場合には、資本金の一部を取り崩して一旦剰余金に振り替える必要があります。

(2)欠損を填補できる
赤字の累積額は、欠損として会社の貸借対照表に蓄積されていきます。欠損があると配当額に制約が出て、新たな出資を集めにくいです。しかし、減資によって資本金から欠損を補填すれば資金調達がしやすくなります。

(3)税金のため
法人に関する税金は、資本金が1億円以下の場合にさまざまな軽減策が設けられています。そのため、そうした優遇策を受けるために減資をするといったことがあります。

減資を行うデメリットは、「信用力の低下」です。例えば法人に関する税金は資本金が1億円以下の場合にさまざまな軽減策が設けられていますが、度が過ぎると信用力を低下させる恐れがあります。

■減資方法
株主総会での決議と、銀行など金融機関や仕入れ先などの債権者に対する手続きが必要です。会社が減資をすることで株主の配当額が増加しますが、それは会社の財産流出につながる可能性も示唆します。借入金の返済は配当に優先して行われなければならないため、債権者が異議を申し立てられるように事前の確認が必須です。

会社の経営悪化により、新たなスポンサーのもとで再建を図る場合には「100%減資」という手段が採られることがあります。まずは会社が既存の株主から0円で株式を引き取り、株主をすべて排除します。その後、スポンサーの出資に対して新たに株式を発行したり引き取った株式を交付したりします。引き取った株式をすべて消却するときに一時的に資本金が0円の状態が発生するため「100%減資」と呼ばれます。

▽参考記事
減資とは?資本金を減らす意味・目的と株主への影響
 

資本金の決定は慎重に

会社の設立に必要な資本金は「1円」ですが、本質を正しく理解していないと頓挫してしまいます。今回紹介したようなポイントをおさえた上で資本金を設定すれば、節税や社会的な信用性につながりパフォーマンスを高められるはずです。

許認可業務には、一定額の資本金が要件になっている場合もあるので確認が必要。また、会社のフェーズによっては増資や減資も検討することで資金繰りが改善されていきます。総合的な観点から、慎重に資本金を決めましょう。

※税額控除の条件等についての詳細・最新情報は、国税庁等のページを確認してください
 

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