フードデリバリー企業が抱える課題とは?
さて、PPMで現状フードデリバリー業界はUber Eatsや出前館など先行する大手が「花形」、そしてそれを追う新規参入組が「問題児」として事業を展開している構図が分かりましたが、今後各社がフードデリバリー事業を「金のなる木」にまで育てていくには立ちはだかる数多くの課題をクリアし、相対市場シェアを高めていかなければなりません。そこで続いては業界の抱える課題を整理していくことにしましょう。【課題1】激化する競争をいかに勝ち抜くか?
冒頭でもお伝えしたようにフードデリバリー市場は急成長を遂げています。市場が成長期の真っただ中にある場合、大きなビジネスチャンスをものにしようと新規事業者が続々参入してきます。
実際にフードデリバリー市場においては、世界各国で成功を収めたグローバル企業や一攫千金を狙うベンチャー企業などさまざまな企業がここ数年で新たに参入を果たしています。
フードデリバリー業界はインターネットやアプリの活用などテクノロジーで差別化できる要素はあるものの、ビジネスの根幹は既存の飲食店の料理を顧客のところまで運ぶという差別化しづらいサービスのために、激しい競争を勝ち抜くのは容易なことではありません。今後も市場は拡大するでしょうが、その分新規の競合もますます増え、まさに血みどろの戦いが繰り広げられるレッドオーシャンと化すことでしょう。
この激しい競争を勝ち抜くには、やはり「フードデリバリーといえばUber Eats、もしくは出前館」といったブランディングが有効な戦略といえるかもしれません。
【課題2】配達員の問題をどうクリアするか?
市場が拡大すれば、フードデリバリー業界は労働集約型のビジネスのため、その分配達員を確保しなければなりません。今はコロナ禍で仕事がなくなったり、減らされたりしている人が多いために、配達員の確保は比較的容易といえるかもしれませんが、今後コロナが完全に収束し、経済が元通りになった際には配達員の確保に困ることも十分に考えられます。
また、現状は配達員の手にする報酬が他のアルバイトなどに比べて高いために多くの人が流れてきていますが、報酬が減額されるようなことになれば一気に配達員が去っていくリスクもあります。加えて配達員が増えれば、その分クオリティを維持することも非常に難しくなってきます。
実際問題として、現状でも配達中の事故や配達員が自転車で高速道路を通行するなどの交通違反、飲食店の前で注文待ちをする複数の配達員のマナーの悪さなどが社会問題となっています。配達員の量と質を同時に上げていくことは相当難易度の高い課題ですが、配達員によるサービスが企業の信頼に直結することから避けては通れない道といえるでしょう。
配達員のマナーも問題視されている
【課題3】高くつくコスト、薄い利幅にどこまで耐えられるか?
現状、成長過程にあるフードデリバリー事業は、企業にとってかなりの投資を行わなければ事業を継続できない段階にあります。例えば、出前館は2020年12月から2021年2月までの3カ月間で62億円の売上を達成しましたが、配達員に支払う報酬などで59億円、テレビCMなどの広告宣伝費が36億円もかかり、わずか3カ月で52億円に迫る赤字を計上しています。
成長期の競争が激しい間は、赤字を覚悟してマーケットシェアの拡大を図らざるを得ませんが、もちろん資金は無限にあるわけではなく、多額の資金調達やどこまで耐えられるかという問題も意識する必要があります。
例えば、出前館は2020年3月にLINEと資本業務提携を結び300億円を調達しました。また、フィンランド発のWoltは日本市場に参入するにあたって総額900億円近い軍資金を調達し、勝ち残りを目指しています。
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