スピリッツを火薬に垂らし、着火するかどうか

 
マティーニ・ロック

マティーニ・ロック

クラフトジン「シップスミスV.J.O.P.」(以下VJOP/700ml・57%・¥4,735)にいまハマっている。
高濃度アルコールのパンチある香味に導くために、VJOPはスタンダードな「シップスミス ロンドンドライジン」(700ml・41%・¥4,200税別希望小売価格)の3倍ものジュニパーベリーを使用している。鋭くエッジの効いた、ジュニパーベリーの香味が際立つエクストラドライな仕上がりが特徴的だ。
ストレート、オン・ザ・ロック、マティーニといろいろ楽しんでみたが、しなやかにゆったりと味わうにはマティーニ・オン・ザ・ロックがいい。ストレートやオン・ザ・ロックはやはり強い。
マティーニ・ロックは口当たりも柔らかくなり、氷が溶けても崩れることなく最後まで辛口のキレ味を堪能できるのが魅力だ。酒質としての高さを実感できる。
製品解説にはアルコール度数57%とあるが、これは小数点以下を切り捨てたもの。ボトルのラベルを見ると57.7%と表記されている。ブリティッシュプルーフ(イギリスのアルコール分単位)でいえば、オーバープルーフといわれるものだ。
VJOPはVery Junipery Over Proofの略。ではオーバープルーフとはどういうことなのだろうか。

前回記事『アメリカンプルーフとブリティッシュプルーフの違い』のなかで、イギリスでは1980年に容量パーセント方式に切り替えられるまでは、プルーフ(ブリティッシュプルーフあるいはUKプルーフ)という単位が使われていたことを述べた。
その歴史のはじまりは、課税のためだった。アルコール度数を把握しておかなければならない。しかしながら大昔は正確な度数を測ることができなかった。1816年に進化した酒精計が発明され、これを使った新たな測定法が正式に採用される1818年までは、曖昧な方法でアルコール分を測定していた。
かつての測定法で最も一般的におこなわれていたのは、アルコールが可燃性である特性を利用したもので、小銃用の火薬にスピリッツを垂らし、火をつけるやり方。燃えなければ不良。柔らかくそれなりに炎が上がれば合格。激しく燃えたら極上となる。
着火すれば証明された(PROVED)ということになり、着火する度数を100プルーフとし、着火されない場合はアンダープルーフと呼んでいた。そしてついに酒精計が発明され、火薬が着火する100プルーフのアルコール度数は57.1%であると解明されたのだった。
 

イギリス海軍は100プルーフを愛した

 
ドライマティーニ

ドライマティーニ

これに味を占めたのがロイヤルネイビー、イギリス海軍である。
1850年に配給用100プルーフのジンを1000樽以上確保した。理由は、一般的に飲まれているアンダープルーフの酒が船の中で漏れてしまい、もし火薬を濡らしてしまったら、その火薬は使い物にならない。だから100プルーフでなければならない、ということだった。
この主張に対して、酒好きの海軍の言い訳、と揶揄した文献は多い。ところが一方、ジンではなくラムで面白い結果が出たのである。火薬法によって100プルーフとされて納められていたラムを酒精計で測定してみたら、平均95.5プルーフ、54.5%であったのだ。ここから海軍度数、ネイビーストレングス(Navy Strength)という言葉が生まれたらしい。
ただし現在、100プルーフ(57%)のジンもネイビーストレングスと謳っていたりして、そのあたりの経緯をわたしはよく理解できていない。
とはいえ57.7%の「シップスミスV.J.O.P.」は確かにオーバープルーフなのである。まだお試しになっていらっしゃらない方は、VJOPの香味を是非味わっていただきたい。なかなかのパンチに虜になる方もいらっしゃることだろう。しつこいようだが、マティーニやマティーニ・オン・ザ・ロックをおすすめする。
高アルコール度数の上質な酒は人を惹きつけるところがある。前回記事で例に上げたクラフトバーボン「ノブクリーク」は100アメリカンプルーフ(50%)。これにもわたしは魅了されている。
美味しいけれど、酔いは早い。飲み過ぎてはいけない。
 

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