なぜ減資をするの?

減資を目的は、会社の状況に応じてさまざまです

減資を目的は、会社の状況に応じてさまざまです

減資を行う目的には、大きく分けて3つあります。一つは、配当を行うためです。資本金は投資家から出資を受けた元手であり、稼いだお金(これを剰余金といいます)をもとに行う配当の金額計算からは除外しなければなりません。そのため、配当金額を増やしたい場合には、資本金の一部を取り崩して一旦剰余金に振り替えるという会計上の手続きを経る必要があります。会社から実際に配当の形でお金が出ていくので、配当のための減資を「有償減資」と呼ぶことがあります。

もう一つは、欠損填補のためです。過去に赤字が続いた場合、赤字の累積額は、欠損という形で会社の貸借対照表にたまっていきます。剰余金とは逆のパターンですね。欠損があると、配当額に制約がでてしまうため新たな出資を集めにくいといった事情があります。借入の場合は、通常は、資本金と利益の累積(赤字の場合は欠損)の合計で審査されます。なので、減資で資本金が減っても、その分欠損も減るので、金融機関目線では会社の財務状況は変わらないのです。そのため、投資家目線でみて資金調達が有利になるように、減資によって欠損をリセットすることが行われます。

3つ目は、税金のためです。法人に関する税金は、資本金が1億円以下の場合にさまざまな軽減策が設けられています。そのため、そうした優遇策を受けるために減資をするといったことがあります。2015年にシャープがこの優遇策を狙って1億円まで減資を表明して話題になりました。(実際は、社会的な影響などから5億円に留めました。)

欠損填補や税金のための減資は、社外にお金がでていくわけではなく、貸借対照表上の数字が入れ替わるだけの会計上のプロセスですので、「無償減資」と呼ばれています。この場合は、現金は全く動きません。減資といっても、必ずお金が払い戻されるというわけではないということですね。

減資の手続きは大変

減資をするといっても、社長や役員会で勝手に決められるわけではありません。

まず株主総会での決議が必要となります。資本金は、株主が投資した元手です。そのため資本金を減らすということは、持ち主である株主の同意が必要だということは当然です。

さらに、銀行など金融機関や仕入れ先などの債権者に対する手続きも必要となります。減資は、配当額の増加による会社財産の流出につながる可能性があります。もともと借入金の返済は、配当に優先して行われなければなりませんので、債権者が異議を申し立てられるように、事前に確認を取っておかなければならないのです。

ちなみに、金融機関が貸付を行う際には、一定割合の資本金を積んでおかなければならないという財務制限条項という条件が付されることがあります。減資により、即時の返済を求められる場合もありえますので、その場合は実質的に減資はできないといえます。

それぞれのプロセスで時間やコストが必要となります。出資者を募る増資も大変ですが、減資も利害関係者への配慮が必要で、簡単にはできないということです。

100%減資で企業再生

経営悪化により、新たなスポンサーのもとで再建を図る場合などには100%減資という手段が採られることがあります。

まずは会社が既存の株主から0円で株式を引き取って既存株主を全て排除します。その後スポンサーの出資に対して、新たに株式を発行したり、引き取った株式を交付したりすることで、スポンサーが株主となって再建を図ります。引き取った株式を全て消却する場合には、一時的に資本金が0円の状態が発生しますので、100%減資と呼ばれます。

余談ですが、2015年にスカイマークが上場廃止になるときは、最終日の株価が14円でした。その後の100%減資が行われることが予想される中で、14円の価値が残りました。スポンサー候補のニュースが流れる中で、投資初心者を中心に価値が残るかもと思った方もいたかもしれません。そうした気配を読んだプロ投資家が、売買の相手となって投資初心者を取引に向かわせたと考えられます。しかし実際には、予想通り100%減資が行われ、14円だった株価は0円となりました。

株主は投資額以上の責任は負わない有限責任といわれますが、100%減資によって株を譲り渡すことは、投資額が0円となりますので、有限責任における最大の責任の取り方といえるでしょう。


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