マーケティング

Uber Eats? 出前館? 急成長するフードデリバリー市場で「勝者」となるのはどこか

コロナ禍でUber Eatsや出前館などのフードデリバリーが急速に成長していますが、複数の課題があるのも事実。経営戦略のフレームワーク「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」に当てはめ、どの企業が「金のなる木」のゴールにたどり着くのか、フードデリバリー市場の今後を占います。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

急成長するフードデリバリー市場

コロナ禍で外食需要が冷え込む一方で、自宅などへ飲食店の料理を配達してもらうフードデリバリーサービスが活況を呈しています。外食・中食市場情報サービスを提供するエヌピーディー・ジャパンの調査によれば、2020年のフードデリバリー市場は6264億円に達し、前年の4183億円から実に50%増と急速な伸びを示しています。

今後もまだまだ大きな成長が見込めるこのフードデリバリー市場ですが、今回は経営戦略を考える際に使われるフレームワーク「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」を使って将来の業界地図を予測していくことにしましょう。
 

プロダクト・ポートフォリオマネジメント(PPM)とは?

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは、市場成長率と相対的市場シェアから事業を4つのタイプに分類し、企業の取るべき戦略を明らかにするフレームワークです。PPMでは次の4つに事業タイプを分類します。
プロダクト・ポートフォリオマネジメント(PPM)とは

プロダクト・ポートフォリオマネジメント(PPM)とは

1. 問題児
市場成長率が高く、相対的市場シェアが低い事業は「問題児」事業となります。市場成長率が高いために企業にとって大きなビジネスチャンスはありますが、シェアが低いために売上、利益ともに低調なケースが大半です。

例えばフードデリバリー業界では、2021年3月にフィンランド発祥の「Wolt」、9月にはシンガポールで生まれドイツ企業の傘下となった「foodpanda」、そして12月には韓国で最大規模のデリバリーサービスを展開する「FOODNEKO」が満を持して市場に参入してきましたが、これらの企業の事業は今のところはマーケットシェアも低く「問題児」に分類されるでしょう。

この「問題児」事業では資金や人材など多大な経営資源を投入してマーケットシェアを高めていく必要があります。

2. 花形
市場成長率が高く、相対的市場シェアも高い事業は「花形」事業に分類されます。市場シェアが高いために市場規模が大きい場合は売上規模も大きくなります。一方で市場が成長段階にあり、事業としてはまだまだ投資を行ってシェアアップを図る必要があるために利益水準は低く、場合によっては赤字のケースもあります。

例えばフードデリバリー業界では、「Uber Eats」や「出前館」の事業が「花形」に当たるでしょう。証拠として、Uber Eatsや出前館の売上は急成長していますが、広告宣伝費や人件費などの投資負担が重く、Uber Eatsでわずか数億円の利益、そして出前館に至っては2021年8月期の前半6カ月だけで80億円を超える赤字を計上しています。

しかし、花形事業を擁する2社としては引き続き相対的市場シェアのアップに努め、次のステップに進めることが重要な戦略になってくるでしょう。
コロナ禍で利用者が増えたフードデリバリー

コロナ禍で利用者が増えたフードデリバリー

3. 金のなる木
市場成長率が低く、相対的市場シェアが高い事業は「金のなる木」と呼ばれています。事業が成熟期に突入し、市場成長率が鈍化してくると競争相手も市場から撤退して少なくなり、新たな投資も必要なくなることから、収益性が高まってきます。フードデリバリー業界もいずれは成長が鈍化し、新たな投資をしなくても高い収益を上げることができるようになるはずです。

この観点からは、各社のゴールは自社の事業を「金のなる木」に変えていくことだといっても決して過言ではないでしょう。企業は事業をこの「金のなる木」まで育てることによってこれまでの投資を回収し、新たな事業への投資資金を生み出せるようになるのです。

4. 負け犬
市場成長率、相対的市場シェア、共に低い事業は「負け犬」に分類されます。元々、市場成長率の高い有望な市場に参入しても、うまく市場シェアを上げられなかった場合はいずれ「負け犬」事業となります。

例えば現在急成長を遂げるフードデリバリー市場に続々と新規事業者が参入していますが、計画通りに市場シェアをアップさせることができなければ、「負け犬」事業として売上、利益共に低空飛行を続ける可能性も高く、ゆくゆくは撤退も視野に入れなければなりません。

もしくは、売上規模が小さくても生き残りを目指す場合は、大手が目もくれない特別な市場、例えば高齢者など特定の顧客層や地方都市など特定の地域といった差別集中化を図って収益力を高めるという戦略に打って出る必要があるでしょう。

>次ページ「フードデリバリー企業が抱える課題とは?」
 
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