税金/個人事業者の税金

領収書はいらない?個人事業主が確定申告で活用できるクレカや電子マネー

フリーランスが確定申告の作成にとりかかる場合、最も煩雑さを感じるのが領収書の整理ではないでしょうか。なので、ここではクレジットカード決済や電子決済を利用した領収書整理を簡素化した確定申告書作成の方法のひとつを提案してみました。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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フリーランスの「領収書の整理」に時間をかけない確定申告書の作成方法

個人事業主、あるいはフリーランスが確定申告の作成にとりかかる場合に何といっても、最も時間がかかったり、煩雑さを感じるのが領収書の整理ではないでしょうか。もし、そうであるならば「領収書の処理件数を減らせばいい」と考えるのも当然なことです。

したがって、ここでは、青色申告特別控除65万円(あるいは55万円)の要件は満たしながらも、できるだけ「領収書の整理」に時間をかけない確定申告書の作成方法について整理しておきましょう。
確定申告書を作成するまえには決算書を作成する作業があります (出典:国税庁資料より)

確定申告書を作成するまえには決算書を作成する作業があります (出典:国税庁資料より)

 

売上の計上もれを防ぐ通帳の活用方法

 節税と簡素化を両立させる領収書の整理方法に入る前に第一にあげられるのは、何といっても事業用の通帳を作成し、それを最大限活用することです。業態によって通帳を複数使いわける人もいますが、その分、整理の煩雑さも増すので、「煩雑さを少しでも減らしたい」という方であれば、少なければ少ないほどいいでしょう。

その通帳の運用ルールとして最大のポイントは、「売上をつつみ隠さず入金する」ということです。取引の性格上、売上の入金が「振込み」であれば問題ないのですが、たとえば、現金取引の多い飲食店の場合も、いわゆるレジ現金から領収書の精算は行わず、必ずいったん通帳に入金する、というルールを厳守することが重要です。入金日は5日ごととかいったように、ある程度日をまたいでも構わないのですが、「通帳を見れば売上の全容がわかる」状態であることがポイントです。
 

大口な経費の支出は通帳に履歴を残す

その上で、材料仕入れ、給料の支払いあるいは家賃の振り込みといった大口の経費は必ず通帳に履歴を残すということです。通帳に履歴があれば、それが「支払ったことを証する書類」となるので、あらためて「領収書」もらう必要ありません。

電気やガス、水道料金といったいわゆる水道光熱費も自動引き落としにすれば、通帳に履歴が残るので、それが「支払ったことを証する書類」となります。
 

細かい経費はクレジットカードや電子決済サービスの活用を

通帳からの振り込みや自動引き落としにはなじまない費用はなるべくクレジットカード決済を利用しましょう。できれば、事業用のクレジットカードをプライベート用、つまり事業とは無関係のクレジットカードを別にし、事業用のクレジットカードは上記の事業用の通帳とヒモづけることで振り込みや自動引き落としにはなじまない細かな費用もそのクレジットカードの利用明細をみればそこに記載されていることとなります。

そうしたらその「クレジットカードの利用明細」が「支払ったことを証する書類」となるので、領収書は不要となるのです。
 
また、PayPayやLINE Payといった電子決済サービスも事業用の通帳をヒモづける、あるいは事業用のクレジットカードとヒモづけるといったようにすれば、そこで整理する領収書を減らすこことができます。
 
なお、誤って「事業用のクレジットカードを私用利用してしまった」あるいは「事業用の通帳とヒモづいている電子決済サービスを私用利用してしまった」という場合には、その経費を差し引くという処理を必ずしておいてください。

あるいは会計ソフトを活用している場合には「店主貸」あるいは「事業主貸」との勘定を利用し(このあたりはお使いの会計ソフトによって名称が異なります)最初から必要経費に入れないという処理をすることも重要です。
 
このように極力、「現金払い」の取引を減らせば、「領収書」も少なくなり、結果として「領収書の整理」の煩雑さが減少することになるでしょう。
 

なぜ、通帳に履歴を残すことが重要なのか

青色申告特別控除65万円(あるいは55万円)の適用要件を満たすためには、売上がいくらあった、あるいは必要経費がいくらかかった、という事実だけではダメで、「10万円の売上があり、預金が10万円増えた」とか「クレジットカードから携帯電話代8千円の自動引き落としがかかった」という入金や支払いの状況まで把握する必要があります。つまり、「売上が10万円あった」あるいは「通信費が8千円かかった」という損益の情報だけでなく、現金や預金の増加や減少といった財政状態に関する情報をもとめられているのです。

したがって、「事業用の通帳を整理すれば、売上と必要経費といった損益状況が集約できるだけでなく、預貯金の増減によって入金や支払いの状況まで把握できる」という状況が常にあることが重要なのです。
 

会計ソフトの読み取り機能を活用すればさらに便利に

 さらに、最近の会計ソフトはかなりデータの読み取り機能は充実してきました。
このあたりは会計ソフトがどの程度対応しているかにもよるのですが、たとえば、
  • 通帳履歴をエクセルファイルやCVSファイルにエクスポート
  • クレジットカードデータをエクセルファイルやCVSファイルにエクスポート
  • 会計ソフトの読み取り機能を活用し、上記データを読み込ませる
  • 通帳履歴やクレジットカードデータから漏れた領収書の必要経費を最後に手入力
などという流れが活用できるのであれば、青色申告特別控除65万円(あるいは55万円)の適用要件を満たす青色申告決算書にかなり近づくと考えます。
 
もちろん、ガイド記事「自宅 兼 事務所」の家賃は必要経費になる?ならない?で書いたように、「自宅兼事務所の家賃を支払っていた」というようなケースでは全額必要経費にすることは困難ですし、売掛の計上、買掛の計上、減価償却費の算定等、確定申告書の提出前にはいろいろとチェックしなくてはいけない点があるのも事実です。
 
しかし現金払いの必要経費を減らせば、領収書整理の煩雑さは減少するので、そのために賢いクレジットカードや電子決済の利用方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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